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0727-650号 心不全とBNP [kensa-ML NEWS 【特集】]


皆さん、こんにちは。神戸の新井です。

 今朝はどんよりと今にも雨が落ちてきそうな空模様の大阪、神戸でした。鬱陶しいお天気ですが、美白を目指す私としては直射日光にさらされないのは非常に好都合です。湿度は高いのですが、気温がさほど上がらないのも節電対策には好都合。この間来訪した台風6号は大雨による大きな被害をもたらしましたが、熱中症が台風により大幅に減少したとの記事を先日見ました。何が幸いするのか分かりませんね。・・・と書き始めたのは良いのですが、曇天ですが徐々に日差しが暑くなってきた神戸です。

 今月もはや終盤を迎え夏本番となっていますが、この数か月、なかなかニュースには事欠かないのですが、編集している時間がなく、読者の方々から温かいお言葉や叱咤激励の声がよく届くようになりました。職場における様々な取り組みや、財団研究もあり、当面、このような状態が続きます。天災は忘れたころにやってくる・・・と言いますが、皆さんに災いをもたらさないように、また忘れ去られないようにはしますので、長い目で見守っていただけると幸いです。


 さて昨日掲載された社説、コラムのご紹介です。中国の高速鉄道事故の件に関してはすでにご存じのことでしょう。事故を起こしたこともやっぱりな、でしたが、それよりもっと、やっぱりな・・・と思ったのが、事故後の政府対応。証拠隠滅見え見えです。事故の原因もはっきりと特定できていないのに先頭車両を粉砕し地中に埋め込み、事故後一日半で開通なんて日本では考えられないことです。中国国内でも批判が噴出しているようですが、国により「常識」の質が異なることに改めて気付かされました。ますます国際社会からスポイルされるのを分からないのでしょうか?本当にお寒い限りです。このようなことを書くと、また中国からのサイバー攻撃に遭うんだろうなぁ・・・と思いつつ。

 偉そうに中国批判をしとりますが、日本でも、恐らく海外の方々から日本を見る目、が非常に気になる、政権茶番劇。立つ鳥跡を濁さず、とよく言ったものですが、これはもう、首相の「識」の欠落でしょうね。国民は、情けない恥ずかしい・・・と思われている方が大部分でしょうが、当のご本人はもう開き直りの極め付けですね。ここまで来ると漫画チックで面白いというのは他人事の話。国民主権と謳いながら国民不在の妙。

 あと以前に引退宣言された前首相は一体何を勘違いされているのか・・・一度権力を手にすると考え方やモノの見方、要するに一般の常識的感覚は削がれてしまうのでしょうか?またマニフェストは理想であって理念ではありません。勘違い甚だしいですね。


2次補正成立 政治の停滞打破へ動く時だ(7月26日付・読売社説)
 
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110725-OYT1T01191.htm
 東日本大震災の追加復旧支援策を盛り込んだ総額2兆円の第2次補正予算が成立した。
 菅首相の「退陣3条件」の一つが整ったことになる。政治の停滞の打破に向けて、本格的に動く時だ。
 最近の菅政権の混迷は、目を覆うばかりだ。
 松本龍・前復興相が暴言で辞任し、首相は唐突な「脱原発」方針で電力不足に拍車をかけた。被災地のがれき除去や仮設住宅の建設は遅れ、首相の居座りで、秋以降の外交日程も決まらない。
 本来取り組むべき多くの政策が放置され、行政全体が停滞する危機的状況が続いている。
 そうした中、民主党の岡田幹事長が2009年衆院選政権公約(マニフェスト)の財源などの見通しの甘さを認め、謝罪した。
 残る退陣条件の一つである、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の成立に向け、野党の協力を求めるためだ。
 子ども手当の見直しでは、所得制限の具体案も示した。だが、歳出削減は踏み込みが足りず、赤字国債の発行額を極力抑えたい意図がうかがえない。
 民主党は1月の党大会で、破綻したマニフェストを見直す方針を決めたが、作業が始まったのは6月だ。あまりに遅い。
 見直しには、鳩山前首相らが反対を唱えている。マニフェストを「国民との契約」などと位置づけるから、守る、守らないという、非生産的な議論になる。
 マニフェストは、あくまで作成時点の方針や計画であり、内外の情勢の変化に機敏に対応し、適切かつ速やかに変更することは、政治家の責務でもある。
 民主党執行部は、8月上旬にも見直しの結論を出すという。菅首相が一向に動こうとしない中、岡田氏らの責任は重い。
 今回の謝罪を、特例公債法案を成立させるための「方便」にしてはならない。党内の反対・慎重論を抑え、子ども手当に限らず、高速道路無料化や農家の戸別所得補償などのバラマキ政策の大幅見直しの具体案を明示すべきだ。

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マニフェスト
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%88
 マニフェスト (manifesto) とは宣言書・声明文の意味で、個人または団体が方針や意図を多数者に向かって知らせるための演説や文書である。
【概要】
 日本ではその体裁から「有権者団との契約」と主張されることが多いが、実際に法的拘束力があるものではなく、あくまでも選挙公約の一形態にすぎない。本家のイギリスでも法的な意味での契約の命令的性格については否定されている。
 日本では、選挙においては政党の選挙公約の声明(書)において英語のマニフェストがよく使われたことからこの意味に限定されていることが多く、有権者に政策本位の判断を促すことを目的として、政党または首長・議員等の候補者が当選後に実行する政策を予め確約(公約)し、それを明確に知らせるための声明(書)との意味になる。この場合のマニフェストは「政策綱領」「政権公約」「政策宣言」「(政治的)基本方針」などと訳すことが多い。しかし、この用法は「選挙ごとに、政治の基本政策・基本理念が変わる」ことを意味する結果となることから、「選挙公約」、「(政治的)基本方針」とすることが適当であるとの論点もある。
 「マニフェスト」という語については有名なものとして「共産党宣言」(Das Kommunistische Manifest)がある。
【起源】
 マニフェスト(Manifesto)の語源については、ラテン語で「手(manus)」と、「打つ(fendere)」が合わさった、とする説が有力。「手で打つ」⇒「手で感じられるほど明らかな」⇒「はっきり示す」と派生したと考えられている。これがイタリア語経由で英語においてManifesto 「声明(文)・宣言(文)」となる。よって「マニュフェスト」は誤り(マニピュレータの誤り「マニュピレーター」と同じである)。その後、イギリスにおいて党首の演説がManifesto(声明文)と呼ばれこれるようになる。つまり、もともとのマニフェストは日本に於ける党首の所信表明演説に近い物であった。
 このような党首の(所信表明)演説がイギリスで最初に選挙公約として使われるようになったのは1835年総選挙においてR.ピール(Peel)がタムワース(Tamworth)選挙区民に向けて出したものだとされる。この「タムワース・マニフェスト」は保守党党首で前首相でもあったピールの個人的な公約の性格が強いものであった。この声明は翌年の総選挙において保守党の政治方針として公式に採用された。以来、イギリスでは総選挙ごとに主要政党はマニフェストを発表してきた。1906年には労働党が政党の公約として初めてマニフェストを出す。現在のように冊子の形になったのは1935年総選挙時の保守党のものが最初であるとされる。また1980年代初頭移行、各党のマニフェストは写真入りのカラー印刷冊子となった。 ただし1980年代までは、現在のように、具体的に数値目標・期限等を明示した詳細なものではなく、より概説的なものであった。現在、日本においていわれる選挙公約としてのマニフェストは、このイギリスの19世紀以来の政治慣行を参考にしたものである。


【産経抄】産経新聞コラム 7月26日
 
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110726/chn11072603120003-n1.htm
 東海道新幹線が昭和39(1964)年10月1日に開業して、1年余りたったころだ。トイレで用を足しているときに、便器から噴き上がってきてひどい目にあった、との苦情が毎日のように寄せられた。
▼いずれも長いトンネル内で起こっている。当時車両運行の責任者だった斎藤雅男さんが調べてみると、開業時に比べて本数が増えた列車がトンネル内ですれ違う際、瞬間的にできる外気圧とトイレ内の圧力差が原因だった。
▼斎藤さんは走行中のトイレにこもって確かめ、新しい車両では気密方式のトイレを採用し、使用中の車両には便器にドリルで穴を開ける応急措置を施した。当初の混乱期に見舞われた、数多くのトラブルのひとつだ。
▼斎藤さんたちは手本のないまま解決し、その経験は研究開発に生かされた。乗客の死亡事故ゼロの「安全神話」は、「日本人の手によって積み重ねてきた実績の成果」だった(『新幹線 安全神話はこうしてつくられた』日刊工業新聞社)。
▼そんな歴史を引き継ぐJR関係者からみれば、中国浙江省温州市で、200人を超す死傷者を出した高速鉄道の追突・脱線事故は合点がいかぬことばかりだろう。中国鉄道省は事故の原因を「落雷による設備故障」というが、中国が独自開発したという制御システムが働けば、衝突は回避できたはずだ。時刻表では先行しているはずの列車が追突した謎も残る。

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焚書坑儒
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%9A%E6%9B%B8%E5%9D%91%E5%84%92
 焚書・坑儒(ふんしょこうじゅ)は、中国を秦王朝が統治していた時代に発生した思想弾圧事件。焚書・坑儒とは、「書を燃やし、儒者を坑する(儒者を生き埋めにする)」の意味。
【概要】
 秦の始皇34年(紀元前213年)、博士淳于越は郡県制に反対し、いにしえの封建制を主張した。『史記』によると、丞相の李斯は、儒者たちが古(いにし)えによって現政府を批判していると指摘し、この弾圧を建議した。始皇帝はこの建議を容れて挟書律(医学・占い・農業以外の書物の所有を禁じた令)を制定した。
 これにより、民間人が所持していた書経・詩経・諸子百家の書物は、ことごとく郡の守尉に提出させ、焼き払うことが命じられた(焚書)。李斯は、秦の歴史家によるものを除いてすべての史書は燃やすべきであると主張し、各諸派によって書かれた書物は、地域の官僚に処分をするよう命令が出された。儒教の経典である六経のうちの『楽経』はこの時失われ、漢代に五経として確立された。
 翌年(紀元前212年)、廬生や侯生といった方士や儒者が、始皇帝が独裁者で刑罰を濫発していると非難して逃亡したため、咸陽の方士や儒者460人余りを生き埋めにし虐殺した(坑儒)。ただし、その後も秦に仕えた儒者はおり、陳勝・呉広の乱が起きた際に二世皇帝胡亥が儒者の叔孫通に諮問している。
 紀元前206年、漢の高祖劉邦が秦を滅ぼし、その後恵帝の時代になり紀元前191年11月挟書律が廃止された。
 魯迅は「華徳焚書異同論」において、ナチス・ドイツの焚書と比較して、焚書・坑儒を進歩的な行為だとしている。また文化大革命時には「批林批孔」運動において、毛沢東が焚書・坑儒を正当化する漢詩を詠じたが、後に中国共産党の公式見解の一つとされる席簡・金春明『「文化大革命」簡史』では、毛沢東の焚書・坑儒を誉める漢詩を「表面的には歴史学者の学術書に対して反対意見を述べているようにみえるが、(中略)政治闘争の必要から書かれたものである。」と述べている。


 さて本日の特集に移ります。本日は心不全とBNPを取り上げてみました。記事については少し前とかなり前の記事ですので、あしからずご了承ください。

 心不全については皆さん、すでに予備知識としてお持ちでしょうが、復習ということで心不全というものがどういったものか、引用します。引用は「メルクマニュアル家庭版」からになります。結構詳しく記述されていて、一見の価値ありです。


心不全 http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec03/ch025/ch025a.html
 心不全とは、心臓が十分な量の血液を送り出せなくなることです。心不全によって、血流量の減少、静脈や肺の中への血液の滞留など、心臓の機能をさらに低下させる他の変化が生じます。
 心不全は年齢を問わず起こり、特に、生まれつき心臓に欠損がある幼児にも起こります。しかし、高齢者は心筋が損傷する病気にかかりやすく、加齢に伴う変化によって心臓の機能が低下する傾向にあるため、若年者よりはるかに多くの心不全がみられます。心不全が生じる確率は約100人に1人です。寿命が長くなり、一部の国では喫煙、高血圧、高脂肪食など、心疾患を起こす危険因子をかかえる人が多くなっていることから、心不全の患者は増加する傾向にあります。
 心不全とは、心臓が停止した状態だと思いこんでいる人もいますが、心不全は、心臓が果たすべき機能を維持できなくなった状態を意味します。しかし、この定義は非常に単純化した概念です。心不全はきわめて複雑な病気で、その原因、病態、分類、経過はさまざまなので、簡単に定義することはできません。
 心臓の機能はポンプと同じで、心臓が血液を動脈の内部に移動させる機能と、心臓が血液を静脈の外に移動させる機能があります。この心臓の機能が十分に働かなくなると心不全が起こります。その結果、全身の組織へ送られる血流量が減少して心臓に戻る血液がたまり、静脈内にうっ血が生じます。そのため、心不全はうっ血性心不全とも呼ばれています。
 肺から心臓の左側部分(心臓の内部を参照)に流れてきた血液がたまると、肺の内部にうっ血が起こり、肺の機能が低下して呼吸が苦しくなります。全身から心臓の右側部分に戻ってきた血液がたまると、体のあちこちにうっ血が起こり、脚に水分がたまってむくんだり(肺水腫)、肝臓などの臓器が腫大します。心不全は普通、心臓の両側に何らかの損傷を与えますが、どちらか一方がより強く影響を受けることもあります。その場合、それぞれを右側心不全、左側心不全と呼びます。
 心不全になると、心臓は体に必要な酸素や栄養分を与えるのに十分な量の血液を送り出せなくなります。その結果、脚や腕の筋肉は疲れやすくなり、腎臓の機能も低下します。正常な状態では、動脈内の血圧は腎臓が血液中から水分や老廃物をろ過して尿中に排出できるようになっています。心臓が十分な量の血液を送り出せなくなると、血圧が低下し、腎機能が低下して、体の余分な水分を取り除くことができなくなります。結果的に、血流量が増え、機能が低下している心臓にかかる負荷が増えるという悪循環が起こります。このため、心不全はどんどん悪化します。
 心不全は主に、収縮期機能不全(より一般的)と拡張期機能不全の2つのタイプに分けられます。収縮期機能不全では、心臓の収縮力が弱まり、心臓に戻ってくる血液に見合う量の血液を送り出すことができなくなります。そのため、心室内に多量の血液がたまります。それから血液は静脈内にたまります。拡張期機能不全では、心臓がかたくなって収縮後に十分広がらなくなります。心室から正常な量の血液を送り出すことはできても、かたくなった心臓は静脈から流れこむ血液を十分にためることができません。収縮期機能不全と同じように、心臓に戻ってきた血液は静脈内にたまります。これらの2つのタイプが同時に起こることもよくあります。


 心不全の分類によくつかわれるのがNYHA分類です。これについてもご紹介しておきます。

【心不全の病期分類】
 心不全の病期分類には臨床症状から分けた分類, カテーテルによる計測値から分けた分類などさまざまな分類がある NYHA分類(ニハ分類、またはナイハ分類と発音される)は、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association:NYHA)が定めた心不全の症状の程度の分類であり、以下のように心不全の重症度を4種類に分類するものであるが、簡便でありよく使用される。
NYHA I度
 心疾患があるが症状はなく、通常の日常生活は制限されないもの。
NYHA II度
 心疾患患者で日常生活が軽度から中等度に制限されるもの。安静時には無症状だが、普通の行動で疲労・動悸・呼吸困難・狭心痛を生じる。
NYHA III度
 心疾患患者で日常生活が高度に制限されるもの。安静時は無症状だが、平地の歩行や日常生活以下の労作によっても症状が生じる。
NYHA IV度
 心疾患患者で非常に軽度の活動でも何らかの症状を生ずる。安静時においても心不全・狭心症症状を生ずることもある。


 以下心不全に関する特集記事です。


日経メディカル2011年7月号「トレンドビュー」(転載) 高齢者の心不全を見逃すな 高血圧患者の息切れに「年のせい」は禁物 日経メディカルオンライン 7/21
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201107/520679.html
 従来は収縮不全と同義であると見なされていた心不全。だが最近、その3~4割は、収縮機能は正常な「拡張不全」であることが分かってきた。高齢者や高血圧患者に多く、日常診療での拾い上げが重要だ。
 高血圧と糖尿病に対し薬物治療を続けている72歳の女性が、ある日、労作時の息切れを訴えて美田内科循環器科クリニック(札幌市手稲区)を受診した。院長の美田晃章氏は、臨床所見から心不全を疑い胸部X線撮影を行ったが、明らかなうっ血像は認めない。心エコー検査を施行したところ、心機能を示す左室駆出率(EF)も正常だった。
 高齢患者であればなおさら、「年のせい」と見過ごしがちなこの所見。だが美田氏が思い浮かべたのは、高齢の高血圧患者に多いタイプの拡張期心不全(以下、拡張不全)だ。実際、組織ドプラ法で確認し、少量の利尿薬を投与したところ、約1週間で患者の自覚症状は改善した。
 「そのまま放置していたら、著明な肺うっ血を起こして入院していたかもしれない。日ごろよく診る高血圧や糖尿病がある高齢者は、特に心不全のリスクが高いことを念頭に置く必要があるだろう」と美田氏は話す。
【収縮能正常の心不全が増加】
 心不全を疑ったときは、EF測定に代表される収縮機能の評価を行うのが一般的だ。「1980年代以降、エコーを用いた心不全の評価法が確立するとともに、心不全といえばEFが40%以下に低下した『収縮不全』であると考えられるようになっていった」と北大循環病態内科学教授の筒井裕之氏は振り返る。
 しかし最近、国内外の複数の疫学調査によって、心不全の30~40%では収縮機能が正常であることが明らかになってきた。このような、EFが正常値に保たれているタイプの心不全(heart failure with preserved EF)は「拡張不全」と呼ばれ、病態解明や診断・治療法の確立に向けて近年、盛んに研究が行われている。
 注目すべきは、拡張不全が“古典的な”心不全である収縮不全に比べて、高齢者や高血圧の患者に多く見られるという点だ。
 わが国における慢性心不全の大規模観察研究「JCARE-CARD」でも、その実態が浮き彫りになっている(表1)。同研究では、入院治療を受けた慢性心不全患者1692人(弁膜症除く)のうち、EF≧50%の「拡張不全群」が26%を占めていた。
 また、EF<40%の「収縮不全群」と拡張不全群の患者背景を比較すると、拡張不全群では有意に年齢が高く、高血圧や心房細動の合併例が多くなっていた。
【ハイリスクでの拾い上げが急務】
 高血圧患者の増加や高齢化に伴い、拡張不全は今後、さらに増えていく可能性がある。そのため、拡張不全が疑われる患者を拾い上げ、専門医に紹介するという重要な役割がプライマリケア医に期待されている。「早期に発見し治療・管理できれば、心不全の増悪で繰り返す入退院を回避でき、QOL維持にも貢献するだろう」と筒井氏も語る。
 では実際、どのような点に注意すればいいのだろうか。東京厚生年金病院(東京都新宿区)救急総合診療部主任部長の上野勝則氏は、「まずは身体診察を丁寧に行い、心不全の臨床所見を見逃さないことに尽きる」と言い、特に拡張不全のハイリスク患者において、心不全の症状や増悪の徴候を見逃さないための問診のコツを3つ挙げる(サイトを参照)。
 もっとも、心不全の自覚症状の多くは非特異的であり、高齢者となれば加齢に伴う運動耐容能低下との鑑別が悩ましいところ。そこで行いたいのは、胸部X線撮影や心電図検査に加え、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定だ。「一般にBNPが100pg/mL以上であれば心不全を疑う目安になる。ただし、超高齢者では基準値が上がることに留意が必要だ」と鳥取大病態情報内科学教授の山本一博氏は話す。
 「呼吸困難感を訴える高齢者に対しては、経皮的酸素飽和度(SpO2)の測定やスパイロメーターによる呼吸機能検査を行い、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患を鑑別することも欠かせない」(山本氏)。

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 上記記事にも出てきたBNPですが、少し前までは診療報酬上、心不全という診断名がなければ点数が取れなかったのですが、最近では、心不全の疑い、といった疑い病名でも点数が取れるようになり、検査適応範囲が広がってきた項目です。心不全になると著明に上昇するホルモンであり、臨床的意義も非常に高いものですが、このBNPについて特集記事をご紹介する前に少し紐解いておきます。ただし・・・基準値について非常に大まかな数値が書かれていますので、訂正しておきます。メーカーからの推奨値では、BNPの基準値は18.4pg/mL以下です。非常に些細に思われるかもしれませんが、こういった些細なことの積み重ねが検査データの標準化を遅らせる一因にもなっています。


ANP、BNPとは? http://medical-checkup.info/article/71854489.html
 ANPは心房性ナトリウム利尿ペプチドといい、主として心房で合成・貯蔵され、血液中に分泌されるホルモンです。水・ナトリウムの利尿。血管の拡張、レニン・アルドステロンの分泌抑制、循環血漿量の減少など多彩な生理作用を介して、生体の体液バランスならびに血圧調整に関与しています。
 BNPは脳性ナトリウム利尿ペプチドといい、主として心室から血液中に分泌されるホルモンです。強力な水・ナトリウム利尿作用、血管拡張作用を有しており、心室に負荷がかかると分泌され、交感神経系およびレニン・アンギオテンシン系を抑制して、それらのホルモンと拮抗的にはたらいて心不全などの病態を改善させます。
【ANP、BNPの検査で何がわかるのか?】
 ANPの分泌は、心房圧による心房筋の伸展によって刺激されるため、ANPが高値の場合は、心房負荷や循環血漿量の増加を起こす病態が存在することを意味しています。
 ANPは、心不全や腎不全などの重症度や治療効果を判定するときに検査されます。その他、高血圧の病態把握、内分泌疾患のスクリーニング(ふるいわけ)などにも用いられています。
 BNPも同様に、心不全の臨床的指標として非常に有用とされています。BNPは、ANPに比較して変化率が大きいのが特徴です。例えば、重症の心不全ではANPよりはるかに上昇するため、心不全の指標としてはANPより優れています。
 また、心室機能の把握、心不全や心肥大の治療効果の確認、抗腫瘍薬、向精神薬の心筋障害の早期感知にも役立てられています。
【基準値】
 ANP:40pg/ml以下 BNP:20pg/ml以下
【異常な場合に疑われる病気】
 高値…本態性高血圧、うっ血性心不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症など
 低値…脱水状態、利尿薬の影響など


脳性ナトリウム利尿ペプチド
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%80%A7%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E5%88%A9%E5%B0%BF%E3%83%9A%E3%83%97%E3%83%81%E3%83%89
 脳性ナトリウム利尿ペプチド(英 brain natriuretic peptide; BNP)は心臓から分泌されるホルモンである。主として心室で合成される。
【診断】
 血中のBNPは心不全の状況をすみやかに反映すると考えられている。心エコーで評価の難しい拡張障害を伴う心不全でも、しばしば異常値を呈する。 健常者のBNPの基準値は20pg/mL以下とされている。心疾患の有無や早期心不全のスクリーニングには50pg/mLや100pg/mLが妥当とする意見もある。 また22pg/mLをcut off とすれば、心不全の診断において感度 97%、特異度 84%であるというデータもある。 BNP値は100pg/mLを境に、その後の経過観察中の心血管イベント発生率に大きな差が見られたという報告もある。
 NT-proBNP(BNP前駆物質のN末端)が現在商業ベースで測定できるようになり、臨床検査としてはNT-proBNPも用いられるようになった。ただNT-proBNPは腎機能に影響を受けるため心機能評価に注意を要する。
 相関は NT-proBNP ≒ BNP X 7.5 -107.0 (r=0.859)とされる。(ロシュ・ダイアグノスティックス社データより引用)
 また診断指標としては、おおよそ NT-proBNP ≒ BNP ^ 1.341 -15 で換算できる。


NT-proBNPの測定値と慢性心不全の診断指標
 
http://www.kensin-kensa.com/archives/cat13/ntprobnp/
 NT-proBNPは心不全の診断・モニタリングにおいて、BNPと同等の臨床的有用性を有し、より鋭敏に心腎機能を反映します。また、NT-proBNPとNYHA分類およびACC/AHA慢性心不全の評価には相関がみられ、心機能による患者さんの層別化をより確実に行うことが可能です。
正常群(NT-proBNP:~55pg/ml)心疾患の疑いなし。定期的な健診により、生活習慣病を予防していくことが重要。
高リスク群(NT-proBNP:55~125pg/ml)心負荷あり。高血圧などの生活習慣病の疑い。早期の予防・改善が必要。ステージA
無症候群1(NT-proBNP:125~500pg/ml)心疾患の疑い。生活習慣病および/もしくは心不全を含む心臓病の疑い。早期予防・改善に加え、経過観察が必要。ステージB NYHAⅠ度
無症候群2(NT-proBNP:500~1,000pg/m)心不全を含む心臓病の疑い。心機能のチェックを行い、適切な治療が必要。ステージB NYHAⅠ度
有症候群1(NT-proBNP:1,000~4,000pg/ml)心不全を含む心臓病の疑い。専門医への紹介が必要とされる。ステージC NYHAⅡ度
有症候群2(NT-proBNP:4,000~8,000pg/ml)心不全を含む心臓病。専門医にすぐ紹介の上、精査・治療が必要。ステージC NYHAⅢ度
治療抵抗群(NT-proBNP:8,000pg/ml~)心不全を含む重篤な心臓病。緊急の入院ならびに即時の治療が必要。ステージD NYHAⅣ度

《ACC/AHA慢性心不全の評価および管理ガイドライン》
【ステージA】器質的心疾患なし、心不全なし(心不全発症のハイリスク):高血圧治療・禁煙・高脂血症治療・運動・禁酒・特定の患者(動脈硬化性血管疾患、糖尿病、高血圧)にはACE阻害薬/ARB
【ステージB】無症候群、器質的心疾患あり、心不全症状なし、早期心不全:β遮断薬・ACE阻害薬・ARB
【ステージC】心不全有症候群、既知の構造的心疾患、息切れ、易疲労感、運動能力低下:塩分制限・薬剤(利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬、ジキタリス、ARB)
【ステージD】治療抵抗群、末期心不全:補助循環・心臓移植・強心薬持続静注・ホスピスケア
※ACC:米国心臓学会 AHA:米国心臓協会


 以下、2009年に掲載されたものですが、BNPの有用性について記載されています。私がこれまでの臨床上経験から物申すのであれば、緊急外来などスポット的に使用するのであれば簡易法でも十分ですが、慢性期のフォローとして使用するのであればやはり精密法でないと無理かな?と感じます。また検査法によりデータ乖離も認めますし、NT-proBNPとの相関についても同様であり、今後しっかりとしたデータの蓄積が必要です。ただし、有益な心不全マーカーであることは間違いありませんので、緊急検査への導入など今後さらに検討されていくと思いますが、やはりハードウェア的な問題が大きく、ある程度の施設規模がないと院内検査項目としての導入は困難かもしれません。互換性の問題などを取り上げると、あまり簡易法は私はお勧めしません(単なる目安としては良いのですが・・・)。


日経メディカル2009年12月号「トレンドビュー」(転載) 外来でBNPを使いこなす 40pg/mL前後が異常を疑う目安 日経メディカルオンライン 2009.12.25
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200912/513361.html
 心不全のマーカーとして知られるBNP。主に入院患者に対する検査という位置付けだったが、診療所でも使える迅速診断装置が登場したことで、外来での検査が増えている。
 「肝機能の指標としてASTやALTが役立つのと同じように、BNPは心機能の指標として有用だ」。土田内科循環器科クリニック(新潟県長岡市)院長の土田桂蔵氏はこう話す。
 BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド:brain natriuretic peptide)は、アミノ酸32個から成るホルモン。心肥大などの刺激に伴い、心臓(主に心室)より分泌される。
 BNP値は、心機能の低下に伴い鋭敏に上昇することが分かっている。わが国の『慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)』によれば、心不全の診断、重症度、および予後評価を目的とする血漿BNPの測定は「クラスI」に分類され、有用性が確立している。

⇒ 続きはこちら
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200912/513361_2.html
外来で心不全を早期発見
 平光ハートクリニック(名古屋市南区)院長の平光伸也氏も、BNP値を外来診療に積極的に活用する一人。「これまで無症状だったのに、突然呼吸困難が出現し、急性心不全のように見える症例でも、実は慢性心不全の急性増悪であることが少なくない。日常診療でBNP値をチェックすることは、心不全の早期発見に役立つ」と話す。
 特に、以前に心筋梗塞を経験したことのある患者や、高血圧で心肥大が見られる患者の場合、一度はBNPを測定してみるという。「BNP値の測定は、心エコー検査に比べて簡単に施行でき、経済的にも安価。診察室で迅速検査を行えば、15分程度で結果が分かるので、その場で患者に説明できるメリットもある」(平光氏)。
 土田氏は、外来で経過観察している心疾患患者のBNP値が急に上昇した場合は、生活指導、内服薬の変更・追加、あるいは病院に紹介するなどして、治療方針を立てる際にBNP値を参考にする。
 呼吸困難を訴える高齢患者の鑑別診断にも、BNP値が役立つ。「COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患であれば、心疾患や心房細動がない限り、BNP値は100pg/mL以下のことが多い。逆に、BNP値が200pg/mL以上であれば、心不全が疑われる」からだ。
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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200912/513361_3.html
 土田氏が外来患者を対象に検討したところ、BNP値が40pg/mL以上の人の割合は、心疾患のない患者では16%であったのに対し、多くの心疾患患者では70~100%だった(土田、田辺. 日本医事新報2002;No.4097:23-8.)。さらに、外来患者3123人(平均59.3歳)を5.5年間(中央値)追跡し、BNP値と心血管イベント(心不全、冠動脈疾患、不整脈、脳卒中など)の発生との関係を検討したところ、BNP値が高いほど時間の経過とともにイベント非発生率が低下していた。特に、100pg/mL未満と100pg/mL以上に分けた場合、明らかな差が見られた。
大規模調査でも同様の結果
 慈恵医大循環器内科教授の吉村道博氏らのグループは、日本人の病院受診患者におけるBNP値の新たな目安づくりに取り組んでいる。5施設(京大病院、藤田保健衛生大病院、熊本機能病院、慈恵医大本院、同柏病院)の外来患者でBNP値が分かっている約8000人を集め、その中から、心エコー上で心肥大がない、顕在化した不整脈がないといった、明らかな循環器系疾患がない患者を選択した。そのため症例数は少なくなるが、選択基準に合致した患者のBNP値を順に並べ、下から95パーセンタイル値を求めた。その結果、「BNP値としては、おおよそ40pg/mL前後が心機能の異常を疑う一つの目安になると思われるが、その値をどう呼ぶかを含め、慎重に検討を重ねている最中だ」(吉村氏)という。

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akanenosora

ご訪問ありがとうございました。
by akanenosora (2011-07-28 15:02) 

私が三人目

中国の事故は私ら鉄道で仕事している者は信じられないことです(^^)
by 私が三人目 (2011-07-28 17:01) 

美美

ご訪問ありがとうございます。
by 美美 (2011-07-29 22:08) 

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