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0414-639号 基礎からわかる放射能対策(読売新聞) [kensa-ML NEWS 【緊急】]


 すっかり春らしくなってきた、神戸、大阪です。朝晩は少し寒いのですが、周りを見るとコートを着ている人はかなり少なくなってきたので、私は着ておりません。桜も葉桜に変わりつつありますね。関東、東北地方では今からが旬でしょうか?

 今年は色々な意味で日本全体が自粛ムード。派手なお花見をされる方はあまり見受けませんでした・・・といっても私自身、お花見をする時間は取れずで、通勤途中の車窓から指をくわえて観ているだけでした。が、十分癒されますね。特にJR神戸線からの眺めが最高です。

 プロ野球も一昨日から開幕で、新井選手会会長が所属する阪神タイガースは開幕二連勝。楽天も二連勝ですね。そのように見てしまうからなのでしょうが、選手一人一人が被災者に向けて「頑張ろう!」とメッセージを込めているように思えてなりません。特に楽天は被災地が本拠地ということもあり「がんばろう東北」のメッセージが心に伝わってきます。私が神戸で被災した時を思い出しますね。「がんばろう神戸」や、当時グリーンスタジアム神戸での「イチロー」大合唱。球団と被災地の方々が一体化し、市民球団として融合していたのを思い出します。仙台宮城スタジアムでの、そのような素晴らしい光景を今から楽しみにしています。


プロ野球の春―不屈の戦いを楽しもう 朝日新聞社説 4/14
 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2
 ファンが待ち望んだ球春がやってきた。プロ野球がセ・パ両リーグで同時開幕し、優勝をかけた長い戦いが始まった。
 選手たちには、高度な技と力で、私たちを沸かせてほしい。テレビやラジオの前にも、声援を送る人々が無数にいることを思いながら。
 仙台に本拠を置き、地域密着を掲げてきた楽天は、特別な思いを抱いての開幕だ。球場は震災で大きな被害を受けた。家族が被災した選手もいる。
 選手らは左袖に「がんばろう東北」のワッペンをつけて不屈の戦いを誓い、開幕から2連勝を飾った。被災した人々は復興への自らの思いを重ね、彼らを応援していくだろう。
 シーズンを前に、曲折を重ねた春だった。震災の影響で節電が求められる中、開幕時期とナイター開催をどうするか。セ・リーグは早期開幕にこだわり、判断を二転三転させた。
 最終的には、先に延期を決めたパ・リーグと足並みをそろえるよう求めた文部科学省や、選手会に押される形になり、両リーグ同時開幕となった。
 セの経営者が興行を優先し、早期開幕・ナイター開催を押し通そうとした経緯は正直、うんざりさせられた。
 それでも、開幕延期とナイター自粛を当初から訴え、被災した人々の心情に寄り添おうとした選手会の姿勢は、ファンや世の中が評価している。
 開幕を遅らせた分、全球団にとって厳しいシーズンになる。夏場の電力供給不足も懸念される。急きょ、ナイターからデーゲームへの変更を求められるときがあるかも知れない。だが、とにかく非常時だ。球界全体で臨機応変に対応する意識を持っていてほしい。
 球界は昨年、横浜の身売り騒動で揺れた。地上波のテレビ中継も年々減り、安泰ではない。
 しかし、今年は日本ハムに斎藤佑樹投手が入団し、大きな注目を集めている。日ハムファンならずとも、甲子園や神宮を沸かせた斎藤投手は気になるところだ。楽天・田中将大投手との投げあいも今から楽しみだ。
 巨人には、斎藤投手ら同世代の存在をばねに成長してきた剛腕・沢村拓一投手が入った。
 例年以上に、プロ野球が熱くなりそうなシーズンなのだ。
 震災後の自粛ムードも徐々に和らいできた。野球に限らず、スポーツや文化活動の過度な自重は経済の停滞も招く。
 プロ野球もある、日常の暮らしが少しずつ戻りつつあることに感謝しながら、彼らの一投一打を堪能したい。


 さて東日本大震災発生以来、震災関連情報を不定期にご提供してきましたが、そろそろ普段通りのメールニュースに変えていきたいと思います。私自身、震災を経験した医療従事者の立場で、医療にまつわる情報をご提供してきたつもりですが、心中、穏やかではありませんでした。やはり被災者の方々が直面している過酷な状況や被災地からのレポートなど、さらに行方不明者の中に私の知り合いがまだ複数名いるという状況の中では、どうしても感情移入してしまい、なかなか記事を書けなかったというのが正直なところです。また医療従事者の前に一人の人間ですから、何か自身に出来ることはないものか、と模索する一か月でしたし、阪神淡路大震災の時には医療の原点に立ち返るということを、私自身が改めて見つめ直す機会ともなりました。「がんばろう日本」を合言葉に日本全体が助け合いの気持ちを強く持つ中、周りのことは顧みず、自分の利益しか考えられない、義務を果たさず権利ばかりを主張する、そんな人を身近で見るにつけ、あまりにものギャップに嫌悪感を強く持ってしまったのも私の率直な感情です。医療従事者は誰のために働くのか、そんな当たり前のことを強く意識しながら、自分に何が出来るのか、それを常に追い求めながら、頑張ろうと思います。

 いったん本日をもって緊急の震災特集記事を終了しますが、まだまだ震災関連情報は必要かつ不可欠な状態ですので、ご提供は続けていきたいと思います。また、ブログ等への記事の全文掲載を快く了解していただいた報道機関の皆様には、この場をお借りしお礼を申し上げます。


 さて本日のテーマは、国際的にも大きな心配の種となっている、原子力発電所事故について。先日、国際評価尺度(INES)の暫定評価で最悪の「レベル7」となりましたが、事故発生当初よりこのことは容易に判断できるものではなかったのか、とも思いますし、リスクマネージメントの観点からは、やはり政府が最悪のことを想定して判断を行わなければならなかったのではないかと思います。もちろん、事故現場における、それこそ命を懸けて国を守ろうとしている献身的な姿に対しては、感謝の念しかありませんし、政府や関連委員会、東京電力の方々のとってこられた措置は、適切なものであったと思いたい。ですから、ここは国民が冷静に判断し、見識のある行動をとれるような、判断材料の開示が必要でしょうし、専門家しか判らないような訳のわからない説明ではなく、国民の多くが分かる形での説明をしていただきたいと思います。難しい話を難しく説明するのは誰にでもできます。難しい話を分かりやすく説明できるのがプロフェッショナルじゃないかと私は常々思っています。


福島第一原発事故「レベル7」の意味について 首相官邸
 
http://www.kantei.go.jp/saigai/genpatsu_houshanou.html
 http://www.kantei.go.jp/saigai/20110412genpatsu_faq.html

Q:より深刻な事故になったということですか?
A:違います。
 今回の発表は、新たな事態の発生を意味するものでは全くありません。今回、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会がこれまでの解析結果や周辺地域の放射性物質測定値から逆算して、事故現場での放出量を推定したものです。つまり、「レベル7になった」のではなく、「レベル7であることがわかった」というのが正確なところです。

Q:チェルノブイリと同じ深刻度の事故ということですか?
A:違います。
 事故発生以来の放射性物質の総放出量で比較すると、現時点で、今回の事故はチェルノブイリ事故の時の約1割です。ただ、原子力施設事故の指標として用いられている「INES評価」という物差しでは、レベル分けは「7」までしか分類が無いため、福島もその10倍のチェルノブイリも同じランクに入ってしまうということです。

Q:放射性物質放出の仕方も、チェルノブイリとは違うのですか?
A:はい、違います。
 チェルノブイリでは、原子炉が爆発した後、大規模な火災が発生し、多量の放射性物質が広範囲に拡散しました。福島では、水素爆発があったものの、原子炉本体ではなく、その外部であり、大規模かつ継続的な火災はありません。
 ただ、放射性物質の放出が爆発的ではないかわりに、持続的である点は、留意しなければなりません。つまり、放出が止められるまでは、積算量は少しずつ増えてゆくという状態です。長期的な監視や、計画的な対応が必要となります。


●国際原子力事象評価尺度(INES)
 
http://www.bousai.ne.jp/vis/bousai_kensyu/glossary/ko18.html
 国際原子力事象評価尺度(International Nuclear Event Scale : [INES]と略す。)とは、原子力発電所などで発生した事故・故障などの影響の度合いを簡明かつ客観的に判断出来るように示した評価尺度である。
 INESは、事故や事象を安全上重要ではない事象レベル0から、チェルノブイリ事故に相当する重大な事故レベル7までの8段階に分けている。
 INESでは、原則として発生した事象が次のいずれかに該当する場合には、24時間以内に国際原子力機関(IAEA)を介して、公式情報が加盟各国に配布されることになっている。
 1.安全上の重要度がレベル2以上の場合。
 2.当事国外で公衆の関心を集め、新聞報道などが必要となった場合(レベル1及び0)。
 レベル1及び0の事象については、当事国の判断により必要に応じINESに報告されている。


レベル7/最悪の事態を食い止めよ 神戸新聞社説 4/13
 
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0003954608.shtml
 東京電力福島第1原発事故の深刻度が、国際評価尺度(INES)の暫定評価で「レベル5」から最悪の「レベル7」に引き上げられた。
 経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会が、これまでに放出された放射性物質の推定総量がレベル7の基準を大きく上回ったと判断したためだ。今後、国の専門委員会で正式に決める。
 レベル7は、過去には1986年に旧ソ連のチェルノブイリ原発で起きた事故しかない。広い範囲に拡散した放射性物質による健康や環境への影響が懸念され、監視を強める必要がある。
 周辺住民の不安は募るばかりだ。政府は半径20キロ圏外に新たに計画的避難区域を設定した。原発事故で突然、避難や屋内待避を余儀なくされた上に、その状態が長期化している。心身の負担は限界に近く、体調を崩す人もいる。産業や経済への影響も計り知れない。
 国と東電は、住民に現状を詳しく説明し、今後の見通しを早く示すべきだ。地域住民への支援と補償についても、誠実に取り組んでもらいたい。
 福島の事故について保安院は、チェルノブイリと同じレベル7とはいえ、実態は大きく異なると強調している。
 チェルノブイリでは原子炉が爆発し、大量の放射性物質が放出され、多数の犠牲者が出た。福島は原子炉圧力容器や格納容器は原形をとどめ、放出量も1割程度とみられる。野菜などの摂取制限措置を早い段階で打ち出し、健康被害も出ていない。
 だが、放射性物質の量は一時に比べて減ったものの、事故発生から1カ月たった今も止まっていない。事態の収拾のめどはたたず、放射性物質に汚染された水も海に放出された。
 東電も、最終的には放出量がチェルノブイリに匹敵するか超えるかもしれないとみており、深刻な状況は続いている。
 こうした現状に、国内だけでなく海外でも日本に対する不信感が広がっている。史上最悪といわれるチェルノブイリ事故と同じレベルと評価されたことで、目線は一層厳しくなるだろう。
 原子炉と使用済み燃料プールの冷却機能の回復を急ぎ、放射性物質の拡散を防ぐ。汚染水の管理を徹底し、万全な処理も欠かせない。
 同時に、原子炉の状態や対策などについて、正確な情報を内外に向けて迅速に公開していくことだ。最悪の事態を食い止めるため、あらゆる手段を講じてこの危機を克服しなければならない。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]全身に浴びると…100ミリ・シーベルトでがん危険性0.5%増
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39022
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 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、放射能漏れが続いている。放射線は健康にどんな影響があるのか、危険な放射線のレベルとはどれぐらいか、様々な測定データや基準値はどう読めばいいのか――など、ポイントをまとめた。(館林牧子、高橋圭史、中島久美子)
 放射線の健康への影響で明らかなのは、がんになる危険性が高まることだ。では、その「程度」はどれぐらいなのだろう。
 放射線の体への影響を表す単位にはシーベルトが用いられる。世界の放射線の専門家で作る「国際放射線防護委員会(ICRP)」によると、放射線を全身に一度に浴びると、がんなどで死ぬ危険は1000ミリ・シーベルトあたり5%高まる。100ミリ・シーベルトなら10分の1の0・5%、200ミリ・シーベルトなら1%危険性が増えるわけだ。
 日本人の約30%は、がんで亡くなっている。100ミリ・シーベルトの放射線の影響が加わると、がんの危険性は0・5%増えて30・5%になり、200ミリ・シーベルトの被曝(ひばく)なら1%上乗せされて31%になる計算だ。
 がんの原因の約30%は、たばこだ。危険性が0・5%高まる100ミリ・シーベルト程度の放射線と比べた場合、発がんへの影響は喫煙の方がはるかに大きいと言える。
 一方、放射線量が100ミリ・シーベルトより少ない場合、がんの危険性の差はわずかで、はっきりした影響はわからない。一般に「明らかな健康障害が出るのは100ミリ・シーベルトから」とされるのはこのためだ。
◆シーベルトとベクレル 「シーベルト」は、人体への放射線の影響の度合いを表す単位。1シーベルト=1000ミリ・シーベルト、1ミリ・シーベルト=1000マイクロ・シーベルトだ。
 一方、「ベクレル」は、放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が、放射線を出す度合いを表す。食品や水、土壌などに、どのくらい放射性物質が含まれるかを調べる時に用いられる。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]部分的被曝なら被害少ない
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39021
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 大量の放射線を浴びた場合は、どんな体への影響があるのか?
 3000~5000ミリ・シーベルトの放射線を全身に一度に浴び、何も治療をしないでいると、半数が死亡するとされる。
 ただし、これは「全身に」浴びた場合の話だ。福島原発で被曝し、放射線医学総合研究所(千葉市)に3月25日に入院した作業員2人は、くるぶしから下に推定2000~3000ミリ・シーベルトの放射線を受けていたが、「健康への被害は少ない」と診断され、3日後に退院した。「強い放射線を受けても体の一部に限られていれば、大きな健康被害が出るとは限らない」と東京女子医大放射線腫瘍科教授の三橋紀夫さんは説明する。
 例えば乳がんの放射線治療では、乳房に1回2000ミリ・シーベルト相当の放射線を20~30回ほど当てる。放射線が当たった部分の皮膚が日焼けのように一時的に赤くなることがあるが、全身への被曝とは違い、命にかかわることはまずな
い。
 胃のエックス線や胸部のCT(コンピューター断層撮影)検査も体の一部にしか放射線を受けず、影響は全身被曝とは異なる。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]「水」「食品」規制値、国際基準と整合
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39013
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 放射線を発する物質を放射性物質という。福島、茨城県などのホウレンソウや原乳などから、厚生労働省が定めた暫定規制値を上回る放射性物質の放射性ヨウ素が検出され、出荷停止措置がとられている。
 放射性ヨウ素の暫定規制値は、葉物の野菜で1キロ・グラムあたり2000ベクレル、牛乳や飲料水で300ベクレル。ただし、乳児の飲料水や粉ミルクには100ベクレルと、さらに厳しい制限がついた。
 首都圏の浄水場でも一時、100ベクレルを上回る値が出た。自治体が乳児向けにペットボトルの水を手配するなど混乱が広がった。
 この規制値は、原子力安全委員会が13年前に作った指標などを基に作られた。指標の策定メンバーだった須賀新一さん(元日本原子力研究所)は「国際的な基準とも整合する値で、現在でも妥当な値だと思う」と話す。
 放射性ヨウ素は8日で半分に減る。時間と共に、野菜などについた分も減っていくので、国は出荷停止の解除を検討中だ。
 水道水の放射性物質の値は雨の後に上がりやすい。規制値を下回る時に清潔な容器に入れ、冷蔵庫などで保存しておくと良い。
 乳児の水分不足は健康に重大な影響をもたらす。日本小児科学会などは、代わりの飲料水が確保できない時は水分摂取を優先させるよう呼びかけている。
◆放射性物質 原子炉や使用済み核燃料の中には、様々な放射性物質が含まれている。体内に取り込まれて問題になるのが、放射性のヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどだ。
 放射性ヨウ素は甲状腺にたまりやすく、多いと甲状腺がんの危険が高まる。
 放射性セシウムは主に筋肉に、放射性ストロンチウムは骨に蓄積して放射線を出し続ける。ストロンチウムは検出が難しいが、セシウムと共に出ることが多く、セシウムが規制値以下なら問題ないとみられる。
 プルトニウムは、体内に長くとどまり、破壊力が強いアルファ線を出すため、人体への影響が大きい。特に肺に入ると肺がんになる確率が増す。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]放射性物質 魚に蓄積しにくい

 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39012
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 福島第一原発周辺の海域では、原子炉等規制法が定める基準を超える放射性ヨウ素や放射性セシウムが検出されている。魚への影響はないのだろうか?
 魚にたまる有害物質では、水銀が知られている。プランクトンを小魚が食べ、さらに大きな魚が小魚を食べる過程で濃縮され、魚の体内では、海水中の濃度の360~600倍になるというものだ。
 これに対し、放射性物質は、魚の体内にはたまりにくい。ヨウ素は放射線が減るのが早く、セシウムやプルトニウムは、魚のえらや尿から排出される。水産庁増殖推進部研究指導課の森田貴己さんは「魚の体内で、放射性物質が蓄積される度合いは低い」と話す。
 水産総合研究センターは、3月24日に千葉県の銚子沖で捕獲したカタクチイワシから魚肉1キロ・グラムあたり3ベクレルの放射性セシウムを検出した。日本近海の海産物の測定を約50年間続けているなか、通常ほとんどセシウムは検出されないことから「福島の事故の影響」とみる。ただし、食品の暫定規制値(1キロ・グラムあたり500ベクレル)から見れば、これは極めて低い値だ。森田さんは「今のところ海産物への影響は問題ないが、今後も細かく検査をしていく」と話す。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]微量は宇宙・地面から常に
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39018
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 各地の放射線量の測定結果が毎日公表されている。数値をどう受け取ればよいのだろう。
 健康に明らかな影響が出始めるとされる年間100ミリ・シーベルトの放射線量を、1時間あたりに直すと11・4マイクロ・シーベルトになる。
 福島市では一時、大気中で1時間あたり10マイクロ・シーベルトを超えたが、次第に低下して数分の一のレベルになっている。関東地方など多くの地域では1マイクロ・シーベルト未満で推移している。しかも、屋内にいれば浴びる放射線はさらに減る。
 今回のような事故がなくても、私たちは日ごろ、宇宙や地面からの微量の放射線を浴びている。地域により差はあるが、日本では大気中からだけでも、1時間あたり0・08マイクロ・シーベルト程度の放射線を浴びている。
 少量の被曝を長期にわたって受け続けた場合の影響は、よくわかっていない。専門家によって意見が異なるが、同じ量なら一度に浴びるよりも分けて受けた方が影響は少ないとみるのが、放射線治療でも用いられている一般的な考え方だ。
 ただし今後、累積の放射線量が一定以上を超えると、避難区域の拡大につながる可能性もある。推移に注目したい。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]工夫で被曝減らせる
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39011
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 被曝の影響などについて一般の質問に答える放射線医学総合研究所(千葉市)の電話相談窓口は、3月13日の開設から、電話が4000件を超えた。ホームページで代表的な質問と答えを紹介している。
 同研究所でリスクコミュニケーションを研究する神田玲子さんによると、「雨にぬれたが大丈夫か?」「洋服は普通に洗濯して良いか?」などの対処法を尋ねる内容が多いが、なかには「一歩も外に出られない」という強い不安や、怒りを訴える人もいる。
 「放射性物質は目に見えないだけに不安に感じるのは当然」と神田さん。原発から離れたところでは現状では特別な対策はいらないが、「どうしても気になる人は、洗濯物は外に干さない、外出時はマスクをする、野菜は洗い、ゆでて汁は捨てるなどの工夫で、被曝を減らせることも知ってほしい」と話す。


【ヨミドクター(読売新聞)基礎からわかる放射能対策2 2011/04/03】
[放射線 健康にどんな影響]一般人の被曝の目安、引き上げ求める声明
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39010
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 今回の事故を受けて、ICRPは3月21日、日本政府に、緊急的に一般人の限度の目安を20~100ミリ・シーベルトに引き上げるよう求める声明を発表した。
 一般人の被曝の限度は、自然の放射線や治療・検査での被曝を除き、年間で1ミリ・シーベルトと定められている。放射線は浴びないに越したことはないため、原子力施設から出る放射線はできるだけ低く抑えるよう、事業者に義務づけられた値だ。
 ただし、明らかに健康に影響が出る放射線量は100ミリ・シーベルトとされている。非常時に厳格な基準を維持しようとすると、避難や外出制限などかえって社会的混乱を招きかねないため、明らかに有害でない範囲での引き上げを促すものだ。
 また、作業員の被曝限度はもともと100ミリ・シーベルトだったが、政府は今回の事故に関して250ミリ・シーベルトに変更した。他の危険のある職業と比較して許容範囲にあるという考え方からだ。


基礎からわかる放射能対策1は、
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38423

食品・水、数回摂取でも問題なし
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38410
健康への影響、100ミリ・シーベルトが目安
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38404
屋内退避は効果的
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38401
雨や雪への過度な対応不要
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38398
避難時、皮膚・口・鼻を覆う
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38396
ヨウ素剤、現段階では不要
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38397
行動記録で被曝量推定
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38395
基準上回る水道水、乳児も入浴・洗髪 問題なし
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38507

0406-638号 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.5~7 [kensa-ML NEWS 【緊急】]


 申し訳ありません。以下、4/6に配信した記事です。ブログへのUPが遅れています・・・


 まだまだ吹く風は冷たいものの、暖かな日差しとなってきました。病院前の桜も現在二分~三分咲きといったところでしょうか。目に優しい色が増えてきました。先日、「てっぱん」の舞台となった尾道に出かけてきました。千光寺公園のソメイヨシノは一分~二分咲き程度でしたが、しだれ桜はちょうど満開。淡いピンク色って本当に目に優しい色ですね。皆さんにもおすそ分けしようと、下手な写真をかなり撮ってきました。メインブログ:http://koji-arai.blog.so-net.ne.jp/ に近日中にUPしようかと思います。被害に遭われた方々に見ていただいて、少しでも気持ちが休まるようだと良いのですが・・・

 各種学会や企業のほうでは災害医療に対する支援措置として、無料で資料を公開しているところも多数ありますね。ご紹介しておきます。ただし期間限定ですので、お早めに。


【震災関連で論文等を無料公開している主なサイト】
◆NEJM  
 
http://www.nejm.org/page/about-nejm/japan
 日本からのオンラインアクセスを2011年5月1日まで無料公開(購読者以外でもフルテキストの閲覧が可能、ただし1989年以前の論文は除く)
◆米国医学図書館NML(National Library of Medicine)
 
http://eai.nlm.nih.gov/
 2011年4月8日まで無料公開(Emergency Access Initiativeサイトにアクセスし、提示される文字等を入力してログイン) 
◆Medical e-hon  
 
http://mrkun.m3.com/qol/me-hon.jsp?pageUrl=meb/bin/pickup_report_desc.asp
 2011年4月30日まで、「災害医療」関連49コンテンツを無料公開(無料ダウンロードには、Medical e-honの無料の会員登録が必要)
◆医中誌Web  
 
http://www.jamas.or.jp/news/news26.html
 2011年4月30日まで、被災地で医療・救助活動に従事する医療従事者に向けに無料公開(東北地方太平洋沖地震の被災地で、医療・救助活動に従事する医療者が対象。IDとパスワードの発行手続きが必要)
◆医学書院 
 
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/311care_kon.html
 2011年4月30日まで、「今日の診療プレミアムWEB版」を無料公開(サイト上で、IDとパスワードを入力して閲覧)
◆東北地方太平洋沖地震による健康障害の予防・治療に関する学術情報リソース 
 
http://www.server-system.jp/resource/
 京都大学のグループによる、コクラン共同計画(Cochran Collaboration)のエビデンスエイドの翻訳・公開。


 大震災といえば、このところ悲しいというか情けないニュースが続きますね。詐欺事件が後を絶たないようですが、会社の所在地が神戸というもの、これは許せません。便乗商法というか、人の弱みに付け込むというか、これは何とも言いようがありません。詐欺事件のニュースと、今朝の神戸新聞コラムを続けてお届けします。神戸の人間は一番痛みが分かるはずなのに・・・


「放射性物質を体外に出す」ニセ薬をネット販売 読売新聞 4/5
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=39115
 体内被曝(ひばく)への効能をうたい、米国から輸入した健康食品を無許可販売したとして、警視庁は5日、健康食品販売会社社長・梅若文孝(50)(神戸市灘区宮山町1)、同社従業員・千葉なつみ(29)(同)の両容疑者を薬事法違反(無許可販売など)の疑いで逮捕した。
 2人は東日本大震災後、福島県や関東地方などの1000人以上にこの健康食品をインターネット上で販売し、2400万円以上を売り上げていたという。
 発表によると、2人は3月25日、茨城県守谷市の女性(48)に対し、「これを飲めば放射性物質を吸着し、約6時間で排せつする。臨床データもある」などと偽り、米国から輸入した飲料用の健康食品「プレミアムゼオライト」3本を計1万5000円で国に無許可で販売するなどした疑い。同庁によると、体内被曝への効能は確認されていないという。


正平調 神戸新聞コラム 4/5
 
http://www.kobe-np.co.jp/seihei/0003926348.shtml
 この人のことがずっと気になっていた。芦屋市在住のオランダ人ジャーナリスト、キエルト・ドゥイツさん(51)。東日本大震災が発生した翌日から東北の被災地で一人、取材を続けている
◆来日して約30年。16年前に阪神・淡路大震災を体験した。その際は、母国の新聞社に被害状況を国際電話で知らせた。それ以降、欧米のメディアに向け、アジア各国の大災害の実情を写真と記事で発信するようになった
◆自身も被災者だったドゥイツさんの姿勢は徹底した現場主義である。今回もすぐ大阪空港から新潟に飛び、レンタカーで福島県に入った。今は岩手県陸前高田市で避難所などの様子をリポートする
◆2004年のスマトラ沖地震では津波被害を受けたインドネシア・アチェの惨状を見た。それと比べても、陸前高田市などの市街地の破壊はより深刻に映るという。「歩いても歩いても、がれきと空っぽの建物ばかり。心が押しつぶされそうになる」
◆被災者と同じように寒さに震え、余震におびえながらの取材。励みは現地の人たちの「やさしさ」と「強さ」だという。「つらさを見せないよう、避難所でもみんな明るく笑っている。東北はそんな人たちの力で、きっと立ち直れる」
◆携帯電話で話を聞けたのは、おとといの夜だった。「兵庫県の人間」を自認するドゥイツさんは最後にこう言った。「あの震災を知る私たちなら、こちらの人と一つになれるはず」


 一昨日のニュースで感心したのは、ソフトバンクの孫正義社長。さすがですね。ゴルフの石川選手もとっても爽やか。先ほどの健康食品販売会社社長とは大違いです。しかしもっとびっくりしたのは、安田善次郎氏。安田講堂でお名前だけは知っていたのですが、人物像を全く知りませんでした。匿名ということについて私はとても共感します。私自身、義援金は匿名にしています。一般大衆に影響力のある方々は名前を公表することで効果もあるでしょうが、私のような一般庶民では名前を記載する必要はないでしょうし、誰がしたか分からないほうが受け取る方々が多くの方々からの心を感じることができるかも?と思うから。だから少額ずつ何回も行っています。タイガーマスク運動みたいなものですね。

 あとは集まった義援金をどのように使っていただくか。困っている方々がほんの少しでも救われればと願います。


産経抄 産経新聞コラム 4/5
 
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110405/dst11040502580007-n1.htm
 ソフトバンクの孫正義社長(53)が、東日本大震災の被災者のために、個人で100億円を寄付するとの発表には、仰天した。経済界からは、すでに「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(62)や楽天の三木谷浩史会長兼社長(46)らが、10億円の寄付を表明している。
▼彼らに匹敵するような太っ腹な実業家といえば、明治から大正にかけて、数多くの破綻銀行を救い、銀行王と呼ばれた安田善次郎が思い浮かぶ。東京大学の象徴ともいえる大講堂の建設費用を寄付して、「東大安田講堂」にその名を残している。寄付した100万円は、現在では約4億円に当たるという。
▼もっとも安田は、原則として寄付を匿名で行っており、生前は知られていない。それどころか、納得のできない寄付の申し入れにはたとえ少額でも拒否したから、世間では「吝嗇(りんしょく)家」の悪評が広がっていた。
▼大正10年に神奈川・大磯の別荘を訪ねてきた男の凶刃に倒れ、82年の生涯を終えたとき、犯人が英雄扱いされたほどだ。一方、安田の訃報を聞いて、「しまった」と口走ったのが、東京市長の後藤新平だった。
▼安田は、後藤の「東京改造」計画に賛同して、当時の国家予算のほぼ半分に当たる8億円の支援を約束していた。その東京が2年後、関東大震災によって壊滅的打撃を受ける。復興のために後藤が立てた案が大幅に縮小される話を、2週間前に書いた。「安田がいてくれたら」と何度も悔やんだことだろう。
▼被災地となった、東北地方太平洋岸の復興には、気が遠くなりそうな時間と資金が必要だ。「平成の安田善次郎」がいることはわかった。後は「平成の後藤新平」の出現を待つばかりだ。


 大気汚染に追い打ちをかけているのが、海への汚染。汚染水を海に流すことは致し方のないことなのでしょうが、海で生活を行っている方々にとっては、本当に死活問題というよりも命そのものを取られてしまうような感覚でおられるのではないでしょうか?それと東電の現場の方による記者会見も拝見しましたが、現場担当者に謝罪会見させるなんて・・・と正直思いました。首脳陣、特に副社長や社長はどうされているのか?頭を下げるのはトップの仕事じゃないの?と思います。ただし、社会的に反感を買うような会見しか出来ないような方なら、致し方のない処置なのでしょうが、いずれにせよ、感情に訴えかけるようなそのような問題ではなく、事実関係をありのままにご説明すべき問題だと思います。


産経抄 産経新聞コラム 4/6
 
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110406/trd11040603420002-n1.htm
 「キッチンで、おみそ汁の残りをシンク(流し台)に流しそうになる。そんな時は『そりゃいかん、ちょっと待て』と思いとどまり、立ったままゴクゴクといただくことにしています」。水泳の元五輪選手で、引退後はタレントとして活躍していた木原光知子は、平成19年に59歳の若さで亡くなった。
▼その前年、読売新聞に「水を愛す」という題で、エッセーを寄せている。木原は、瀬戸内海環境保全審議会委員などの仕事を通じて、水そのものへの関心も強めていた。
▼とりわけ1杯のみそ汁を流すと、魚1匹が「安心して暮らせる」環境を取り戻すのに、風呂1杯の水で薄める必要があると聞いたときの衝撃は大きかった。以来、冒頭で紹介したような習慣を続けてきたという。
▼そんな木原にとって、目を覆いたくなるような事態が続いている。東京電力は、東日本大震災で被災した福島第1原発内にある、低レベルの放射性物質を含む汚染水を海に放出し始めた。数日かけて、計1万1500トンを流す。
▼高濃度の汚染水の流出を食い止めるために、やむを得ない措置だという。東電によれば、近隣の魚介類を毎日食べ続けても、健康には問題がないそうだ。ならば余計に、担当者が涙ながらに発表する姿はいただけなかった。漁業関係者の不安と、国際社会の疑念をかき立てるばかりではないか。
▼日本は、世界で確認された海の生物の約15%が生息する、豊かな海に恵まれている。東大などが昨年夏、まとめた調査の結果だ。水の浄化でも、世界トップレベルの技術を持っている。「水を愛す」ことでは、どこの国にも負けない日本の誇りを取り戻すためにも、原発事故との戦いには、絶対負けられない。


 福島県各地で行われている被ばくについての説明会Q&A集が掲載されていましたのでご紹介します。分けて考えてもらいたいのが、外部被ばくと内部被ばく。内部被ばくの場合には体外への排泄と体内への蓄積が焦点でしょうし、これについての医学的な確固たるものは確立されていない(というより症例数が少ない・・・放射性ヨウ素と甲状腺がんの関連性くらいでしょうね)のが問題。しかし、大丈夫だと専門家に言われても、無駄だと頭で分かってはいても、子供を持つ親にとっては、子供にリスクを背負わせくないというのが率直な感情だと思います。先の見通しが立たないというのも不安感を煽りますね。原子炉の冷却作業如何でしょうが、冷却作業の、ではなく大局的なタイムスケジュールをある程度示すことはできないものでしょうか?スケジュール通りに出来なかった場合に批判を浴びることが懸念材料なのでしょうが、冷却作業の進捗如何によりスケジュールは変更される可能性が強いというのも国民はすでに納得済みだと思います。それとも先読みできないくらい混迷しているのでしょうか?


放射性物質:Q&A 被ばくはうつらない 福島県対策本部 毎日新聞 4/5
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20110405k0000m040128000c.html
 福島県災害対策本部は、県の放射線健康リスク管理アドバイザーを務める長崎大大学院の山下俊一教授と高村昇教授が県内各地で行っている説明会で、参加者から寄せられた主な質問とその回答をまとめた。【関雄輔】

--1時間当たり数マイクロシーベルトの環境に長く住み続けた場合、子供やおなかの赤ちゃんへの影響、将来妊娠した場合のリスクはどのくらいなのでしょうか?
 ◆報道されている値は屋外での線量で、屋内では5~10分の1程度に減ります。現在の状況が続いても、健康リスクがあるとされる100ミリシーベルトまで累積される可能性はありません。同じ線量でも、1回で100受けるより、少しずつ受ける方がリスクがはるかに少ないです。
 チェルノブイリ周辺では、事故当時0~5歳の子供を中心に甲状腺がんの発生率が増加しましたが、妊娠中だった子供で、増加の報告はありません。将来の妊娠に対しても心配いりません。

--現在妊娠中で、飲料水も料理もミネラルウオーターを使っています。水道水で野菜を洗うのが怖いのですが、大丈夫でしょうか?
 
◆基準値以上の放射性ヨウ素が検出された水を飲まないのは賢明な選択です。ただし、数回飲んだからといって心配する必要は全くありません。逆に水を飲まない、ミルクをあげられないというのは、乳幼児の健康に良くありません。野菜を洗ったり、顔を洗ったり、お風呂に入ったりと生活用水に使うのはなんら心配いりません。

--子供を外で遊ばせても大丈夫でしょうか。洗濯物を外で干すのは?
 ◆1時間当たりの線量が10マイクロシーベルト以下であれば、外で遊ばせて大丈夫です。通学も問題ありません。ただ指についた土をよく洗わせたり、上着のほこりを払わせたりしたほうが良いかもしれません。洗濯物については、取り込むときに少し丁寧にほこりを払う程度で問題ありません。

--今後再び放射線量が上がってきたら、どのくらいで気をつけるべきでしょうか?
 ◆国の指標では、線量の累積値が外部被ばくで10~50ミリシーベルト、内部被ばくで100~500ミリシーベルトになる可能性がある場合に、屋内退避か避難を指示するとされています。一時的な線量で判断することはできません。国や県が公表しているデータの推移に注意してください。

--原発周囲20キロ圏から退避しているが、家の中の物を取りに帰りたい。
 ◆20キロ圏内は、退避指示が出ていますので、国から許可があるまで絶対に入らないでください。

--外出する際、どの程度の防護策をとったら良いのでしょうか?
 ◆マスクは放射性物質を防ぐ効果はあまりありません。外出した際の上着は、家に入るときに軽くほこりを払う程度で良いでしょう。ビニール袋に詰める必要はありません。多少の雨も問題ありませんが、念のため傘をさすほうが安心できるでしょう。手を洗ったり、髪を洗うのも、帰宅直後にしないといけないわけではありません。

--浄水器で水道水の放射性物質が除去できるのでしょうか。沸騰させる効果は?
 ◆セシウムについては、浄水場でろ過される際に吸着され、水道水には出ません。ヨウ素は、水道水に出てきて浄水器でもろ過されないと思われます。ヨウ素の沸点は高いので、沸騰させてもあまり蒸発しないでしょう。

--被ばくは人にうつるのでしょうか?
 ◆被ばく自体はうつりません。放射性物質をチリのようなものと考え、きちんと衣類などから払い落とせば、うつることはありません。

--「ただちに健康には影響ない」という言い方をよく聞くが、どう理解したらよいのでしょうか?
 ◆各種基準値は、そのレベルの放射線量の食品や水を1年間食べ続けたら影響が出る可能性があるという目安です。この場合は、数回または1週間程度、基準値を多少超えた食品を食べたとしても影響はありません、ということです。


 あらゆるものを破壊し、飲み込んだ大震災、大津波から一か月を経過しようとしています。まだまだ医療事情が悪いところや支援物資が届かない、医薬品も届かない、何もないところで苦しい日々を送られている方々もまだまだ多数おられることだと思います。今回の大震災では、急性期医療の出番は本当にわずかで、慢性期疾患に対する継続的な医療へと急激に変化しました。また町そのものが流されたため、慢性期疾患患者さんのお薬が無くなってしまうということも多くありました。あらゆるサイトで医薬品に関するデータベースも公開されてはいますが、医薬品そのものがまだまだ足りない状況だと思われます。ライフラインとともに、物資供給ルートの整備も暫定措置ではなく、今後早急に確立しなければなりませんね。


被災の地から 救護所:上 命つなぐ薬、求めて 朝日新聞 4/1
 
http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201104010319.html
 「まだ始められないけど、寒いから中に入って下さい」
 31日朝8時半すぎ、保健室の戸を開けた岩手県立中央病院(盛岡市)の医師、千葉亮祐(ちばりょうすけ)さん(29)が廊下で待つ人たちに声をかけた。約230人が避難生活を送る陸前高田市立広田小学校。1階の保健室が救護所だ。
 診察が始まる9時まで、千葉さんと患者たちがストーブを囲む。「あの日、(津波に襲われた)高田病院にいたんです」「津波が来たら走っても間に合わないね」
 患者は次々にやって来る。診察が始まるころ、15人は座れる待合スペースが埋まった。
 家、車、そして人。あらゆるものが破壊され、のみ込まれたあの日から、3週間になる。
 広田小は広田半島の真ん中辺りの高台に立つ。半島は東側からも西側からも津波に襲われ、一時は市街地から半島への道路が寸断された。
 学校は今も水道や電気が復旧せず、住民たちは給水車や発電機に頼って生活する。地震直後は、被災した近くの診療所の医師が住民を診ていた。21日、県立中央病院から応援が来た。
 患者の多くは、高血圧や脂質異常症といった持病をかかえ、津波で薬を流されたり、薬がなくなってもガソリン不足で病院に行けなくなったりした。
 臼井伸夫(うすいのぶお)さん(76)も血圧を下げる薬を流された。数日前、別の医師に処方された薬を飲んでいたが、血圧が下がらないのが気がかりだった。
 25日、交代で来た医師の桐田美帆(きりたみほ)さん(26)が臼井さんを診た。血圧は上が169で下が98と高い。でも、桐田さんはこれまでの薬で様子を見ようと判断した。「血圧を毎日測ると、もう少しお薬を足したほうがいいかどうかわかるので、ここに測りに来て下さいね」と伝えた。
 言葉を聞いて、臼井さんは少し安心した。睡眠や運動の不足も影響しているかもしれない。
 続いてやって来たのは、臼井さんと同じ集落に住んでいた佐藤安夫(さとうやすお)さん(81)。自宅が津波で流された。被災後に処方された薬が残り少なくなり、追加してほしいというが、名前が出てこない。「なんとかファリン」というのが精いっぱいだった。
 「ワーファリン? それともバファリン?」「心筋梗塞(こうそく)とか脳梗塞って言われたことある?」「脚の付け根から管(くだ)っこ入れたことある?」。桐田さんはゆっくり質問を重ねていく。
 佐藤さんは30人余の住民らと寝起きする教室から薬の袋を取って戻った。血液が固まるのを防ぐ薬が残りわずかだった。
 桐田さんは4日分を処方し、さらに2週間分を盛岡から届けてもらうよう手配した。佐藤さんは「薬が少なくなると心配。もらえて安心しました」と口元を緩めた。
 桐田さんは、約100種類の薬剤リストと薬辞典を繰り、患者に合う薬を探しては、「ここにはないですよね」「これはまだありますか」と薬剤師の鈴木友和(すずきともかず)さん(31)に尋ねた。鈴木さんは勤務していた陸前高田市内の調剤薬局が津波に流され、15日からボランティアで救護所に詰めている。
 25日午後、近くに実家がある戸羽和美(とばかずみ)さん(19)が訪ねて来た。「お花持ってきたんです」。白い一輪の花を看護師の女性に手渡すと、すぐに出て行った。
 東京で働く戸羽さんは前日、ようやく実家にたどり着き、1週間近く連絡がとれなかった母親や祖父と再会した。自身も通った同校に救護所があると聞き、「癒やしになれば」と、実家の庭に咲く花を摘んできた。
 「うれしいですね」。患者たちの対応に追われる看護師たちが笑顔になった。
 ほっとする間もなく、今度は焦った様子の男性が入ってきた。近くの中沢浜公民館に身を寄せる佐々木芳夫(ささきよしお)さん(60)。「薬がまだ届かないんです」
 2008年夏に軽い脳梗塞を起こして以来、血液が固まるのを防ぐ薬を毎日のみ続けていた。津波で家の中のものをほとんど流されたが、泥だらけの容器に入った5日分の薬を長女(27)が見つけてくれた。地元の人に何とか薬が手に入るよう頼む一方、少しずつのんでいた薬は2日前になくなった。
 「再発したらどうしよう」。不安でたまらなかった。(南宏美)


被災の地から 救護所:中 脳梗塞再発の不安抱えて 朝日新聞 4/2
 
http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201104020200.html
 被災者約230人が暮らす岩手県陸前高田市立広田小学校。3月25日の午後、保健室に設けられた救護所に、別の避難所にいる佐々木芳夫さん(60)が焦った表情でやって来た。
 脳の動脈が詰まる脳梗塞(こうそく)を患ったことがある。再発を防ぐため、血液を固まりにくくする薬を飲んでいたが、地震後、足りなくなって困っていた。
 「薬を飲んでた時は血圧が120くらいだったのに、4日前は140でした」。持ってきた薬の説明書を医師に見せた。
 2008年、土用の丑(うし)の日。市中心部で仕出し業を営む佐々木さんはウナギをたくさん焼き、ひどく疲れた。夜、自宅で家族と食事していたら、おかずやビールが口の端からこぼれた。言葉もはっきり話せない。
 翌日、県立病院で「脳梗塞の疑い」と診断され、入院した。脳血管の状態をみる検査には、手足や言葉が不自由になるリスクがあると説明された。
 店の借金を返し終え、「バリバリ稼ごう」と思っていた矢先。「後遺症が残ったら働けない」。迷ったが、妻の礼子(れいこ)さん(57)らに励まされ決心した。
 最初に詰まった細い血管以外、異常はなかった。退院のとき、医師に忠告された。「治ったと思って薬をやめたり、たばこを吸ったりして、再発する人が多いんですよ」。その後、薬を欠かさず、30年以上吸っていたたばこもやめた。
 今年3月11日、いつも通り、生のタマネギを「体にいいはず」と食べ、薬を飲んで働いた。午後、弁当の空き箱を回収して店に戻った。厨房(ちゅうぼう)で洗い物をしていた礼子さんと長女(28)に「回収してきたよ」と声をかけ、空き箱を置いた。
 その時、地面が大きく波打った。店から海岸まで直線で約500メートル。「とんでもない津波がくる」と思った。礼子さんと長女と一緒に、街の北側の高台を車で目指した。2月に地震が頻発したとき、家族で確認した避難経路の一つだった。
 水がひいた後、広田半島の西側にある自宅に行ってみた。建物は残っていたが、家財道具がほとんど流されていた。
 真っ先に探したものの一つが、薬を入れたプラスチック容器。いくら探しても見当たらず、途方に暮れた。


被災の地から 救護所:下 やっと見つけた薬 節約 朝日新聞 4/3
 
http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201104030077.html
 自宅を津波に襲われた岩手県陸前高田市の仕出し業、佐々木芳夫さん(60)は、脳梗塞(こうそく)の再発を防ぐ薬をなくしてしまった。連絡がとれない次女(26)のことはもっと心配だった。
 次女が勤める市内の保育所は高台にある。「たぶん、津波の被害はないだろう」。
気になりながらも、当日は、店で働く妻の礼子さん(57)、長女(28)と3人で知人宅に避難した。
 翌日、人づてに「(次女が)保育所で炊き出しを手伝っているらしい」と聞き、少し安心した。電話はつながらず、現地までの道も通れなくなっているらしい。14日、ようやくたどり着くと、次女の姿はなかった。
 その数時間後。同僚の家の近くにとめられた次女の車を、偶然通りかかった佐々木さんが見つけた。「死んだと思った」。涙を流して再会を喜び合った。
 家族がそろい、自宅の片付けを始めた。残ったテレビ台の下で、薬の入った容器を長女が見つけた。容器は泥まみれだったが、中身は無事だった。
 2008年夏に脳梗塞を患ってから、薬をのみ続け、地震の日の朝が最後だった。再発を恐れていた佐々木さんは「これで生きられる」と思った。
 ただ、残るのは5日分だけ。ふだんは1日1回のむところを、2日に1回に減らした。同じような悩みをかかえる他の住民と一緒に、地区の対策本部に薬をもらえるよう頼んだが、なかなか避難所に届かなかった。
 焦りが募り、避難所に近い広田小学校の救護所を訪ねた。県立中央病院の医師、桐田美帆さん(26)にそれまでの薬の説明書を見せ、経緯を説明した。
 「まずは、3日分のお薬を出しますね」。桐田さんに言われて、気持ちが和らいだ。「近くに医師がいてくれてよかった」。そう実感した。
 2日後、市の仮設住宅を申し込んだ。住めるのは2年間で、家賃以外の光熱費や家具など費用は自己負担という。
 店を流され、自宅も住める状態にはない。そもそも街自体が壊滅状態だ。2年後に復興し、働く場があるという希望を、今は持てない。
 まずは仮設住宅に入り、いつかそこから出る。「一歩ずつ進むしかない」。そう自分に言い聞かせている。(南宏美)


 さて本日のメインニュースです。

 以前にもお話しましたが、被災地、特に避難所等では、劣悪な環境ゆえ各種感染症が蔓延している状況であり、これは容易に予想されたことでした。が、予想以上に慢性疾患が主となるステージが早く来たため、医療対応ができていないことも多々ある状況となっています。阪神大震災の時も、目の前が被災地であり、苦しみ助けを求めている方々を助けたいけど助けられない、行政の壁というものがあり、悩み苦しみました。おそらく全国にいる多くの医療従事者は患者のために何かできないものかと悩み苦しんでいると思います。早く組織的に支援体制が組めればと願っています。情報提供であるとか、メールでお話しし悩みを聞くとか、そんなことくらいしかできない自分がもどかしくもあり、悲しくもあります。また本当につまらないことや人に対応し、忙殺されている自分が情けなくもあります。


【日経メディカルオンライン 2011/04/02】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.5
 震災に伴う感染症にどう対処するか? 沖縄県立中部病院感染症内科 高山義浩氏
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201104/519180.html
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 人が密集して生活する避難所は、感染症が蔓延するリスクが非常に高い。避難所で特に注意すべき感染症とその対策について解説してもらった。(まとめ:日経メディカル東日本大震災取材班)
 たかやま よしひろ氏○2004~08年、佐久総合病院(長野県佐久市)に総合診療医として勤務。09年4月から10年3月まで厚生労働省新型インフルエンザ対策推進室室長補佐を務める。
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 被災地の感染対策で重要なのは、まずインフルエンザ、次いで、ノロウイルス・ロタウイルスといったウイルス性胃腸炎だろう。また、高齢者の尿路感染症を予防することも重要だ。
 感染対策の第一歩は、被災地に感染症を持ち込まないことだ。避難所の中でインフルエンザやウイルス性胃腸炎が自然発生するわけではない。誰かが持ち込んでいるため、それを極力遮断することが重要となる。院内感染を広げるのが医療従事者であることが少なくないように、被災地で感染を広げるのが避難所を巡回するボランティアである可能性もある。ボランティアにも手洗いを心がけさせ、感染症が流行する地域ではマスク着用を促したい。
 また、避難所を個人の家と同じような感覚で扱い、その隔離性を維持することはプライバシーに配慮することのみならず、感染対策上も有効となる。複数の避難所を巡回しているようなボランティアは、なるべく避難所に入らないことが望ましい。もちろん、発熱しているボランティアは被災地を離れるべきである。
 感染症のアウトブレイクを早期に発見できれば、感染対策を効果的に開始することができ、ハイリスク者を避難させることもできる。そのためにも、避難所ごとに感染症サーベイランスを行いたい。専門的な知識は不要だ。発熱や咳、嘔吐、下痢など症状別に有症者数を毎日カウントし、避難所の中で急速に増えてきている症候がないかを確認する。何らかの兆候を察知したら、保健所などの専門機関に連絡し、対策を仰ぐようにしたい。
 インフルエンザを含む呼吸器疾患が発生したら、有症状者にはマスクの着用を徹底させる。マスクがなければ、周囲の人と2m以上の間隔を空けるか、ついたてで隔離することが感染拡大の防止策となるだろう。過度に乾燥させないように、換気は1日2回程度に抑えた方がよい。経験豊富な感染管理看護師(Infection control nurse:ICN)がこうした避難所で果たせる役割は大きいと思う。
 尿路感染症は、若い女性や高齢者などが起こしやすい。混雑したトイレになるべく行かずに済むよう水分制限するためだ。予防は水分を多く摂取し、排尿を我慢しないことだ。そのためにもトイレの増設と衛生管理の支援が求められる。具体的な設置目標数は、被災者20人に1つのトイレといわれている。これはウイルス性胃腸炎の流行を抑止させるためにも必要な条件である。
 また、尿路感染症に関連して配慮したいのは、成人用オムツや尿取りパッドなどの配布方法だ。こうした生理用品を必要とする中高年も少なくないだろうが、自分からは言い出せず、水分を制限している可能性もある。プライバシーに配慮して、申し出なくても取れる場所に在庫を置いておくことも、尿路感染症の一つの予防策となるだろう。
 有症状者には、安全な水と経口補水塩(ORS)を含む基本的医薬品が手に入るよう支援したい。言うまでもなく避難所は病院ではないので、症状の重い方については、医療関係者は「避難所では診られない」と行政などに強く訴えられた方がよい。これについては、無理にがんばらせないことがご本人のためであり、感染対策としても望ましい。
 被災地の状況は地域ごとに刻々と変化していると思う。特に、水や消毒薬などの物資の不足、トイレの不足が、いまだ多くの避難所において対策の大きな足かせとなっていると認識している。感染症医の立場から正直に申し上げれば、あらゆる厳格な対策を試みても、一緒に寝起きしている限り、感染を確実に回避することは困難だ。限られた物資を浪費するよりは、乳児などのハイリスク者を避難所外へ移動させることを考えた方がいいかもしれない。
 ただし、妊産婦や高齢者を感染防止のために避難所から動かそうという場合には、家族もそろって移動できるように支援すべきだ。多くの物を失い、傷ついた被災者にとって、家族の結び付きは大きなよりどころとなっている。これは災害支援における重要な視点であり、感染対策に優先されるものだと思う。
 被災地における究極的な感染症対策は、避難所の人口密度を減らすことだと言える。復興の足取りが加速するとともに、避難所暮らしが長期にわたらないよう、仮設住宅の建設が進むことを期待する。それまでの間、被災地外の市民としては、積極的に被災者の疎開が受け入れられるよう呼び掛けたい。(談)


【日経メディカルオンライン 2011/04/03】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.6
 震災に伴う肺塞栓症にどう対処するか? 新潟大呼吸循環外科学分野 榛沢和彦氏(2011.4.4訂正)
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201104/519181.html
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 避難生活の長期化で危惧されるのが深部静脈血栓症に伴う肺塞栓症。いち早く宮城県内の避難所を回り、被災者を対象に血栓の有無を調べた榛沢和彦氏に聞いた。
 はんざわ かずひこ氏○専門は補助循環、大動脈ステントグラフト、肺塞栓症・深部静脈血栓症の予防など。中越地震で避難生活を送る被災者の深部静脈血栓症の実態などを調査。東日本大震災でも震災後3週間で3度宮城県入りした。
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 避難生活が長引くことで心配されるのが深部静脈血栓症に伴う肺塞栓症だ。2004年の新潟県中越地震では、車中に避難した被災者の30%、避難所に避難した被災者の5~10%に深部静脈血栓が認められ、肺塞栓症による死亡者も相次いだ。
 東日本大震災では、宮城県立循環器呼吸器病センター循環器科の柴田宗一氏とともに宮城県の石巻市や南三陸町など約20カ所の避難所を訪問。下肢膨張などを認めるリスクの高い被災者を対象に携帯用超音波装置で下肢の深部静脈血栓の有無を調べた結果、194人のうち44人(23%)に血栓が認められた。
 深部静脈血栓は、避難生活を始めてから1~2週間の、支援物資などが乏しい時期にできやすい。一度血栓ができると慢性化する上、血栓のある患者のうち、腫脹などの症状が認められるのは20%程度に過ぎない。80%は無症状のため、呼吸困難など肺塞栓症の症状を呈さなければ気づかれにくい。
 東日本大震災での血栓の発生率は今のところ中越地震と同程度。ただし今回は、厳しい避難生活が長引くことが予想される。震災後3週たっても1日2食の避難所が多く、寒さも手伝ってあまり水分を摂取しない被災者もいる。被災者数が多いため、床一面に布団が敷き詰められ、歩くスペースのない避難所もある。こうした状況から、今回の震災では1カ月たっても新たな血栓ができる可能性があり、慢性期の血栓の発生率が中越地震よりも高くなる恐れがある。
 被災者の中には他県などに避難する人も少なくない。そうした被災者を診る際は、深部静脈血栓症のリスク因子の有無を確かめてほしい。リスク因子は(1)下肢の腫脹がある(2)打撲を含む外傷がある(3)車中泊の経験がある(4)運動していない─の4つ。加えて女性や静脈瘤もリスク因子となる。リスク因子を持っていたり、超音波検査などで深部静脈血栓が認められたりした被災者には、肺塞栓症のリスクを説明した上で、水分摂取や運動を勧める。弾性ストッキングの着用も有用だ。
 さらに超音波検査で近位深部静脈血栓が認められ、Dダイマーの値が高ければ循環器科や心臓血管外科のある総合病院などへ紹介するといいだろう。ただしその際は、ワルファリンの投与を控えてほしい。ワルファリンがプロテインCなどの抗凝固活性を低下させてしまうからだ。抗凝固療法を行うのであれば、ヘパリンカルシウムやフォンダパリヌクスナトリウムの皮下注射がよい。(談)


【日経メディカルオンライン 2011/04/04】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.7
 震災に伴うPTSDにどう対処するか? 防衛医大精神科学講座講師 重村 淳氏
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201104/519193.html
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 被災者の5~10%が発症する外傷後ストレス障害(PTSD)。被災者ばかりでなく、過酷な業務に携わる救援者のPTSDも問題だという。
 しげむら じゅん氏○精神科医。救援者のメンタルヘルスを専門とする。日本トラウマティック・ストレス学会副会長。東日本大震災では3月20日に宮城県仙台市に入り、自衛隊員など救援者のサポートに従事。
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 今後被災者の間で表面化してくるとみられるのが、外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder:PTSD)だ。生死の境をさまようような経験をして心的外傷を受けると、誰もが恐怖感や無力感を感じる。通常、時間の経過とともに恐怖感や無力感は自然と消えていくが、1カ月以上たってもそうした状態が続く場合、PTSDが疑われる。
 PTSDは、心的外傷を受けた出来事などについて思い出したくないのに思い出してしまう「侵入」、音などに過剰に反応したり不眠になったりする「過覚醒」、出来事について考えることを避けたり、喜怒哀楽などの感情が麻痺したりする「回避・麻痺」の3つの症状を呈する。プライマリケア医がスクリーニングするには、3つの症状の有無を確かめる質問が有用だ。被災者の中でも、小児や女性、障害者や社会的弱者が発症しやすく、過去の自然災害での発症率は被災者のうち5~10%程度。
 患者は、うつ病やパニック障害などを併発することが多い。PTSDの3つの症状に加え、そうした疾患を併発している患者に対しては、社会的支援に加えて薬物治療も考慮する。第1選択は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)だ。国内ではPTSDの適応で承認されている薬剤はないが、米国ではパロキセチン(商品名パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)がPTSDに対して承認されている。薬物治療は少量から始め、症状の改善が見られても少なくとも1年間は投与を続ける。自殺願望やアルコール依存症のある患者、食事摂取や生活維持が困難な患者は専門医への紹介が必要だ。
 被災者ばかりでなく、救援者もPTSDを発症するリスクがあり、職種によっては被災者より高い発症率が認められている。自衛隊や消防、警察などの救援者は救援活動の中で心的外傷を受けるためだ。04年のスマトラ沖地震では、海に打ち上げられた遺体の回収などに携わった作業員の心的外傷が問題となった。東日本大震災でも救援者、特に遺体の回収や身元確認、原発事故対応などの業務に当たっている自衛隊員や警察官、消防隊員、自治体関係者などへの精神的ケアが求められる。
 PTSDではないものの、テレビなどで被災地の映像を長時間視聴して、腹痛や頭痛、不眠などを訴えて医療機関を受診する患者も出ている。こうした患者には必要に応じて対症療法を行うとともに、意識的に腹式呼吸をするよう勧めたり、従来の日常生活を取り戻す、テレビの視聴時間を最小限にとどめるといったアドバイスをするとよいだろう。(談)


0401-637号 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 [kensa-ML NEWS 【緊急】]


 いよいよ平成23年度を迎えてしまいました。私の場合慌ただしく新年度を迎えたため、単なる日付が変わったくらいの感覚しか現在のところ持ち合わせていません。しかし、新たな出発、再出発をされた方も多数おられることと思います。

 全国津々浦々の大変お世話になった方々で、昨日で退職される方も多数おられました。その方々すべてにお電話を含め、ご連絡をさせていただきたかったところですが、一部の方々にしかご連絡できませんでした。私がお伝えしたかったのは、退職された後も、これまで通り、これまで以上にお付き合いをしていただきたかったのです。幸いにして退職後も細く長くのお付き合いをしてくださっている方々も多数おられます。このメールニュースやブログを通じて私の気持ちをご理解いただける方がおられましたら、ぜひご連絡をいただき、これまで以上のお付き合いができれば幸いです。

 今週に入り、ようやく日中は暖かい日差しが差し込むようになり、今日などはすっかり春本番の神戸です。病院前の桜並木もようやくつぼみが膨らみ、一部花が咲いているものも見かけました。心穏やかに過ごせるような写真が撮れれば、ブログにUPしてみたいと考えています。

 今日は4月1日。エイプリルフールですが、日本全体が自粛ムードのため、各企業もエイプリルフールのイベントを差し控えているところが多いそうです。もちろん内容にもよりますが、誰もがホッとするような内容のものであれば構わないと思うのですが・・・おそらく被災者の方々も自粛、自粛のオンパレードは望まれていないことだと思います。逆に気晴らしすることも、必要ではないかと。被災地におられる方々からのメールなどを拝見していて感じることですね。私自身、4/1は非常に楽しみにしていることがあります。英国BBCの報道。今年はどんなものだったのでしょうか?ちなみに私のお勧めは、空飛ぶペンギンですね。凝ってます。も一つおまけに1957年のスパゲッティ。これは名作です。
 
http://www.youtube.com/watch?v=9dfWzp7rYR4
 http://www.youtube.com/watch?v=GXmaS1ZzpA8&feature=player_embedded


 さてここからは震災関連記事に移ります。

 被災者の皆さんのご苦労はもう言うまでもありませんが、原発問題で現場で悪戦苦労している方々の姿が少しずつ見えてきたこの頃です。関連ニュースを見るたびに、聞くたびに、現場の方々に対する言葉に表せないほどの感謝の念がわいてきます。非常に過酷な環境下で取り組まれている姿勢を政治家の皆さんはどのように感じておられることでしょう。陣取り合戦をしている場合じゃないと思いますが。


福島第一原発―長期戦支える人を守れ 朝日新聞社説 3/31
 
http://www.asahi.com/paper/editorial20110331.html#Edit1
 津波被害で危うい状態にある福島第一原子力発電所の原子炉を落ち着かせる作業はますます難しく、そして長びく様相を見せている。
 強い放射能を帯びた水が建物の地下などに大量にたまって作業の邪魔をする一方で、原子炉や核燃料の貯蔵プールを冷やすには、水を注ぎ続けるしかない。だが、注げばそれだけ汚染された水があふれ出す。
 1~4号機の現場で、そんなバランスが必要なきわどい作業を根気よく続けながら、放射性物質が外に出るのを抑え込んでいく。それが目下の課題である。時間がかかることを覚悟しなければならない。
 枝野幸男官房長官も「温度がある程度、安定的に下がるまでは相当な時間がかかる」と語った。
 長丁場の闘いとなれば、この際、しっかり態勢を立て直すことが求められる。なにより忘れてならないのは、現場で働く人たちのことである。
 その過酷な状況の詳しい様子が、今週になって原子力安全・保安院によって明らかにされた。
 発電所の敷地内は高濃度の放射性物質が飛び散っているため、作業する人たちは外気の入らない特別の建物に集まり、床で毛布にくるまって雑魚寝している。食事は1日2回、朝は乾パンと野菜ジュース、夜も非常食のご飯と缶詰だ、という。
 放射能レベルが高く、がれきも散らばる場所で危険に直面しながらの作業である。現場を離れた時くらいは休息を十分にとれるよう、東京電力と政府は手を打ってほしい。
 それは、二次被害を防ぎ、原子炉を早く安定させることにもつながる。限度を超えた疲れは、作業ミスの引き金になりかねない。
 今後、汚染水の移しかえなどの作業が増えれば、さらに人力が要る。多くの人に働いてもらうには、被曝(ひばく)線量を極力抑えることと、十分にリフレッシュできる環境を整えることは必須の条件である。
 教育や訓練によって作業ができる人を増やすことを、早めに考えておく必要もあるだろう。
 放射性物質が大気や海に出るのをできる限り抑えながら、効率的に作業を進めるための方策を編み出すことも、今後の重要な課題だ。それには、内外の知恵を総動員したい。
 四つの原子炉施設で同時並行に、不安定状態の制圧をめざす、世界でも例のない難作業である。
 国内の技術者や研究者はそれぞれの立場で持てる力を発揮してほしい。関連学会もシンクタンク役を果たすべきだ。米国をはじめ、原子力分野の経験が長い外国から支援もある。力をあわせて立ち向かいたい。


 原発事故が発生してから、まずシーベルトという単位が耳につき、次にベクレル。おそらく皆さんは何度も報道されているので、ご理解されている方が殆どだと思いますが、再整理のつもりで掲載します。簡単に言えば、人体への影響は「シーベルト」、放射性物質が放射線を出す能力は「ベクレル」。


ベクレルとシーベルト ― 放射能と影響の関係 ―(一部引用)
 
http://www.ies.or.jp/japanese/mini/mini100_pdf/2006-01.pdf
【新しい単位の名前】
 レントゲンやキュリー夫人という言葉を耳にしたことがあると思います。物体を通り抜ける目に見えない光線のようなものを発見し、X 線と名づけたドイツの科学者レントゲン。フランスの科学者ベクレルがウランから放射線が出ていることを発見したことに基づいて研究を進め、放射線を出す物質を分離してラジウムなどを発見したフランスの科学者キュリー夫人。この人たちの名前は、放射線に関係する単位に使われました。
 色々な科学技術に関する学問分野で、共通の考え方に基づいた国際的な標準単位( 国際単位 )を使おうということが 1960 年の国際度量衡総会で決定されました。現在では、放射線に関する分野においても国際的な標準単位が導入され、それに伴い、「キュリー」に代わって「ベクレル」という単位が、「レム」に代わって「シーベルト」という単位が使われています。シーベルトはスウェーデンの科学者で、放射線防護のことで功績がありました。
【放射能の強さがベクレル】
 私たちが生活しているまわりの地面、建物、空気、食物には、放射線を出す天然の物質が含まれています。原子力施設でも、ウランの核分裂などによって放射線を出す物質が新たに生成し、その一部が環境中に放出されています。
 放射線を出している物質を放射性物質といい、放射線を出す能力のことを放射能といいます。物質を構成している原子の中心には原子核があります。放射性物質ではその原子核が不安定なために、放射線を出して安定な原子核に変わります。このことを崩壊と呼んでいます。
 1 秒間に原子核が崩壊する数で放射能の強さを表し、その単位がベクレル (Bq) です。
 1 秒間に 1 個の原子核が崩壊すると 1Bq になります。崩壊するときに出る放射線の種類やエネルギーの大きさには関係がありません。放射能の強さ (Bq) は、放射性物質の量を表すために用いられます。
【放射線を受けた影響はシーベルト】
 ヒトが放射線を受けることを被ばくといいます。体の外部から放射線を受ければ外部被ばく、呼吸や食物を通じて体内に取り込まれた放射性物質からの放射線を受ければ内部被ばくになります。
 被ばくによる影響を評価する場合は、先ず、放射線が当たる臓器などの組織が1kg あたりに吸収する放射線のエネルギーを計算します。この値の単位をグレイ (Gy) といいます。次に放射線の種類によって影響が異なるので、放射線の種類ごとに定められた値 ( 放射線荷重係数 ) を掛けます。また放射線の当たる組織によって放射線感受性に違いがあるので、組織ごとに定められた値 ( 組織荷重係数 ) を掛けます。このようにして得られた値が 1 つの組織への影響の評価値です。最後に放射線が当る全ての組織についてその値を計算し合計した値が全身への影響の評価値 ( 実効線量 ) で、単位はシーベルト (Sv) です。
【放射能が強くても影響は小さいこともある】
 被ばくによる影響の評価では、外部被ばくと内部被ばくの両方を考える必要があります。その評価に際しては、放射線の種類やエネルギー、放射線が当たる人体の組織も関係しています。
 六ヶ所村に建設された再処理工場から放出される気体状の放射性物質による被ばく影響評価を例にして説明します。

ベクレル
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%AB
シーベルト
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88


 医療分野からも、原発作業に携わる方々に対して、様々な提言をされているようですね。しかしながら「被ばく」を前提としたお話ではなく、「被ばく」を防止することがまず先決だと思いますが、このあたり、医療分野からのお話ではありません。おそらく今後の作業工程をお聞きすると、さらに人力が必要となるでしょうから、防護対策を徹底してもらいたいものですね。


《東日本大震災》 原発作業をする方の血液細胞保存の態勢が整う 3/30
 アスパラクラブ運営部兼アピタル編集部 藤田明人
 福島第一原子力発電所で復旧作業にあたる方が、万一大量の被曝をした場合の治療に備え、事前に血液細胞を採取、保存しておく態勢が整った。
 29日、東京都港区の虎の門病院で、同病院の谷口修一・血液内科部長と豊嶋崇徳・九州大学病院遺伝子・細胞療法部准教授らが会見し、発表した。
 大量の被曝をすると、骨髄抑制(血液毒性)と呼ばれる症状が起きる。骨髄は、白血球・赤血球・血小板・リンパ球などの血液中の細胞をつくる重要な機能をもっているが、これが損なわれてしまう。リンパ球は免疫を担っており、これが減ると
感染症のリスクも高まる。
 治療法の一つは、血液細胞の源である造血幹細胞の移植。この細胞は、骨髄の中で無限に自己を複製し、白血球や赤血球などに分化・増殖していく。つまり、うまく移植できれば、損なわれた機能を補える。
 移植は他人からでもできるが、遺伝子の違いによるGVHD(慢性移植片対宿主病)と呼ばれる合併症の危険などがある。元々自分の造血幹細胞を採取、保存しておけば、この危険を避けつつ移植できる、というわけだ。
 虎の門病院では、原発の事故後検討を進め、1日あたり2人の受け入れをできる態勢を整えた。谷口部長は「今後どのような不測の事態が起こるかわからない。既に、作業員がいる企業から『事前採取して欲しい』というオファーを頂いている」と述べた。
 また、日本造血細胞移植学会、日本輸血細胞治療学会などもこの取り組みに同意し、29日現在で、全国107の医療機関で採取・保存ができるようになっているという(個別の医療機関名は現時点では公表されていません)。
 日本造血細胞移植学会が3月29日に出した声明 
http://www.jshct.com/pdf/110329announce.pdf
 ただし、造血幹細胞の採取には時間と費用がかかる。通常の方法だとおよそ5日間かかるうえ、病気を治すわけではないので、保険外診療になる。採取に関する薬剤や医療材料は企業からの寄付でまかなわれるが、採取する人の自己負担額は、入院費を含めて少なくとも十数万円以上になりそうだという。
 時間がかかることの対策として、谷口部長は「ジェンザイム社の『モゾビル』という日本未承認薬を使えば期間が1日~2日に短縮できるので、虎の門病院では、院内の倫理委員会の開催など準備を進めている。既に50人分の『モゾビル』が日
本に到着している」と説明した。
 一方、造血幹細胞の採取・保存については、チェルノブイリで被曝治療をした経験をもつ米国人医師、ロバート・ゲイル博士が、「ごくわずかの効果」しか見込めず「思いがけない副作用」をもたらすかもしれないとして、否定的な見解を示している。
https://aspara.asahi.com/blog/kochiraapital/entry/H09GQUXUMx
 この点を記者から問われた谷口部長は、「ゲイル博士とは25年の付き合いがある友人だ」と前置きした上で、「もちろん本来は、大量の被曝が起こらず、事前採取が役立たないことを望んでいる。が、だからといって無駄なことだと言われると返答のしようがない。また、採取する方にとてつもない負担やリスクがあるならともかく、これまでの通常の医療の範囲で行うことだ。(未承認薬を使わない)通常の方法の場合、既に多くの事例があり、微熱や腰痛などの副作用があることも把握できている」と反論した。
 また、九州大の豊嶋准教授も「もちろん、事前採取は万全の方法ではない。かなり大量の被曝をして腸管などが傷つくと、移植では救命できない。だから、事前採取は100あるリスクを99に下げるだけのようなものかもしれない。が、それでも私たちができる準備として、重要なことだと思う」と補足した。
 会見に同席した虎の門病院の山口徹病院長は、「ぜひこの提案が、作業にあたられる方の役に立つことを願っている」と述べた。
 同病院への相談は、医事課医事係(03・3560・7754)へ。


 さて避難所等における過酷な環境についてのレポートは多数報道されていますが、じゃあどうすればいいのか?のような具体的なものに突っ込んだ内容のものは少ないかと思います。もちろん「じゃあどうするのか?」の前に「このような状況だ」というものがあることは承知の上ですが、あまりにも「このような状況だ」に加え、感情に流されたようなものばかりでは前に進みません。サイトで検索すればリンク先は多数あるので、何とか役に立つものをブログ上でご提供できればと考えています。まさに、オールジャパンによる総力戦、長期戦ですからね。


避難所トイレ4割に問題 被災者の感染症増加 共同通信 3/31
 
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011033101000018.html
 東日本大震災で津波に襲われた宮城県の石巻、東松島両市と女川町にある避難所のうち約4割で、トイレの汚物処理が十分にできず、衛生状態が悪化していることが31日、石巻赤十字病院などの調査で分かった。
 感染症にかかる被災者も増加し、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が出ている。同病院の石橋悟救急部長は「このままでは感染症が大流行する恐れがある」として、できるだけ早く仮設トイレの数を増やしたり、全国から被災地に大量のバキュームカーを送り込んだりする必要があると指摘している。
 石巻赤十字病院のほか、全国の日赤病院や大学病院、医師会の医療スタッフでつくる救護班が調査。学校や公民館など2市1町で把握できた計272カ所の避難所に巡回診療に行った際、トイレの状態を確認。うち何らかの問題があった避難所は107カ所に上った。
 施設にもともとあったトイレでも排水ができず下水があふれたり、新聞紙に用を足し、袋に入れて捨てたりしている所が目立った。水がないため、手を洗わないままの被災者も多い。
 石巻市内では二つある下水処理施設のうち、一つが水没してほぼ壊滅状態で、全面復旧の見通しは立っていない。
 仮設トイレがあってもバキュームカーの数が足りず、汚物があふれている所も。仮設トイレもなく、被災者が囲いだけ設けて新聞紙に用を足し、バケツにためているケースや、地中に穴を掘っている所もあった。
 165カ所は「問題なし」とされたが、流すことはできても断水のためプールの水をくんでいたり、食事や寝る場所と同じ場所に簡易トイレがあるなど、実際には十分とは言えない例もある。
 胃腸炎のほか、女性を中心にトイレの回数を減らしたためぼうこう炎になる人も増えている。石橋部長は「衛生状態を改善しなければ病気になる人は減らず、いつまでも通常の診療ができない。被災地で最も切実な問題だ」と話している。


ぐっすり眠りたい/心配し過ぎず、ちょっと工夫 朝日新聞 3/31
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/dvJAQDOx55
 避難生活を余儀なくされている被災者は、避難所にいる人だけでも17万人を超える。慣れない暮らしで睡眠不足になる人も多い。睡眠に詳しい医師に対策を聞いた。
 「睡眠が短いだけで急に健康を損なうことはない。心配し過ぎないで」と熊本大発生医学研究所の粂和彦准教授。被災による疲れや緊張感で物音に敏感になり、眠れなくなるのは当然だという。
◆居場所づくり
 眠れないのであれば、夜の居場所づくりをしてもいい。粂さんがボランティア活動をした阪神大震災の避難所では、眠れない人たちがたき火の周りに集まり、夜通し語らっていた。
 体の疲れは、横になるだけである程度は取れる。あと少し工夫すれば眠りにつけるかもしれない。
 体育館などの硬い床に布団を敷いているときは、横向きになり、座布団や枕を抱えて寝た方が腰への負担が軽い。熱も逃げにくいし、いびきを減らす効果もある。ティッシュを耳栓に、タオルをアイマスク代わりにして、音や光をできるだけ遮ろう。
 粂さんが一番の睡眠対策と勧めるのは、昼間に日光に当たり、体を動かすことだ。ずっと室内にいると眠りを促すホルモンが減り、血のめぐりが悪くなることもある。全身の関節を伸ばせば交感神経の緊張もほぐれ、眠りやすくなる。
 布団に入り、「生活が落ち着いたら温泉に行こう」と明るい話題を頭に浮かべた方が、寝入りやすいという。
◆「3の法則」注意
 こうした工夫でも眠れない人は注意が必要だ。眠ろうと努力するほどますます眠れなくなる睡眠恐怖症になったり、被災による心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症の引き金となったりする可能性がある。
 スリープクリニック調布(東京都調布市)の遠藤拓郎院長は、「3の法則」が当てはまる人は要注意だという。
 (1) 目をつぶって30分以内に眠れない
 (2) 夜中に3回以上起きる
 (3) 起きたい時間の30分以上前に目が覚める
 このような状態が2週間以上続いた場合は専門医の診察を受けた方がいい。
 高血圧や糖尿病の患者も、睡眠不足が症状の悪化につながることがあるので、早めに医師や看護師に相談したい。


宮城県内 肺炎の重症化急増 「早めの受診を」 朝日新聞 3/31
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/HGcka0WZPd
 東日本大震災で被災した宮城県内で、肺炎が重症化して大学病院に搬送される高齢患者が増え、通常の肺炎治療に使う抗菌薬が効かないレジオネラ肺炎の患者も確認されたことが東北大学の調べでわかった。同大は避難所などの被災者に、「せきがひどい場合などには早めの受診を」と呼びかけている。
 今月20~26日に石巻赤十字病院と気仙沼市立病院から東北大病院に運ばれた肺炎患者は約40人。通常、同大病院に運ばれる肺炎患者は多くても週に3、4人という。
 このうち60歳代の男性がレジオネラ肺炎と診断された。避難所で発熱し、現在も東北大病院で治療中だ。
 レジオネラ肺炎の原因となる菌は土壌の中などにいて、過去に循環式浴槽などでの集団感染事例が報告されている。診断が難しく、通常の肺炎治療に使うペニシリンなどの抗菌薬が効かないことから、死亡することもまれではない。東北大などは患者の尿でレジオネラ肺炎の診断ができる簡易キットを被災地の医療機関に供給し始めた。
 東北大の賀来満夫教授(感染制御学)は「地震や津波の災害でレジオネラ肺炎患者が確認されたことは過去にあまり例がない。肺炎患者の診療に当たる医師はその可能性を常に考えてほしい」と話す。


 ここからは本日のメインニュース。日経メディカル社の緊急特集記事です。医療に関する現状や問題点などが記載されています。私自身も理解できる部分と理解できない部分があります。16年前、阪神淡路大震災を経験していますが、原発問題や津波などは当然のことながら経験はありません。また以前は町は形を変えたものの残りました。今回は町が消えました。


【日経メディカルオンライン 2011/03/30】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.1
 計画停電で疲弊の色濃い医療機関 検査や透析ができず急性疾患への対応も課題
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201103/519160.html
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 震災に伴う電力供給能力の低下で、東京電力管内の1都8県では計画停電が始まった。多くの医療機関ではMRIやCT、電子カルテなどが使えなくなり、急性期への対応が難しくなっている。
 東日本大震災の余波は、被災地の外の医療機関にまで及んだ。震災で東京電力・福島第1原子力発電所などが甚大な被害を受け、同社の電力供給能力が大幅に低下。同社は3月14日から、1都8県(東京23区は原則対象外)を5つのグループ(3月28日現在は25グループ)に分け、午前6時20分から午後10時までの7つの時間帯で、電力需給に応じて輪番で3時間程度の停電を行う計画停電をスタートさせた。しかし、停電対象のグループや時間帯が発表されるのは、基本的に前日。一部の病院は特例的に停電の対象から外されているが、多くの医療機関は、翌日、どの時間帯に停電が行われるか分からない中、連日手探りの対応に追われた。
【停電が病院経営も圧迫】
 東京都によると、都内の全病院のうち自家発電装置を備えているのは半数以上。自家発電装置を持つ診療所はさらに少ない。その上自家発電装置は、突然の停電に備える緊急用。計画停電のような頻回の停電は想定されていない。自家発電装置の規模や性能、各医療機関の設定によって稼働時間や配電範囲は異なるが、多くの医療機関では停電中、消費電力の多いMRIやCTなどの検査装置、電子カルテ、エレベーターなどが使えない。
 2次救急を担い、災害拠点病院にも指定されている西新井病院(東京都足立区、317床)は、23区内ではあるものの区内の一部が計画停電の対象となっており、震災後2週間で数回の停電を経験した。同病院には最大8時間稼働する自家発電装置があるが、供給できる電力に限りがあるため、停電中はMRIやCT、X線撮影装置などが使えない。事務長の伊藤基光氏は「問診や処方箋を出すぐらいしかできないため、停電中は外来でも救急でも受けられる患者が限られてしまう」と頭を抱える。
 また、手術室は停電中でも通常通り使えるものの、手術前後のMRIやCTが実施できない上、オートクレーブが使えず手術器具が滅菌できない。前日にならなければ停電する時間帯がはっきりしなかったこともあり、同病院は震災後、脳外科や消化器科、眼科などで予定していた手術をすべてキャンセルした。伊藤氏は、「今のようなやり方での計画停電が長期間続くと、病院経営自体も苦しくなる」と明かす。
 千葉県松戸市を中心に、法人全体で1日500人以上の人工透析を行う医療法人財団松圓会。拠点の一つである東葛クリニック病院(松戸市)も、震災後2週間で数回の停電に見舞われた。同病院は約48時間稼働する自家発電装置を備えている。しかし、透析装置も透析患者も多く、自家発電の電力だけで賄うのは難しい。また、停電中は、電子カルテもエレベーターも使えない。
 そこで同病院は計画停電が始まって以降、停電の予定時間を外して人工透析を実施。スタッフは朝6時から透析の準備や回診などに追われ、夜中の1時まで透析を行うこともあった。また、透析時間も通常の4時間から3~3.5時間に短縮。「できることなら短時間透析は避けたいが、透析中に停電が起きないようにするにはやむを得ない」と副院長の秋山和宏氏は話す。さらに、停電中は電子カルテも使えなくなるため、停電前に予約患者の診療録などを出力し、診察後に再び電子カルテに入力。エレベーターが使えないため停電中の配膳はスタッフ総出で手渡ししている。
 計画停電の影響は、診療所や在宅医療にも及んでいる。80人程度の訪問診療患者を抱える新田クリニック(東京都国立市)は震災後2週間、頻繁に計画停電を経験した。
【懐中電灯を片手に訪問診療】
 同クリニックは計画停電の実施が決まってから、在宅で人工呼吸器や痰の吸引器、在宅酸素を使う患者の対応に追われた。人工呼吸器や吸引器を使う患者に対しては、予備のバッテリーや充電式の機器を準備。最悪の場合に備えて、バッグバルブマスクや、ネラトンカテーテルに注射器をつないだ手動式の吸引器も用意した。院長の新田國夫氏は「バッテリーへの切り替えなどは家族やヘルパーに説明し、実際に経験させた。中には不安がる人もいたので大変だった」と振り返る。
 同クリニックは停電中も診療を続けているが、自家発電装置がないため日没後は真っ暗な診療所内でスタッフが懐中電灯片手に業務を行っている。「在宅も含め、患者の大部分は懐中電灯と聴診器一本があれば診察できる。ただ、急性疾患への対応は難しい」と新田氏は話す。
 実際、訪問診療を行っている70歳代の男性患者が停電中に熱発し、往診依頼を受けた。「呼吸不全を呈し、胃穿孔、急性壊疽性胆嚢炎の疑いがあったが、クリニックでは胸腹部のX線検査ができないため診断できず、近くの病院に送った」と言う。男性患者は、その日のうちに緊急手術となった。
 計画停電で医療機関の機能は限定され、スタッフの負担は増すばかり。東京電力は電力供給能力の改善を図る方針だが、電力需要が高まる夏季には23区も対象となる恐れもある。計画停電は、長引けば長引くほど人命に関わる事態に発展しかねず、停電対象の医療機関は戦々恐々としている。


【日経メディカルオンライン 2011/03/31】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.2
 崩壊した医療提供体制と再建への模索 医療関連団体が総出で支援
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201103/519170.html
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 「生か死か」─。津波が多くの命を一瞬にして奪った。沿岸部を中心に多数の病院が機能不全に陥った。全国から集まった医療者が支援に当たるも、医療提供体制の再構築には時間がかかりそうだ。
 死亡者数1万1063人、行方不明者数1万7258人(3月29日時点)。3月11日に起こった東日本大震災は東北から関東まで広範囲に影響を及ぼし、多くの犠牲者を出した。
 「病院脇の川に(地震による)津波が遡上しているようです」
 八戸市立市民病院(青森県)の救命救急センターに勤める千葉大氏は地震発生直後、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のFacebookのページにこうつづった。同病院は岩手県との境に位置し、八戸港からは4kmほど内陸にある。
 同じく三陸沿岸に位置する岩手県陸前高田市や宮城県南三陸町などは、大津波で町全体が壊滅状態となった。
【死亡者の約90%が溺死】
 「今回の地震は1995年に発生した阪神・淡路大震災と異なり、津波の被害が甚大だ」。両震災において救援活動に携わった兵庫県保険医協会事務局次長の小川昭氏はこう話す。阪神・淡路大震災では建物の損壊がひどかったが、東日本大震災では家屋が丸ごと津波に飲み込まれて跡形もない状況が各地で見られたという。
 こうした特徴は、死亡者の死因にも見て取れる。千葉大法医学教室教授の岩瀬博太郎氏が陸前高田市の死亡者126人の死因を調べたところ、80~90%が津波による溺死と推測された。約80%が建物倒壊による圧死や窒息死だった阪神・淡路大震災と比較すると対照的だ。津波に巻き込まれることなく避難できた被災者には外傷は少なく、生死がはっきり分かれたことがうかがえる。
 小川氏はさらにこう説明する。「阪神・淡路大震災では被災地から徒歩で避難しても、被害が少なく物資も豊富な都心になんとかたどり着けた。しかし、東日本大震災は被害が広範囲にわたる上、被災地と中核市はかなり離れており避難しにくく、救援物資も届けにくい」。
 震災による死の恐怖から逃れた避難者数は一時40万人以上に及んだが、避難所などではさらなる苦難が被災者たちを待ち受けていた。電気、水道、ガスといったライフライン断絶の長期化、食料や燃料の不足だ。真冬並みの冷え込みも重なり、低体温症や低栄養に陥る避難者が増加。高齢者施設から避難所に移動する途中で、多数の入所者が死亡した事例も報道された。
 津波で溺れたときに海水を飲み、その海水に含まれていたガソリンなどの汚染物質により肺炎(津波肺)を発症した避難者も少なくなかったようだ。避難所の狭い空間で長い間過ごしたため、肺塞栓症にかかる人も出つつある。
 当初は医薬品などの供給も思うようにいかず、慢性疾患を抱える避難者を苦しめた。三陸沿岸の医療機関では、備蓄していた医薬品は津波でほとんど流された。道路の分断などによる孤立地域の出現、医薬品卸の営業拠点の被災、人員やガソリン不足による配送不能などのため、全国各地から送られた医療物資も各避難所になかなか届かなかった。
 日ごろ飲んでいた薬を服用できない避難者が続出したほか、薬剤があっても在庫に限りがあるため数日分しか処方してもらえない状態が続いた。
【「まるで野戦病院のよう」】
 津波は病院機能も粉々に砕いた。岩手県の県立山田病院(山田町)や県立大槌病院(大槌町)、宮城県の石巻市立病院、公立志津川病院(南三陸町)といった、それまで地域医療を担ってきた沿岸部の基幹病院が浸水により軒並み機能不全に陥った。その影響は福島県や茨城県の沿岸部の病院にも及んだほか、内陸部でも建物が損壊して診療停止に追い込まれた病院が多数あった。
 さらに追い打ちをかけたのが、福島県の大熊町と双葉町にまたがって位置する東京電力・福島第一原子力発電所の事故だ。原子炉の冷却機能が失われて放射性物質が漏れ、半径20km圏内は避難地域、半径20~30km圏内は屋内退避(後に自主避難勧告)地域となった。これに伴い、福島県立大野病院や双葉病院(ともに大熊町)、双葉厚生病院(双葉町)などは閉鎖された。
 加えて電気やガス、水道などのライフラインが長期にわたって広域で断絶し、医療機関の機能を制限。初期診療を担う地域の診療所の再開は遅れ、その分、被害の少なかった中核病院に患者が集中した。
 石巻赤十字病院では、「同じ市内の石巻市立病院が津波の被害で機能停止したため、連日約1000人の患者が来院して野戦病院のような状態になった」(日本赤十字社企画広報室)。支援に入った日本赤十字社の救護班は、急きょ屋外に仮設の診療所を設置して対応することを余儀なくされたほどだ。
 石巻地区のある中核病院の医師によると、「機能停止寸前だろうと、通院したことがなかろうと、とにかく診療を継続している病院へ患者さんが押し寄せた。事前の相談とか、悠長なことを言っていられる状況ではなかった」という。
【日赤、DMATが続々現地入り】
 こうした状況を改善しようと、震災発生直後より全国から医療チームが被災地入りした。現地支援に向かった医療関連団体の中で、素早い対応を見せたのは日本赤十字社だ。即座に災害対策本部を法人内に設置し、全国各地の赤十字病院などから調査隊および救護班を派遣。地震発生当日には30チーム以上が被災地に向けて出発した。
 同法人の救護班の中には、仮設診療所を設置できるユニットを装備したチームも5チームあったほか、各救護班に衛星電話や無線を装備させ、相互に連絡できる体制を確保。地震で通信が遮断された状況でも、本部や現地支部からの指示を受けながら被災者の救援に取り組んだ。3月28日時点で延べ397チームが被災地に入り、今後も派遣を続けていく予定だ。
 日赤と同様に、災害派遣医療チーム(DMAT)も早期から対応した。DMATは、阪神・淡路大震災の経験を踏まえて、厚生労働省主導で全国に整備されている。各地の災害拠点病院や中核病院から、医師や看護師などで構成されるチームが多数出動。3月25日時点で延べ600チーム(約2400人)ほどのDMATが現地入りし、災害拠点病院での急性期医療や、避難所での巡回診療など、幅広い救護活動を担った。
 ただ、日赤やDMATなどの素早い対応にもかかわらず、初期における現地での活動は困難を極めた。DMATとして地震発生当日に現地入りした、八戸市民病院救命救急センター所長の今明秀氏によると、「交通が寸断されていたほか天候も悪く、チームがなかなか被災地に入れなかった。自衛隊のヘリコプターでチームの医師が被災地入りしたのは翌朝だった」という。携行した医薬品などの物資もすぐ底を突き、診療は大きく制限された。
 超急性期を担うDMATなどの役割が一段落した地震発生5日目の3月15日には、日本医師会が各都道府県の医師会の協力を得て、日本医師会災害医療チーム(JMAT)を派遣。現地では慢性疾患や感染症など日常診療に準じる活動が中心となりつつあり、その支援に名乗りを挙げた。常時100チーム(約400人)が活動する状態を保つとしている。
 コメディカルの活動も活発化している。被災地の要請を受けて厚労省が派遣した保健師などのチームは日を追うごとに増加。3月23日時点で89チーム(317人)が被災者のケアに当たっている。
 透析患者や重症の入院患者など、現地の避難所や災害拠点病院で対応しきれない患者も多数発生した。こうした患者に対応すべく、動き始めた医療機関もある。全国に66カ所の病院を持つ医療法人徳洲会もその一つ。同会は徳洲会医療救援隊(TMAT)を派遣して現地で診療を行っているほか、被災地の透析患者など100人近くを、千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)などグループ内の複数の病院で受け入れた。
 同会の災害対策本部は、「被災地では十分な医療を受けることが困難な状況。当会では全国で計4000人の患者の受け入れが可能であり、できる限り協力したい」としている。
【特例認める通知を多数発出】
 こうした現場の動きに呼応するように、厚労省はこれまで多数の通知を出した。多くが被災者への医療提供に関わるものだ。
 被災地だけでなく全国の医療機関に関連する通知としては、被保険者証のない被災者の受診に関する取り扱いがある。被災者が氏名、生年月日、保険者の事業所名(国保などは住所)を申し出れば、保険証がなくても診療するよう通知。また、住宅が全半壊したり、主たる生計者が死亡・行方不明になった被災者については、医療機関は医療費の自己負担分を請求せず、審査支払機関に10割請求する形の措置が取られた。
 もっとも、被災者の本人確認ができないまま診療した場合などは、医療費が支払われないのではないかといった心配もある。これについて厚労省保険局は、「医療機関の持ち出しにならないような措置を考えていく」としている。
 このほか、全国的な医薬品の供給不足に備え、長期処方の自粛を医療機関に要請するとともに、医薬品や医療機器を医療機関同士で融通しても薬事法違反とならない旨を通知。被災地への派遣などのため一時的に職員数が減り、施設基準などが満たせなくなった場合でも変更の届け出や診療報酬の減額などが当面免除されるといった旨も通知した。
 また、日本の医師免許を持たない外国人医師が被災者を診療しても違法ではないとする事務連絡も岩手、宮城、福島の3県に出された。
【工場被災で薬剤不足の懸念】
 震災の影響は、被災地だけでなく全国の医療機関にも及んだ。医薬品の供給不安である。
 その一つが、甲状腺機能低下症の治療に用いられるチラーヂンS(一般名レボチロキシン)だ。同薬を製造するあすか製薬のいわき工場(福島県いわき市)が被災し、製造が止まった。同工場で生産している同薬はレボチロキシンの国内市場の98%を占め、他の薬で代替する方法も限られる。
 甲状腺機能低下症の患者は全国に約60万人いるとされ、影響は大きい。服用できないと心機能の悪化など生命に関わる事態も発生しかねないため、厚労省も重大な関心を寄せたが、3月25日、同社はレボチロキシンの生産を再開したと発表。海外からの緊急輸入や他社への生産委託なども含めて供給にめどが立った。
 このほか、同薬以外にも供給が不安視される薬が、厚労省に複数報告された。ただ同省医政局は、「いずれも代替薬があるなど、直ちに健康被害が生じる事態にはならない」と判断している。製薬会社や卸会社の流通網にも対策が講じられ、混乱は収束しつつある。
 東京電力の電力供給不足によって3月14日から始まった計画停電も、関東近郊の医療機関に不安を与えた( 3月30日掲載の「計画停電で疲弊の色濃い医療機関」を参照)。病院や診療所の診療機能の制限や、在宅で人工呼吸器を使用したり酸素療法を実施している患者への影響などが懸念された。今のところ目立った医療事故は起きていないが、非常時における医療機関の準備態勢に再考を促す結果となった。
【被災地での診療体制が徐々に】
 震災発生から約1カ月がたち、被災地は徐々にだが落ち着きを取り戻しつつある。ライフラインの一部断絶や医療材料の不足、医療機器の浸水などにより依然として手術の実施を見合わせている病院は多いが、外来診療の再開や入院機能の正常化などにめどをつける病院が増えてきている。交通の遮断やガソリン不足のため被災地には物資がなかなか届けられなかったが、状況はだいぶ好転してきているようだ。
 気仙沼市立病院では、被災地の急患をきめ細かくフォローする体制ができつつある。同病院呼吸器科の椎原淳氏によれば、市立病院がセンターとなり、主な避難所に設けた診療所がサテライト機能を担うようになってきたという。診療所に来院できない人たちを医師が巡回する体制も整備されてきている。
 その一方で、混乱も生じている。日医は3月27日、JMATの派遣を一時休止すると発表。日医以外にも多方面からの支援が入っている中で、県医師会が医療面の支援を統制しきれず、被災地で医療班がバッティングするなどの問題が起き始めていたからだ。
 また、避難生活における過労や環境悪化を原因とする震災関連死が高齢者を中心に増加しつつある。被災地の医療ニーズは新たな局面を迎えている。
【立ちはだかる多くの障壁】
 被災地の医療提供体制は急ピッチで再構築されつつあるが、地元の病院が単独で通常診療を再開するにはほど遠い。懸命に医療に従事してきたスタッフの健康面やメンタル面のケアも今後必要になりそうだ。これは被災地の多くの医療機関、介護施設が抱える問題である。
 さらに、津波で流され完全に機能を失った医療機関の復興はどうするのか。国は、被災した公立病院の復旧事業に関して費用の8割前後を補助金で賄う検討を進めているが、それ以外にもマンパワーの確保といった多くの問題が山積している。被災地の医療供給体制の復旧にはまだ多くの障壁があり、ゴールまでの道のりは遠い。国を挙げての支援がより一層求められている。
【日本集団災害医学会代表理事の山本保博氏に聞く】
指揮命令系統の乱れが非効率な支援につながった
 東日本大震災では負傷者以上に死亡者・行方不明者が多い。死亡者の割合は、阪神・淡路大震災では負傷者7人に対して1人、欧米の震災では10人に1人だが、今回はその割合がはるかに高くなるのは確実だろう。日本は木造家屋が多いため被害が大きくなりがちだが、これに津波の被害も加わり、人類史上でも未曾有の災害になった。
 阪神・淡路大震災と異なるのは、被災地が広域なこと。被災地が500kmという広範囲にまたがっており、指揮命令系統がきちんと整理されていなかった。それ故に医療スタッフ、物資ともに必要な場所に届かなかったのではないか。DMATのインストラクターなどが全体を指揮するような仕組みをつくっておくべきだった。
 今回は地域の基幹病院が崩壊しており、それらが復旧するまで、少なくとも半年から1年は医療支援が必要となる。だが、外部の医療者などが大量に物資を持ち込んで診療する災害医療と、元々あった地域医療とでは実施される医療内容は異なる。地域の医療ニーズをきめ細かく把握しながら支援を行い、現地の医療機関の復興状況に合わせて徐々に医療提供体制を元に戻していくべきだろう。(談)
【IT通じて全国の医師が医療支援】
 今回の震災では、Twitterやmixi、Facebookといった、インターネットを活用したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が有効に使われた。SNSでは、ユーザーが情報を投稿するとそれを見た人がコメントできるため、不特定多数の人とやり取りが可能だ。その特徴を生かし、被災者が困っていることなどを発信したり、被災地以外の医師が災害時に必要と思われる情報を発信したりするケースが見られた。震災発生時、電話などの音声通話が通じにくくなったがネットはつながりやすかったため、孤立した被災者がTwitter
で無事を知らせた例もあった。
 さらにSNSを使い、医師が遠く離れた地で被災者の医療相談に応じる動きも現れた。Twitterでは地震発生当日から、今回の震災に関する投稿であることが分かる目印(ハッシュタグ)が設定された。医療相談に関するものも用意され、現在、100人を超える医師が被災者の相談に回答している。また、mixi上では内海診療所(愛媛県愛南町)の山内美奈氏が「東北地震・医師による健康相談室」を開設。同相談室には120人以上の医師が参加し、地震発生後10日間で被災者からの約100件の相談を解決したという。山内氏は、「軽症患者の質問をネット上で少しでも解決できれば、被災地で懸命に働いている現場の医師の負担も減らせると考えた」と開設の狙いを話している。
 これまで医療支援といえば現地に直接赴くことが主で、遠く離れた場所からは支援物資を送ることや、重症患者の広域搬送に応じることなどしかできなかった。だがSNSの普及で、被災地から離れた場所の医療者でも支援に参加できる機会が増えた。


【日経メディカルオンライン 2011/03/31】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.3
 刻々と変化する被災現場での医療ニーズ 感染症、肺塞栓、PTSD、被曝…早期対応が被災者を救う
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201103/519171.html
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 震災から約1カ月がたち被災地の医療ニーズは変化。避難所での生活を余儀なくされる被災者の感染症対策から、精神的ケア、被曝リスクの説明まで、多様な医療ニーズに応えることが必要だ。
 これまでのところ、震災による死亡者の80~90%の死因が溺死。沿岸部では津波から逃れた後、救助を待つ間に脱水症状や低体温症に陥って死亡する高齢者も相次いだ。
 阪神・淡路大震災では、死亡者の多くが倒壊家屋の下敷きになって圧死した。救助された被災者の中には、瓦礫などに挟まれた外傷患者が多かった。しかし、東日本大震災では、外傷患者はほんのわずか。溺れて助かった被災者の中には、ガソリンなどの汚染物質を含む海水を飲み、救助後に肺炎を発症する例も見られたが、想定外の津波が生死を分け、黒タグばかり付けて被災地から戻る医師も少なくなかった。
 震災後、現地に入った医療者にまず求められたのは医療機関に入院していた患者への対応だった。3月14日に宮城県仙台市に入った国立国際医療研究センター救急科の佐々木亮氏は、筋萎縮性側索硬化症患者を多数抱えていた県内沿岸部の病院から、都内の病院への患者の移送などを調整した。「限られた人と時間の中で、ヘリコプターの着陸場所や移送中に何の医療機器を使うかなど、幾度となく変更を余儀なくされて苦労した」と話す。
 一方で、被災した老健施設や特養などではライフラインの途絶により多くの入居者が死亡。避難所でも多くの医療者が、高血圧や糖尿病、不整脈などの慢性疾患を抱える高齢患者への対応に忙殺された。
【刻々と変化する医療ニーズ】
 現在被災地では、感染症や肺塞栓症、精神疾患が増えることが懸念されている。下水道が復旧していない避難所でノロウイルス感染症などが広がったり、避難生活で体力が低下し、日和見感染が増えることも危惧され、衛生状態の改善や被災者への注意喚起が急務。一部の避難所では既にインフルエンザの流行も始まっている。深部静脈血栓症に伴う肺塞栓症を予防するため、学会などが弾性ストッキングを配布する動きも始まった。ただし、取り組みが行われているのはまだごく一部。予防には水分補給や頻回の歩行も有効だが、狭い避難所では歩行が困難な高齢者も多い。
 今後は、被災者の精神的ケアも重要になる。被災を機にうつ病やパニック障害などの精神疾患を発症する被災者もいるほか、外傷後ストレス障害(PTSD)、睡眠障害などを呈する被災者も出つつある。
 さらに東京電力・福島第一原子力発電所の放射性物質の汚染は被災地以外にも拡大。今後、被災地に限らず、全国的に低用量被曝の影響を心配する受診者のため、被曝のリスクについて説明することも求められそうだ。
 明日以降に順次公開するVol.4~7では、被災者を中心に発症が懸念される、感染症、肺塞栓症、PTSD、被曝による健康障害について、専門家に聞いた。


【日経メディカルオンライン 2011/04/01】
 日経メディカル緊急特集●東日本大震災 Vol.4
 震災に伴う放射能汚染や被曝にどう対処するか?
 (公財)原子力安全研究会 放射線災害医療研究所副所長 山本尚幸氏
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t133/201104/519172.html
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 福島第一原発の被災事故による放射性物質汚染の影響が懸念されている。被曝を心配する患者や、汚染の可能性がある患者への対応法を聞いた。(まとめ:日経メディカル東日本大震災取材班)
 やまもと なおゆき氏 ○放射線科医。愛媛県緊急被ばく医療アドバイザー。2011年3月まで、同県「初期被ばく医療機関」に指定されている市立八幡浜総合病院(愛媛県八幡浜市)副院長。
 医師の間でさえ、放射性物質の汚染や被曝に関する正しい知識を持っている人は少ない。2次汚染・被曝の恐れなどから、「できれば関わりたくない」と思っている医療者も多いことだろう。
 しかし、今回の放射線災害は巨大地震、津波などとの複合事象であり、福島県内だけで対応できる状況ではない。実際に原発敷地内での作業者の創傷汚染は放射線医学総合研究所(千葉市稲毛区)で対処された。今後、原発周辺地域からの避難者や支援で同地域に入った人、原発の被災映像を見て放射性物質の汚染や被曝に対して不安を抱いた人が、検査や処置について最寄りの医療機関に問い合わせてくる機会も多いと思われる。
【20km圏外は健康影響ない】
 3月末時点で、福島第一原発から20km圏外で測定された大気中の放射性物質の濃度(空間線量率)は人体には全く影響ないレベルであり、事故後その圏内に立ち入っていない人に対し、特段の検査は必要ない。
 放射線により発生する癌は他の原因で発生する癌と特別な違いはない。仮に被災者が今後癌になったとしても、それが被曝と関係あるのかどうかということは、一人ひとりについては証明することはできず、ある程度の放射線被曝をした人の集団が被曝していない人の集団に比べて癌の発生率が多くなったかどうかを比較するしかない。
 これまで日本の原爆被災者の追跡調査や、諸外国での事故などの被害者調査が綿密に行われており、100ミリシーベルト(mSv)未満の被曝で悪性腫瘍の発生が増えることは認められていない(Svは人体への影響を評価するための被曝線量の単位で、1人が年間に受ける自然被曝量は約2.4mSvとされている)。100mSv以上であればリスクが数%高くなるといえるが、その上昇はわずかであり、喫煙や化学物質などの影響よりも低いといわれている。
 今回の地震以降に頭痛、吐き気、食欲不振などが生じた場合、放射線の影響ではなく、不安による症状であったり、その他の疾患の可能性が考えられる。また、福島県内外の水道水から微量の放射性物質が検出されているが、その量は人体に影響のないレベルである。
【脱衣で汚染物質の9割減少】
 圏内に立ち入った人に関しては、その場所や時期・時間によって状況は相当異なる。長期に滞在している人の一部に、除染することが望ましい程度の放射性物質による体表面の汚染が考えられる。
 そのような人に対しては、現地滞在時の着衣、帽子、靴などはまとめてビニール袋に入れて口を縛り、人が近づかない場所に置き、シャワー浴やぬれタオルなどで髪や顔面など露出面を洗うよう指導する。このとき、シャワーの水を飲み込んだり、強くこすって皮膚を傷つけないよう注意する。なお施設などで、除染や全体的な洗浄を行う場合には、作業員が飛沫などにより汚染しないよう装備などに配慮が必要である。
 放射性物質に汚染した人は、脱衣をすることでその90%は減少するといわれている。その上、シャワーで全身を洗身するのが一般的だが、その水が散ったり飲んだりする可能性もあり、今回の災害のような被災地域では水がないという事態も多いことから、露出部を湿らせた布などでやさしく拭くだけでも十分である。
 希望者には、体表面の放射線汚染検査を行う。検査は定期的な調整を受けている装置で決められた手順で行うことが重要であり、個々の医療施設がばらばらに行うより、公的機関などで集約して行うことが望まれる。人的・物的資源や測定技術などが不足であれば各自治体の放射線技師会などに協力を仰ぐとよいだろう。
 一般住民では考えにくいが、一般的には1Gy(γ線やX線であれば1Svと同じ)以上の被曝で治療対象となる可能性がある。ただし、胎児の奇形発生は100mSv、男性の一時的不妊は精巣に150mSv、リンパ球減少は500mSvで生じる可能性がある。従って100mSvを超えるような被曝があった場合は除染後、記録して継続的に管理を行う必要がある。
 被曝を受けた患者が来院したときの対応法を示した。除染済みで搬送されて来ることも多く、汚染があっても低線量と考えられ、2次被曝の恐れはほとんどない。除染のほかは、バイタルサインの確認をはじめ通常の救急処置を行えばよい。
 現時点では、一般住民に身体影響が出るレベルの汚染・被曝はなく、今後精神的ケアなどが大きな課題となると思われる。多くの住民と顔の見える関係を構築している医師が、正しい情報を彼らに知らせることが非常に大切だと思う。(談)


0323-636号 震災関連記事 被災地での健康を守るために [kensa-ML NEWS 【緊急】]


 被災地の悲惨な状況が日ごと明らかとなりつつありますが、安否の分からない方々があまりにも多いことに言葉を失ってしまいます。震災発生後から、自身に何が出来るのかを自問自答する日々を過ごしており、目前の業務もこなさないといけない時期ですが、なかなか精力的に前進という気力がわいてこないのも正直な気持ちです。被災者の方々からも多数ご連絡をいただいているのですが、残念ながらお亡くなりになられた方々の情報もいただいています。避難所からの情報もいただいてはおりますが、避難所等でお過ごしになられている方々の健康がとにかく心配です。劣悪な環境で過ごされているため、元々慢性的な基礎疾患をお持ちの方々やお年寄りの方々が衰弱していく姿を見ているのも辛い、何をどうやって支援したら良いものか分からないとのお便りに、私自身もどのように支援したら良いものか、困惑するばかりです。私が立ち上げているブログから情報を得ているとのお便りもありますので、何とか継続させないと、と思っているところです。

 ですから、このメールニュースをお読みになられている皆さんや、ブログをご覧になられている皆さんから転載や転送のお問い合わせも多数いただいておりますが、転載、転送はフリーですので、多くの方々に少しでも多くの情報をお渡しいただければと思います。今時の言葉で言うと「拡散」と言うんですかね?

 私のブログには、どの県からどの程度アクセスされたかが表示されるボックスを設置しています。震災前は岩手県を含めた東北地方からのアクセスが結構あったのですが、震災後は殆どありませんでした。しかし昨日の状況を見ていると、ようやく岩手県からのアクセスがあり、少しずつ復興しているんだなぁ・・・と実感しているところです。

 さて、福島第一原発事故による農作物への影響が深刻化しているこの数日の動向ですが、風評被害もかなりあるようですね。しかし、放射性降下物が急激に増加しているのも事実であり、今後予断を許さない状況です。この内容に関する記事を以下に集めてみました。くれぐれも申しておきますが、不安感を煽るために記事を作成しているのではありませんので、趣旨を勘違いしないでいただきたいと思います。


セシウム137 http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/13.html
環境被曝の経過
 ラップランド人では、大気からコケなどを経てトナカイに入り、トナカイに入っている放射性セシウムを摂取する過程が経路である。ふつうは、土壌から野菜や穀物を経て人が摂取する経路が重要であり、大気中から葉菜への沈着も問題になる。土壌の中での挙動は土質によって異なる。粘土質の土壌ではよく吸着され、植物には取り込まれにくい。
 水圏での挙動は単純ではない。淡水には溶けにくく、湖底堆積物に含まれることが多い。海水には溶けて、魚などに摂取されやすい。


ヨウ素131  http://www.cnic.jp/modules/radioactivity/index.php/11.html
体内被曝までの経過
 人がヨウ素を吸収する主な経路は、牧草→牛→牛乳→人の食物連鎖である。この移行はすみやかに進み、牛乳中の放射性ヨウ素濃度は牧草上に沈積した3日後にピークに達する。牧草から除去される有効半減期は約5日である。牧草地1m2にヨウ素-131が1,000ベクレル沈積すれば、牛乳1リットルに900ベクレルが含まれると推定されている。
 チェルノブイリ事故では、放出量が大きかったために、飲料水、空気などを通る経路も考える必要があった。


首都圏、放射性降下物増える 東京で前日比10倍も 朝日新聞 3/23
 
http://www.asahi.com/health/news/TKY201103220536.html
 文部科学省は22日、福島第一原発事故の影響を受け、上空からちりなどとともに落ちた放射性物質の測定結果を発表した。首都圏などを中心に増加傾向を示した。東京都新宿区で1平方メートルあたり5300ベクレルのセシウム137、3万2千ベクレルのヨウ素131を検出、前日に比べ、いずれも約10倍の濃度に上がった。健康に影響を与える値ではないが、長期に及ぶ監視が必要になる。
 放射性降下物の測定は、文科省が21日午前9時から22日午前9時にかけて全国で行い、分析した。
 東京都の値は、前日のセシウム560ベクレル、ヨウ素2900ベクレルから急上昇した。22日発表のセシウムの値は、放射線管理区域の基準値4万ベクレルの8分の1、ヨウ素の値は、5分の4にあたる。
 この他の自治体のセシウムの値も、さいたま市が1600ベクレル(前日790ベクレル)、甲府市が400ベクレル(同不検出)、宇都宮市が440ベクレル(同250ベクレル)と、軒並み上昇した。
 前日に、最も高い値を記録した茨城県ひたちなか市では、やや下がったものの、セシウム1万2千ベクレル、ヨウ素8万5千ベクレルと、依然、高い値を記録している。福島や宮城は震災の影響で計測できていない。
 東日本は22日も、雨や雪が降ったところが多く、大気中に漂うちりとともに、放射性物質が落下したとみられる。ヨウ素の半減期は8日間と短いが、セシウムの半減期は30年で、地面に降りた後も長期間放射線を出し続ける。土壌や水、農作物への放射能汚染につながりかねないため、今後も監視を続ける必要がある。


農作物から放射能 食べても平気? 朝日新聞
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/EaKwqkpc5j
 福島第一原発の事故の影響で、牛乳やホウレンソウから放射性物質が見つかりました。飲んだり食べたりしても大丈夫なのか、まとめました。

■健康害するリスク小さい
Q ホウレンソウや牛乳が放射能で汚染されているの?
A 福島第一原発の事故では、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質が周辺に広く飛び散った。それが、ホウレンソウの表面に降り注ぎ、検出された。汚染された草や水をとった牛の乳からも見つかった。

Q どれぐらいの値なの?
A 厚生労働省の規制値に比べると、ホウレンソウからは3~7・5倍のヨウ素が見つかった。牛乳からも最高5倍のヨウ素が出た。規制値は、今回の事故をきっかけに、厚労省が暫定の値として設けたものだ。

Q 汚染された食品を食べたり飲んだりしても大丈夫なの?
A 食品の安全性基準は厳しい値に決められている。健康に影響を与えかねない値より、かなり余裕をもって設定されている。だから、「ただちに健康に影響が出るわけではない」という見方で専門家の意見は一致している。あまり心配し過ぎても
いけないようだ。

Q 汚染された食品をとると、体はどれぐらい被曝(ひばく)してしまうの?
A 今回、ヨウ素に汚染されていることが分かった福島県の牛乳を約1リットル飲むと、人体が受ける影響は、約33マイクロシーベルトという値になる。これは胃のX線集団検診を1回受けた時に受ける放射線量の約20分の1。最も高い値が出た茨城県のホウレンソウを洗わずに1キロ食べたとすると、約330マイクロシーベルトになり、胃のX線集団検診を0・5回受けた値にあたる。

Q それは、どのぐらいのリスクなの?
A そう大きくはない。単純に比較はできないが、妊婦がX線撮影などを受けるとき、胎児へのリスクは、少なくとも5万マイクロシーベルトまでは問題がないとされている。ただ、上限の判断は難しく、米国の学会や審議会の間でも15万マイクロシーベルト~5万マイクロシーベルトと幅がある。

Q 時間がたてば、放射能は弱くなるの?
A 放射線の量が半分になるまでの期間を「半減期」という。ヨウ素の場合は8日と短い。セシウムは30年と長く、長期間、放射線を出し続ける可能性がある。その土地で育った草を家畜が食べ続けると、肉などの畜産物も汚染されてしまうかもしれない。

Q 今後はどんな注意が必要なの?
A 汚染地域は広そうだ。農産物が流通に乗る前に、どれぐらい汚染されているか、早く調べる必要がある。ヨウ素は半減期が短いとはいえ、大量に取ると子どもでは甲状腺にたまってしまい、がんになる危険がある。とりわけ、原発周辺地域に住む子どもには注意が必要だ。

■水で洗えば流せる
Q 食べる時にできることはないの?
A 元原子力安全委員の松原純子さんは「気になる人は流水で洗って。葉の表面についた放射性物質を落とすことができる」と話している。ホウレンソウをお浸しにするとヨウ素、セシウムを50~80%除去できるとの実験結果もある。秋田大名誉教授の滝澤行雄さん(公衆衛生学)は「熱湯でゆでてあく抜きするのも有効」と言う。熱で放射性物質は分解しないが、洗い流す効果があるようだ。

Q 牛乳はどう?
A 液体はこうした方法は採れない。ただ、牛乳で規制値を超える値が検出された福島県川俣町では全酪農家が震災で出荷していなかった。仮に同程度の値の他地域の牛乳を続けて飲んでいたとしても、事故から1週間と時間が短く放射性物質の総量は限られる。いま店頭や家庭にある牛乳を捨てる必要はない。

Q どういう経緯で分かったの?
A 17日に厚労省が地方自治体に調査を求め、19日に結果が出た。全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久さんは、すぐに調査を始めて結果を公表し、問題の食品を1年間食べ続けた場合の影響を示したのはわかりやすいという。ただ、調査の全容が明確でないのが気になるという。「調査内容や数値の意味をわかりやすくかみ砕き、消費者はどうすればいいのか、具体的行動に結びつく説明を添えてほしい」と注文している。

■出荷停止を政府検討
Q すでに出荷された農産物はどうなるの?
A 食品衛生法では、有害物質を含む食品の販売を禁じているが、放射能についての基準はない。このため、厚労省は今回、根拠のない風評被害を防ぐため、急きょ暫定規制値をつくり、対応した。でも、規制値を超えるサンプルが出た日の出荷分しか止められない。検査日より前に出荷されたものについて、大塚耕平厚労副大臣は「自主的な対応になる」と話している。

Q 今後の対応は?
A 規制値を上回っても食品衛生法では、調査対象となった農産品をつくった農家の出荷だけしかとめられず、出荷停止の判断も都道府県に委ねている。このため、政府は、原子力災害対策特別措置法に基づき、福島県と茨城県のホウレンソウ、福島県の牛乳の出荷を政府判断で停止する検討を始めた。
 これまでも、茨城県で起きたJCO事故などで周辺から出荷される農水産物の風評被害が起こるなど、食品の放射能汚染は問題になった。風評被害や消費者の不安を解消するため、食品安全委員会などによる丁寧な説明も必要だ。


首相、摂取制限を初めて発動 福島県の葉物野菜など 共同通信 3/23
 
http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032301000065.html
 菅直人首相は23日午前、福島県の佐藤雄平知事に対し、同県産のホウレンソウ、コマツナ、キャベツなど葉物野菜や、アブラナ科のブロッコリー、カリフラワーなどを食べないよう全国の消費者らに求める「摂取制限」の発動を指示した。これらに根菜類のカブを加えた野菜の出荷停止も指示した。
 福島第1原発の事故を受け、同県の野菜11品種から、食品衛生法で定められた暫定基準値を大幅に超える放射性物質が新たに検出されたため。11品種と同じような状態と推定される他の野菜も、放射性物質が検出されていなくても広く規制の対象に含めた。
 摂取制限は原子力災害特別措置法に基づく措置で、発動は初めて。消費者が出荷停止前に購入した分を摂取することや、農家の自家消費もやめるよう求める内容だ。摂取制限の期間は「当分の間」としている。
 JA全農を通じ流通する福島県の露地栽培野菜は、21日以降は出荷されていないという。首相は茨城県産の原乳、パセリの出荷停止も指示した。
 厚生労働省は、放射性物質の量が最も多く検出された野菜を約10日間、1日100グラムずつ食べ続けた場合に浴びる放射線量は、1年間で人が自然に浴びる放射線量の約半分に相当すると説明。枝野幸男官房長官は摂取制限の理由について「(放射性物質が飛散する)この状況が長期化することを予測し、早い段階から摂取を控えることが望ましい」と語った。
 同省によると、暫定基準値を大幅に超える放射性物質が検出された福島県の野菜はサントウナ、アブラナなど11品種。
 福島県本宮市で21日に採取されたクキタチナからは、基準値(1キロ当たり500ベクレル)の164倍に当たる8万2千ベクレルの放射性セシウムが検出された。基準値(同2千ベクレル)の7倍以上の1万5千ベクレルの放射性ヨウ素も検出された。
 茨城県でも、水戸市と河内町で19日から21日にかけて採取された原乳、鉾田市と行方市で採取されたパセリから、基準値を超える放射性物質が検出された。
 政府は21日、福島、茨城、栃木、群馬の4県にホウレンソウとカキナの出荷停止を指示。福島県には原乳の出荷停止も指示していた。


「4県産野菜売れない」制限品目以外の返品も 読売新聞 3/23
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38451
 福島第一原発の事故で福島や茨城、群馬、栃木の4県産のホウレンソウなどが出荷制限されたことを巡り、農林水産省は22日、全国の主な卸売業者の約4割に、制限品目以外の返品や契約破棄が広がっていると明らかにした。
 東京・大田市場では、制限品目以外の茨城県産チンゲンサイにも注文が入らず、「4県産の野菜は売れない」との悲鳴が漏れた。一方、小売店からは、「風評被害が生まれないよう、生産者を応援したい」との声も上がった。
 同省が全国136の主な卸売業者を対象に、4県産の野菜のうち、制限品目以外の契約状況を電話で聞き取った結果、約50業者で返品や契約破棄などが確認された。
 ホウレンソウとカキナ以外の4県産野菜は食品衛生法上の放射線数値が規制値を超えておらず、過剰反応とみられる。
 22日朝の大田市場の競りでも、スーパーなどの小売店が、基準値を超えていない茨城産チンゲンサイを敬遠し、普段は1箱(2キロ)700~800円が100円程度に値崩れしたという。
 東京・文京区のスーパーは政府が出荷制限を求める前から、茨城県産の水菜とチンゲンサイを店頭から撤去。今後、福島県産エリンギも他県産に切り替える。
 店長(48)は「生産者は仲間だと思っているので店頭から撤去するのはつらいが、売れないからしかたない」と話した。
 一方、4県産野菜の販売を続けているスーパーも多い。東急ストアはホウレンソウ、カキナを除き、4県産を扱っている。担当者は「消費者の不安をあおらないように、『ホウレンソウ 撤去しました』といった告知文は張り出さない」と言い、目立った混乱はないという。
 東京・江東区のスーパー「八百梅」も出荷が止まっている品目以外は、通常通り、4県産を仕入れている。
 店長の梅田力夫さん(62)は「市場には、検査済みの安全な野菜しか出ない。敬遠していたら生産者がかわいそうだ。風評被害を助長するわけにはいかず、応援してあげたい」と話していた。
 出荷制限の対象となった茨城県と隣接する千葉県では、香取市の「JAかとり」に、農家から「今後どうなるのか」と影響を心配する声が寄せられている。担当者は「茨城県に近いという理由で敬遠されるといった風評被害が出てきたら困る」と表情を曇らせる。
 農水省幹部は「合理的な理由もなく返品するのは望ましくない。大型スーパーや小売店を指導していきたい」と語った。


内部被ばくの防止が重要 正確な測定値と説明示せ
 大阪大名誉教授 野村大成 識者評論「農産物放射能汚染」 共同通信 3/22
 
http://www.m3.com/news/GENERAL/2011/3/22/134215/
 福島第1原発事故による住民、特に小児への健康影響では内部被ばくがより懸念される。ヨウ素は甲状腺、セシウムは全身の筋肉、ストロンチウムは骨など特定の臓器に集中的に取り込まれ、危険性は高い。
 私は旧ソ連チェルノブイリ原発事故後のユネスコによる現地調査、英国セラフィールド再処理工場の裁判などに関わってきた。その経験から現時点の疑問に答えたい。
 枝野幸男官房長官らは「直ちに健康に影響はない」と語った。これは原子力事故のたびに国民を安心させるため使われてきた決まり文句である。
 急性障害(症状は1シーベルト以上、治療しなければ7~9シーベルトで死亡)は過去の事故例でも、現場の作業員や救援などで立ち入った人に限られている。しかし、住民に問題になるのは、忘れた頃にやってくる、内部被ばくの晩発影響(8割はがん)であり、その予防である。
 特に、風に乗って遠くまで運ばれる放射能を帯びた降下物が呼吸や、やがては水、食物を介して体内に取り込まれて内部被ばくする。取り込まれた放射性物質の中には、特定の臓器に集中的に蓄積される元素があり、取り続ければ長期間にわたり放射線を浴びせる。
 福島第1原発から約200キロ離れた東京などで検出されている放射線量は風向きや気候で大きく変わる。このまま放出が短期間に収まってくれれば、体内に取り込まれても、首都圏で健康に影響するとは考えにくい。
 放射能の環境汚染を正確に測り、汚染地域を設定して対処することがすぐ課題になる。チェルノブイリ事故では風向き、降雨などの影響で100~180キロ離れた所に高濃度汚染地域が現れた。今回、政府は住民を避難させておいて、周辺での農作物の調査が遅れたのではないか。
 牛の原乳やホウレンソウから暫定基準値を超える放射性物質が検出されても「牛乳は1年間摂取し続けてもCTスキャン1回分程度」だから安全という政府の発表には異議を唱えたい。医療被ばくは健康へのメリットが多いから、規制が除外されているのであって、安全といっているのでない。しかも、CT検査はエックス線の外部被ばくで、これくらいの線量で発がんの心配はまずない。
 これに対し、食物は内部被ばくを起こす。住民、中でも子どもに問題なのはヨウ素131だ。ヨウ素は甲状腺に集まり、ベータ線を出す。半減期が8日と短くても、成長期にある子どもには、取り続ければ危険性が無視できない。
 チェルノブイリ事故では10代後半の被ばくでも、事故15年後に甲状腺がんがピークに達し、通常の10倍を超えた。放射能で汚染した牧草を食べた牛の乳を介してヨウ素が子どもの甲状腺に集中した。それに加え、ヨウ素欠乏地域であったため、甲状腺に放射性ヨウ素がより多く取り込まれ、甲状腺の大量被ばくとなり、がんを起こした。今回は、放射性ヨウ素の値はチェルノブイリよりはるかに低いが、注意は必要である。
 セシウムは半減期が30年と長く、全身の筋肉に均等に取り込まれるが、排せつされやすい。予防の観点から、暫定基準値を超えた農産物の移動・摂取は厳しく制限しなければならないことは、放射線障害の歴史が物語っている。
 風評被害を避けるためにも、政府は土壌や作物を含め、正確な測定値と説明を速やかに示すべきだ。未曽有の大地震津波の被災地を襲った重大な原発事故は一刻も早く終息させ、これ以上の放射性物質の放出を抑えるよう切望する。


 さて先日のメールニュースでも被曝の基礎知識についてお伝えしたところですが、今回は放射能の人体への影響につきお伝えします。


放射能 体への影響は (1) 朝日新聞
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/JO3w8VY4JE
 福島第一原発の事故で、放射性物質の放出が依然、止まらない。原子炉の核燃料が安全な温度まで下がらない危険な状況が続いている。人体に害をもたらす放射能とはどんなものなのか、どれぐらい浴びたら健康への影響が出るのか、まとめた。

◆放射線、なぜ怖い?/細胞の遺伝子壊す
Q.放射能とはそもそも何なのか。
A.放射性物質が放射線を出す能力のことだ。放射性物質そのものを放射能と呼ぶこともある。放射能と放射線の関係は、懐中電灯とその光に似ている。光が放射線、光を出す懐中電灯が放射性物質にあたる。懐中電灯が周囲を照らす能力が放射能、ということになる。

Q.では、放射線とは。
A.放射性物質などから出るイオンや中性子といった粒子や、レントゲン写真を撮るときに使われるエックス線などの電磁波のことを、放射線と呼んでいる。

Q.放射線はなぜ怖いのか。
A.生物が放射線を浴びると、細胞の中の遺伝子が壊れたり、構造が変わったりするからだ。自然界でも宇宙や大地から常に放射線が環境に出ているので、少量の放射線であれば人体には影響しない。
 しかし、大量に浴びると体に備わっている修復能力が追いつかず、髪の毛が抜けたり、白血球が少なくなったり、がんになりやすくなるといった問題が起こる。一度にきわめて多量に浴びると、死亡する恐れもある。

Q.原子力発電所で事故が起きたときには、どんな放射性物質が出るのか。
A.種類は様々で、広がり方や人体への影響も違う。気体になったものはすぐに漏れ出し、粒状のものは爆発したときに飛び散る。

Q.すぐに漏れだす気体というのは。
A.まず、クリプトンとキセノンという、ほかの物質と反応しにくい「希ガス」の仲間が出る。気体なので遠くまで飛ぶが、体に付着せず、たとえ吸い込んで肺に入っても長くはとどまらないので不安は比較的少ない。
 ヨウ素は原子炉の中で高温になると気体になって出ていくので、吸い込まないように気をつけなければいけない。セシウムは水にとけやすく、水蒸気とともにまき散らされる。今回、ヨウ素やセシウムは、すでに検出されている。ストロンチウムやプルトニウムは、燃料が溶け、圧力容器も破壊されるほどの惨事でもなければ外へは広がらない。

Q.体への影響はどうか。
A.ヨウ素は甲状腺に集まる性質がある。放射線を出し続ける時間は短いが、成長期の子どもは大人より甲状腺に濃縮されやすいので、特に注意が必要だ。放射線を出さないヨウ素を先に飲むと放射性ヨウ素の沈着を防ぐことができる。ただ被曝する前や直後にのむ必要があり、1日以上経過すれば効果は薄まる。
 セシウムは血液に入ると、いろんな臓器に吸収され、がんになる危険がある。体に入らなくても、地面に降った後も長く放射線を出し続けるので危険だ。半分の量に減るのに約30年かかる。
 ストロンチウムも半分の量に減るのに28年かかり影響が長く続く。骨に沈着し、白血病の原因になりやすい。水や植物を通じて体内に入る可能性もあり、排出されにくい。プルトニウムは体内に取り込まれると骨に集まり、周りの組織にもダメージを与える。
 旧ソ連のチェルノブイリ事故では、セシウムが欧州全域にまで広がり、雨が降った場所を高濃度で汚染した。ストロンチウムやプルトニウムは10キロ圏内を中心に汚染した。

◆がんなどのリスクは?/一度に浴びると高まる
Q.どのぐらいの値で、健康への影響が出始めるのか。
A.年間の被曝量が100ミリシーベルトを超えないことを目安にしている。現在、屋内退避区域となっている福島第一原発から20~30キロの地域では15日、1時間あたり200~300マイクロシーベルトの放射線が計測された。1千マイクロが1ミリだから、これを浴び続けると3週間で超える計算になる。

Q.3週間以上いると、健康に深刻な影響が出てしまうの。
A.すぐに影響が出るとは考えられない。放射線の影響で最も危険なのは、原発の作業員らが一気に非常に強い値を浴びた場合だ。広島、長崎の原爆では、被爆者は白血病や乳・肺・甲状腺がんなどのリスクが高くなった。
 福島県の屋内退避地域では、屋内に入れば被曝する量はぐんと減る。この地域で高い値がずっと続くかどうかもわからない。そもそも、放射線による影響があるかどうかは、1時間あたりの線量に、受け続けた時間をかけた線量で判断する。
 総量が目安を超えても、じわじわと被曝をした場合は、がんになるリスクが高まるという明確なデータはない。一気に浴びた場合のほうが、健康への影響は大きいと考えられている。

Q.どんな理由からそう考えられるのか?
A.チェルノブイリ原発事故により退避させられた30キロ圏内の人は、退避までの間に数十ミリシーベルトの放射線を浴びたと考えられている。しかし、チェルノブイリでの健康影響を調べている長崎大大学院の山下俊一教授(被ばく医療)によると、がんの発症率が高いという報告はないという。甲状腺がんを患った子どもたちは、放射性物質に汚染されたミルクを飲んだのが原因と考えられている。ブラジルやインドなど、年間の被曝量が数十ミリシーベルトと国際的にみても高い地域でも、がんの発症率は高くないという。

Q.今回の福島原発の事故では水道水からも放射性物質は出たようだが。
A.福島県が福島市内の水道水を分析したところ1キロあたり、ヨウ素131が177ベクレル(基準値は300)、セシウムが58ベクレル(同200)、一時的に検出された。この値について、元原子力安全委員の松原純子さんは「お年寄りも子どもも、飲んで安全には問題のないレベルだ」と話している。


放射能 体への影響は (2) 朝日新聞
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/pqiRqRd7DL
◆高い測定値、大丈夫?/健康への影響でない値
Q.各地で普段よりかなり高い放射線量が測定されているが。
A.確かに事故以降、近隣都県を中心に、過去の平均値より高い値が検出されている。しかし、毎時、数マイクロシーベルト以下ならば、健康に影響を与えるような値ではないと考えられている。

Q.いったん値が減っても、また高くなることがあるが。
A.福島第一原発では何度か放射性物質の放出が起きているようだ。そのたびに高くなっているほか、上空に漂っていた放射性物質が雨とともに地上に落ちて、数値が上がる可能性も考えられる。
 例えば、福島第一原発のすぐ近くでは15日、午前9時の段階で毎時約1万2000マイクロシーベルトという、非常に高い値を示す場所があった。しかし、この場所は午後3時半ごろには毎時600マイクロシーベルトほどにまで下がった。放射線量は時々刻々と変わっていく。

Q.どうして、変わるのか。
A.放射性物質には、放射線の量が半分になる半減期があって、何もしなくても時間とともに放射線は減っていく。半減期とは、放射線を出す物質が放射線を出しながら壊れて、元の半分の量になるまでの時間のことだ。

Q.退避圏内から来た人と避難所で一緒に過ごしても大丈夫か。
A.近くにいても、問題はない。避難所などでは身体に、放射性物質が付着しているかどうか計測している。もし、身体の表面の放射線量が規定値を超えていれば、シャワーなどで洗い流すことができる。服が汚染されていれば、ポリ袋に密閉して処分すればいい。


 本日のメイン情報に移ります。

 各報道機関では、被災地、特に避難所等で過酷な環境を余儀なくされている被災者の方々に対して、様々な情報を提供しています。同じような内容のものが多いのですが、読みやすいものをと、探してみました。

 被災地では物資を始め医薬品等の不足が深刻な状況となっています。また各医療機関における医療従事者の皆さんは極限状態にも近い過酷な労働状態となっています。私自身も被災地に駈け付け、何か出来ることをしたい気持ちで胸が張り裂けそうです。かなりの長期戦となるでしょうから、自分に今できることは何かということを常に考えていきたいと思います。


被災地での健康を守るために 厚生労働省
 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/disaster.html

1.生活・身の回りのことについて

(1) 寒さへの対策
 ・できるだけ、暖房を確保するほか、毛布を確保したり、重ね着するなどして、暖かく過ごせるようにしましょう。寒い中、外にでる場合は短時間にするなどします。また、乳児や高齢者は特に寒さに弱いので、周囲の配慮が必要です。

(2) 水分について
 [1] 水分の確保
 ・様々なストレスや、トイレが整備されないことが原因で、水分をとる量が減りがちです。また、寒冷と乾燥は脱水状態になりやすくします。特に高齢者は脱水に気付きにくく、こうした影響を受けやすく、尿路の感染症や心筋梗塞、エコノミークラス症候群などの原因にもなるので、しっかりと水分をとるようにしましょう
 [2] 飲料水の衛生
 ・飲用にはペットボトル入りミネラルウォーター又は煮沸水を使用し、生水の使用は避けましょう。
 ・給水車による汲み置きの水は、できるだけ当日給水のものを使用しましょう。井戸水をやむを得ず使用する時は、煮沸等殺菌することに気をつけましょう。

(3)食事について
 [1] 栄養をとる
 ・できるだけ、いろいろな食物を食べるようにしましょう。寒いときにはより多くのカロリーが必要です。
 [2] 食品の衛生
 ・食事の前には、流水が使えるときは、手洗いを励行しましょう。
 ・食料は、冷暗所での保管を心がける等、適切な温度管理を行いましょう。
 ・加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱しましょう。
 ・調理器具等は使用後にできるだけ洗浄しましょう。
 ・下痢や嘔吐等の症状がある方は、食品を取り扱う作業をしないようにしましょう。

(4)トイレの衛生
 ・利用者の数に応じた手洗い場とトイレを設置しましょう。やむを得ない場合には、野外にトイレゾーンを設けることも可能ですが、排せつ物による環境汚染が発生しないよう工夫してください。可能な限り男性用、女性用を分けるなど利用しやすいようにしましょう。
 ・使用後は、流水が利用できるときは手指を流水・石けんで洗い、消毒を励行しましょう。
 ・トイレは、定期的に清掃、消毒を行いましょう。
※ 消毒の方法についてのより詳しい情報は
  
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/disaster_1.html 

(5)生活環境
 [1] 室内の環境
 ・定期的に清掃を行うことに心がけましょう。
 ・病気の方、ご高齢の方に配慮しつつ、寒冷に十分に配慮して換気をしましょう。また、分煙にしましょう。
 ・避難生活が長期に及ぶと、布団にダニが繁殖し広がりやすいので、定期的な清掃のほか、できれば、布団・毛布等の日干しを行うことが望ましいです。
 [2] 屋外の環境
 ・避難所のゴミは定期的に収集して、避難所外の閉鎖された場所において管理してください。
 [3] その他
 ・こころのケアのためにも、できるだけプライバシーを確保できる空間や仕切りなどを確保しましょう。

2.病気の予防

(1)感染症の流行を防ぐ
 ・避難所での集団生活では、下痢等の消化器系感染症や、風邪やインフルエンザ等の呼吸器系感染症が流行しやすくなります。
 ・避難所の生活者や支援者は、こまめに手洗いを励行するよう心がけてください。可能であれば、擦り込み式エタノール剤やウェットティッシュを世帯単位で配布するのが望ましいです。
 ・発熱・せきなどの症状がある方は、避難所内に風邪・インフルエンザを流行させないために、軽い症状であっても、マスクを着用しましょう。
 ・下痢の症状がある方は、脱水にならないよう水分補給を心がけましょう。また、周囲に感染を広げないように、手洗いを励行してください。
 ・これらの症状がある方は、できるだけ速やかに医師の診察を受けてください。可能であれば、入院を含む避難所外での療養を検討しましょう。
 ・また、けがをした場合には、そこから破傷風に感染するおそれがあります。土などで汚れた傷を放置せず、医療機関で手当を受けるようにしてください。
※ 国立感染症研究所では、保健衛生担当者・医療従事者向けの「被災地・避難所における感染症リスクアセスメント」を  
http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/index.html で提供しています。

(2)一酸化炭素中毒の予防
 ・一酸化炭素中毒の恐れがあるので、屋内や車庫などの換気の良くない場所や、窓など空気取り入れ口の近くで、燃料を燃やす装置(発電機、木炭使用のキャンプストーブなど)を使用しないようにしましょう。一酸化炭素は無臭無色であり、低い濃度で死亡する危険があります。
 ・暖房を使用する場合には、換気に心がけましょう。

(3)粉じんから身を守る
 ・家屋などが倒壊すると、コンクリートや断熱と耐火被覆に用いられた壁材などが大気中へ舞ったり、土砂などが乾燥して細かい粒子となります。これら粉じん等を吸い込むと気道へダメージを与えます。有害な粉じんはとても細かいので、身を守るためには防じんマスクのような特殊なマスクが必要です。解体作業等は、装備を調えた上で行ってください。

(4)エコノミークラス症候群にならないために
 ・食事や水分を十分に取らない状態で、車などの狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)が足から肺や脳、心臓にとび、血管を詰まらせ肺塞栓や脳卒中、心臓発作などを誘発する恐れがあります。この症状をエコノミークラス症候群と呼んでいます。
 ・こうした危険を予防するために、狭い車内などで寝起きを余儀なくされている方は、定期的に体を動かし、十分に水分をとるように心がけましょう。アルコール、コーヒーなどは利尿作用があり、飲んだ以上に水分となって体外に出てしまうので避けましょう。できるだけゆったりとした服を着ましょう。また、禁煙は予防において大変重要です。
 ・胸の痛みや、片側の足の痛み・赤くなる・むくみがある方は早めに救護所や医療機関の医師に相談してください。
※ エコノミークラス症候群についてのより詳しい情報は
  
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/disaster_2.html へ。

(5)心身の機能の低下予防
 ・災害時の避難所生活では、体を動かす機会が減ることで、特にお年寄りの場合には、筋力が低下したり、関節が固くなるなどして、徐々に「動けなく」なることがあります。
 ・また、動かないでいると、だんだん心が沈んできて「3.こころのケア」にあるような症状が出てしまうこともあります。
 ・身の回りのことができる方は、なるべく自分で行ったり、可能な作業に参加したりしてください。
 ・声をかけ合って、積極的に体を動かすようにしましょう。
※ より詳しい情報は、平成20年6月14日付『「岩手・宮城内陸地震」による避難生活に伴う廃用症候群の発症予防について』  
http://www.jcma.or.jp/images/association/20080615-01.pdf  をご参照ください。

(6)歯と口の清掃(口腔(こうくう)ケア)・入れ歯
 ・避難生活では、水の不足等により、歯・口・入れ歯の清掃がおろそかになり、食生活の偏り、水分補給の不足、ストレスなども重なって、むし歯、歯周病、口臭などが生じやすくなります。特に高齢者では、体力低下も重なり、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染症を引きおこしやすくなります。
 ・できるだけ歯みがきを行い、歯みがきができない場合でも、少量の水でできるうがい(ぷくぷくうがい)を行いましょう。また、支援物資には菓子パンやお菓子も多いですが、食べる時間を決めるなどして、頻回な飲食を避けるようにしましょう。
 ・入れ歯の紛失・破損、歯の痛みなどで食べることに困っている方は、避難所の担当者に相談しましょう。
※ より詳しい情報は、(財)8020財団のホームページで、歯とお口の健康小冊子
  
http://www.8020zaidan.or.jp/magazine/index.html
    口腔ケア 
http://www.8020zaidan.or.jp/care/index.html  が提供されています。

3.こころのケア
 ・今回の地震のように大変重いストレスにさらされると、程度の差はあっても誰でも、不安や心配などの反応が表れます。まずは休息や睡眠をできるだけとるようにしましょう。
 ・これらの不安、心配の多くは時間の経過とともに回復することが知られています。
 ・不安や心配を和らげる呼吸法として、「6秒で大きく吐き、6秒で軽く吸う、朝、夕5分ずつ」行う方法もあります。実践してみましょう。
  しかし、
  1)心配で、イライラする、怒りっぽくなる
  2)眠れない
  3)動悸(どうき)、息切れで、苦しいと感じる
  などのときは無理をせずに、まずは身近な人や、専門の相談員に相談してみましょう。
 ・また普段からお互いに声を掛け合うなど、コミュニケーションを取るなどして心のケアをすることが大切です。
※ こころのケアについてより詳しい情報は、(独)国立精神・神経医療研究センターのホームページ  
http://www.ncnp.go.jp/mental_info/index.html で提供されています。

4.慢性疾患の方々へ
 ・慢性疾患の中には、治療の継続が特に欠かせない病気があります。
 ・人工透析を必要とする慢性腎不全、インスリンを必要とする糖尿病等の方は、治療の継続が必須ですので、今すぐ医療機関を受診できるよう相談してください。
※ 透析を受けられる医療機関等の情報は、各都道府県や日本透析医会の災害情報ネットワーク
  
http://www.saigai-touseki.net/ で提供されています。この情報は適宜更新されます。
※ 主治医等との連絡が困難な場合の、インスリン入手のための相談連絡先は、(社)日本糖尿病学会のホームページ  
http://www.jds.or.jp/ で提供されています。
 ・高血圧、喘息、てんかん、統合失調症等の慢性疾患の方も、治療を中断すると、病気が悪化する恐れがあるので、医師・保健師・看護師等に相談してください。
 ・なお、被災者が健康保険証を持っていない場合も、医療機関の受診は可能です。

5.妊婦さん、産後まもないお母さんと乳幼児の健康のために
 ・妊婦さん、産後まもないお母さんと乳幼児は、清潔、保温、栄養をはじめとする健康面への配慮や主治医の確保について、保健師などに相談し情報を得ておくことが必要です。
 ・また、災害により受けたストレスや特殊な生活環境は、母子に様々な影響をもたらす可能性があります。そのため、特に産前産後のお母さんの心の変化や子どものこれまでと異なる反応や行動に気を配ることが必要です。また、授乳時などに短時間であってもプライベートな空間を確保し、話しかけやスキンシップを図ることが大切です。このための空間を確保するため、周囲も配慮しましょう。なお、母乳が一時的に出なくなることがあっても、不足分を粉ミルクで補いつつ、おっぱいを吸わせ続けることで再び出てくることが期待できます。また、粉ミルクを使用する際の水は衛生的なものを用意し、哺乳瓶の煮沸消毒や薬液消毒ができない時は、衛生的な 水でよく洗って使いましょう。
 ・自ら心身の健康状態をチェックし、次のような症状や不安な事があれば、医師・助産師・保健師等に相談してください。場合によっては精神的(メンタル)ケアが必要なこともあります。

◎注意した方がよい症状
 妊婦さん
 ・お腹の張り・腹痛、膣からの出血、胎動(お腹の赤ちゃんの動き)の減少、浮腫(むくみ)、頭痛、目がチカチカするなどの変化を感じた場合
 ・胎児の健康状態、妊婦健診や出産場所の確保に関する不安などがある場合

 産後間もないお母さん
 ・発熱、悪露(出血)の急な増加、傷(帝王切開、会陰切開)の痛み、乳房の腫れ・痛み、母乳分泌量の減少などがある場合
 ・気が滅入る、いらいらする、疲れやすい、不安や悲しさに襲われる、不眠、食欲がないなどの症状がある場合

 乳児
 ・発熱、下痢、食欲低下、ほ乳力の低下などがある場合
 ・夜泣き、寝付きが悪い、音に敏感になる、表情が乏しくなるなどいつもの様子と異なるなどのことが続く場合

 幼児
 ・赤ちゃん返り、食欲低下、落ち着きのなさ、無気力、爪かみ、夜尿、自傷行為、泣くなどのいつもの様子と異なることが続く場合
※ より詳しい情報は、妊産婦・乳幼児を守る災害対策マニュアル(東京都福祉保健局少子社会対策部家庭支援課)
  
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_guideline/index.htm
  や、命を守る知識と技術の情報館(兵庫県立大学) http://www.coe-cnas.jp/index.html で提供されています。


0317-635号 震災関連記事 被災地での医療② [kensa-ML NEWS 【緊急】]

各報道機関の皆様へ
 以前、記事引用に関し皆様と一部引用を厳守することについて取り決めをさせていただきました。今回はこのような危機的状況ですので、ネットトラフィックを軽減する目的もあり、全文引用させていただきます。申し訳ございませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。なお、記事に関し問題がありましたら、私宛、ご連絡を頂ければ幸いに存じます。

                                                神戸医療センター 新井 拝


 先ほどの記事では、地元に密着して医療を行っている方と、DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)で医療を行われた方のレポートでしたが、今回は被災地における医療現場の実情、問題点などを取り上げたいと思います。

 その前に、福島第一原発における事故については皆さんも大きな関心事として気になるところでしょうが、東京電力関係者の方々や自衛隊や機動隊など多くの方々が献身的に対応されている報道を見るにつけ、どうぞ無事にお戻り下さい、と手を合わせることしか出来ないのがもどかしいです。何とか放射能流出事故が終息に向かい、元の生活に早く戻ってもらいたいとお祈りしています。

 まずはこの記事からご紹介。事故現場で働く方々がどのような危険な場所でご尽力されているのか、ということを示す記事のご紹介です。


放射能対策 100ミリ・シーベルト超えると健康に影響 読売新聞 3/16
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38147
 放射性物質が体に与える影響は種類によって異なるが、一般的な目安として100ミリ・シーベルトを超えると、健康に影響が出る危険性が高まる。さらに500ミリ・シーベルトでは血液を作る能力が低下し、3000~5000ミリ・シーベルトでは半数の人が死亡するとされている。
 こうした数値と比べると、15日に東京都で測定された0・809マイクロ・シーベルト(マイクロは1000分の1ミリ)や同じく茨城県の5・575マイクロ・シーベルトは、健康に影響はないと言える。胃のエックス線検診の600マイクロ・シーベルトに比べるとはるかに低い。
 被曝の状態には、皮膚に付着した放射性物質など体外から放射線を浴びる「外部被曝」と、放射性物質を体内に取り込むことで被曝する「内部被曝」がある。
 特に問題となるのが放射性ヨウ素やセシウム、ストロンチウムなどによる内部被曝だ。放射線影響に関する国連科学委員会の報告によれば、チェルノブイリ原発事故では、ミルクが放射性ヨウ素に汚染されて、当時、子どもだった地域住民の中から5000人以上の甲状腺がんの患者が確認されている。セシウムは体内から排出されやすいが、筋肉や血液に入ると周辺の骨髄や腸管が障害を受ける。


 昨日の記事に続きますが、緊急被曝医療体制についてまとめたものがありましたので、ご紹介します。


被曝医療体制から見た施設における対応
 
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/taisei.html
1.初期被ばく医療では,以下の対応が行われます。
  (1)原子力施設における初期被ばく医療
  応急処置および放射性物質の汚染の把握,可能な限り除染,汚染拡大防止措置を行い,緊急被ばく医療機関に患者を搬送します。 
 1. 原子力施設の内における対応
  a.心肺蘇生や止血等,可能な範囲での応急処置
  b.創傷汚染,体表面汚染の除染等
  c.安定ヨウ素剤の投与やキレート剤などの投与
  d.汚染の拡大防止や搬送関係者の被ばく防止
 2.原子力施設の外における対応
  a. 汚染の拡大防止や搬送機関の放射線防護,搬送時に生じた汚染の除染に協力。
  b.除染に使用した資機材等の持ち帰りならびに処理。
 (2)  医療機関における初期被ばく医療
  避難所等や原子力施設から搬送されてくる被ばく患者の外来診療,ふき取り等の簡易な除染や応急処置,線量評価のための生体試料(血液,尿等)の採取および管理を行います。また,通常の外来診療に加え,以下の緊急被ばく医療を行います。 
  a.中性洗剤,除染用乳液等による頭髪,体表面等の放射性物質の除染
  b.汚染創傷に対する処置
  c.安定ヨウ素剤の投与
 (3)  避難所等で周辺住民等を対象とする初期対応
  放射性物質の汚染の把握と情報の管理等を行います。 
 1.体表面汚染レベルや甲状腺被ばくレベルの測定
 2.避難した周辺住民等の登録とスクリーニングレベルを超える周辺住民等の把握 
 3.放射線による健康影響についての説明
 4.ふき取り等の簡易な除染等の処置,医療機関への搬送 

2.二次被ばく医療では,以下のような診療(入院診療)が行われます。
 1.局所被ばく患者の診療
 2.ホールボディカウンタ等による測定,血液,尿等の生体試料による汚染や被ばく線量の評価
 3.高線量被ばく患者の診療
 4.ブラッシング,デブリードマンなどによる除染処置や合併損傷の治療
 5.シャワー設備などによる身体の除染
 6.軽度の内部被ばく(放射性同位元素を用いた診断による被ばくと同程度のもの)
  の可能性がある者の診療の開始
 7.三次被ばく医療機関への転送


3. 三次被ばく医療では,以下について専門的な入院診療が行われます。
 1.重篤な局所被ばく患者の診療
 2.高線量被ばく患者の診療
 3.重症の合併損傷の治療
 4.重篤な内部被ばく患者の診療
 5.肺洗浄等の高度な専門的な除染
 6.高度な専門的な個人線量評価
 7.様々な医療分野にまたがる高度の総合的な集中治療等 

 
 誤った認識をされているのかどうかは不明ですが、被曝対策の一つとして安定ヨウ素剤の投与がマスコミにも良く取り上げられています。この安定ヨウ素剤に関して記載しているものがありましたので、ご紹介します。


安定ヨウ素剤
 
http://www.remnet.jp/lecture/b03_01/04-01-01.html
 原子力緊急事態においては、様々な放射性物質が環境中に放出される可能性があります。この内、放出される可能性の最も高い放射性物質の一つに、揮発性の放射性ヨウ素があります。環境中へ放出された放射性ヨウ素は、呼吸や飲食により体内に入るおそれがあります。特に胎児や乳幼児など若年齢者では、放射性ヨウ素の体内取り込みによる甲状腺への影響が心配されます。事実チェルノブイリ事故後の小児甲状腺がんの増加が報告されています。この内部被ばくを阻止あるいは低減させる予防策が、安定ヨウ素剤の予防的服用と呼ばれます。
1.安定ヨウ素剤の役割
 緊急時において環境中に放出された放射性ヨウ素が、周辺住民の呼吸や飲食により体内に入ると、放射性ヨウ素は選択的に甲状腺に集まる性質があります。
 甲状腺は安定ヨウ素を取り込んで、主に成長や代謝等のためのホルモンを分泌しています。この安定ヨウ素は、昆布等の海藻類に多く含まれています。一般に食べ物を通じ体内に入った安定ヨウ素は消化管から吸収され、血液中に入り、やがて甲状腺に取り込まれます。甲状腺疾患等を持たない人の場合、約20%が甲状腺に吸収され、残りは尿や汗等とともに排泄されます。一方、放射性ヨウ素が体内に入った場合も同様ですが、内部被ばくにより正常な甲状腺の機能に影響を及ぼすおそれがあります。
 放射性ヨウ素が甲状腺に入る前に安定ヨウ素剤を服用しておくと、安定ヨウ素により血液中の放射性ヨウ素の濃度が低くなり、甲状腺に入り込む量が少なくなります。
2.安定ヨウ素剤の投与時期と効果
 安定ヨウ素剤の効果は、投与する時期に大きく依存します。緊急時にはできるだけ早く安定ヨウ素剤を服用すると効果が大きく、放射性ヨウ素吸入後時期が経過するほど効果は薄くなります。

安定ヨウ素剤の投与時期と効果(Health Phys., 78, 2000より)
 放射性ヨウ素にさらされる24時間前 ⇒ 90%以上の抑制効果
 放射性ヨウ素を吸入した8時間後 ⇒ 40%の抑制効果
 放射性ヨウ素を吸入した24時間後 ⇒ 7%の抑制効果
 安定ヨウ素剤の効果は、放射性ヨウ素にさらされる24時間前に服用すればその効果が最大となります。しかし、事故の態様によっては、放射性ヨウ素の放出はしばらくの間続くおそれもあります。したがって、例えば放射性ヨウ素を吸入してから3~4時間後に安定ヨウ素剤の服用を開始すると、それまでに吸入した放射性ヨウ素に対する効果は2分の1かもしれませんが、その後に吸入される放射性ヨウ素に対しては、最大の効果をもたらします。なお、安定ヨウ素剤は、放射性ヨウ素以外の放射性物質、例えばセシウムやコバルト等による内部被ばくを低減する効果はありません。
 安定ヨウ素剤とは、原子力緊急事態に備えて準備されている医薬品ヨウ化カリウム(KI)のことを指します。すなわちKIの丸薬(1錠50mgKI)または原薬(粉末)を精製水等に溶解して単シロップを適量添加したもののことです。「安定」とは「放射性」に対する用語で、放射性崩壊をしないという意味です。
3.安定ヨウ素剤の副作用
 人体に必須な微量元素であるヨウ素でも、過剰な量を長期服用すると甲状腺の機能異常を引き起こします。しかし、緊急時に100 rヨウ化カリウムの単回服用ではその心配はありません。ポーランドではチェルノブイリ事故後、数百万人の健康人に安定ヨウ素剤が予防的に投与され、数%に胃腸障害等の軽微な症状が現れたと報告されていますが、重篤な副作用はありませんでした。そこで安定ヨウ素剤の服用に際しては、放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みを抑制する目的で、服用対象者に速やかに服用させますが、同時に副作用を可能な限り低減する努力が必要です。このためには、周辺住民に副作用についての情報を普段から提供しておくことが重要です。


 さて本日のメインに移ります。

 被災地での医療についてのレポートです。薬品、物資など不足だらけの危機的状況が少しでも伝わればと思います。


[解説]被災地での医療(上)栄養補給と防寒、衛生改善が緊急課題 読売新聞 3/17
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38201
 巨大地震、大津波に次いで原発危機という三重苦に、災害医療も従来の概念を超えた対応が迫られている。
 「助けてください。ミルクが全く足りず、子供が飢えてしまうでしょう。医薬品も底をついています。届ける手段を工夫してください」――。
 三陸海岸の医療支援にあたっている岩手医大病院から悲痛なメールが寄せられている。地震後、同病院には県外からの医薬品は全く入っていない。
 被災地ではミルクを水で溶いているという悲鳴も聞こえる。特に幼小児、高齢者の栄養補給と防寒、衛生改善は緊急課題だ。
 抗生物質、鎮痛剤、強心剤など急を要する薬剤だけでなく、高血圧治療の降圧剤、脳卒中など血管系治療の抗凝固剤などの慢性疾患用医薬品も決定的に不足している。このままなら、被災者の体力が低下して、肺炎や、一命をとりとめた負傷者が破傷風を起こしたり、持病を悪化させたりと、命を脅かされる事態に陥るのは時間の問題だ。


[解説]被災地での医療(中)緊急チーム、活躍難しく 読売新聞 3/17
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38202
 今回、被災地に向けた災害医療チームの出動は素早かった。阪神大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)など相次ぐ経験から、「災害派遣医療チーム(DMAT)」は「時間との闘い」を旨として、これまでに196チーム(1チームは医師・看護師ら5人程度で構成)が現地入りした。
 「生死を分ける災害医療」の精鋭ぞろいが早期投入され、高度な治療を要する重症者の緊急搬送に伴い羽田空港等には「後方ステージケアユニット(SCU)」が設置された。
 地震発生の翌12日未明に宮城県に入った昭和大DMATは、国立病院機構・仙台医療センターを拠点にER治療や被災地区の緊急医療にあたった。「センターには各地から数十ものDMATが駆けつけ、4日間全力を尽くせた」と田中啓司医師は話す。
 だが災害医療総体としてDMATの力が生かされたかとなると――「迅速には出動したが、連絡網が断たれたため、的確な情報に基づいた救援活動ができなかった」(島崎修次・日本救急医療財団理事長)。
 理由は〈1〉被災状況の伝達機関である市町村役場が機能不全に陥った〈2〉大半の被災者はすでに水死、あるいは命にかかわらない軽症者、の両極端だったこと。
 今回は、地震の直接被害ではなく、大津波により死亡したか、助かったかの明暗が分かれたケースが圧倒的だった。建物の崩壊や土砂崩れで閉じこめられた重傷患者の多発といった従来の震災とは、全く違っていたのだ。災害初期の緊急医療を担うDMATの大半は解散した。


[解説]被災地での医療(下)「医療の機動性」発揮を 読売新聞 3/17
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38206
 しかし、医療の真価が問われるのはこれからだ。地震発生から7日目に入り、救命の第1段階から避難民のケアに医療の質を移行していく必要がある。
 被災を免れた地域の医療機関は停電、断水、医薬品の不足で、ダウン状態にある。被災地以外からの長期的な応援態勢を組んでいかねばならない。
 浸水した石巻赤十字病院には、対応できる数倍の500人もの透析患者が殺到した。患者100人に3時間の透析をするには9トンの水が必要になる。盛岡市では透析バスを急ごしらえして移動手段がない患者の病院巡回を準備している。
 透析患者はじめ、特殊な装置を要する呼吸器疾患、チューブからの栄養に頼る患者らは、医療が継続できる組織的な転送を迫られている。日本透析医会によると福島県内だけでも被災地外への移送が必要になる場合、患者は最大1200人と推定している。
 昭和大学では帰京したDMATと入れ替わり、医師3人、看護師6人、薬剤師、調理師らの12人の医療班を岩手県宮古市に派遣。テント施設のために建設会社の2人も同行して、“自給自足”の野営体制で、腰を据えた医療に当たる。
 2400か所44万人にのぼる被災民の緊張状態と疲労は、極限に達している。状況が改善されないと、多くの被災者が心身ともに衰弱して感染症や「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)になる危険性も高い。
 「今後、被災者に胃潰瘍や肺炎、心筋梗塞、脳卒中などが多発していくはず。阪神大震災でも内因性疾患で死亡率が急増した」と昭和大の有賀徹教授(救急医学)は危惧を強める。
 時間がない。医療資源、社会資源を結集して、できることを直ちに実行に移さねばならない。緊急の救命という災害医療の一次的使命を超えた「医療の機動性」が切実に求められている。


宮城県内の病院も深刻な物資不足 読売新聞 3/17
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38191
医療用酸素、生理食塩水など
 県によると、16日時点で特に不足しているのは、医療用酸素、生理食塩水や滅菌精製水、自家発電の燃料となる重油。県には多くの医療機関から補給要請が来ている。
 被害の大きい気仙沼市の市立病院は、病院の設備自体に大きな被害はなく、現在は停電も解消しており、約400人の入院患者の容体に問題はないという。だが、電話やインターネットも遮断され、一切の通信手段が絶たれており、緊急に必要な物資を注文することができない。医療器具は出入りの業者が必要なものを予想して届けている状況だという。
 坂総合病院(塩釜市)では自家発電用の重油が16日時点であと2日分しか残っていない状況だ。重油節約のため暖房用ボイラーも止めており、小熊信副院長は「もう一度停電すれば、医療機関としての体をなさなくなる」と苦しげに話す。在宅酸素療法を受ける患者も家や避難所が停電で使用できないため、病院に身を寄せている。手術室6室のうち2室にベッドを置くなどして受け入れており、手術が制限されている。
 県立こども病院(仙台市青葉区)でも燃料や医療材料不足から手術はできず、東北厚生年金病院(同市宮城野区)では外来と緊急患者の受け入れを休止している。
 ガソリン不足も深刻だ。県南中核病院(大河原町)では地震発生後から職員約20人がガソリンが入手できずに出勤できなくなっている。帰宅できずに院内に寝泊まりしている職員も約30人いる。仙台赤十字病院(仙台市太白区)は14日に通電。自家発電機を動かす必要はなくなったが、桃野哲院長は「ガソリン不足で出勤できなくなりそうな職員が出始めている。緊急車両と同様、病院関係者には優先的に燃料を回して欲しい」と訴える。
 大崎市民病院(大崎市)では、ガーゼやカテーテル(細い管)などの医療材料が不足気味だ。ガソリン不足で業者が搬入できないためだ。鈴木安雄総務課長は「沿岸部の重症患者を受け入れたいが、ガソリンがなくて運んで来られないのではないか」と話す。


0317-634号 震災関連記事 被災地での医療① [kensa-ML NEWS 【緊急】]

各報道機関の皆様へ
 以前、記事引用に関し皆様と一部引用を厳守することについて取り決めをさせていただきました。今回はこのような危機的状況ですので、ネットトラフィックを軽減する目的もあり、全文引用させていただきます。申し訳ございませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。なお、記事に関し問題がありましたら、私宛、ご連絡を頂ければ幸いに存じます。

                                                神戸医療センター 新井 拝



 日に日に深刻化する原子力発電所問題と、被災された方々の健康問題ですが、なかなか根本的解決には結びつきません。政府が非常事態宣言をしなければいけないような状態とも思えるのですが、関西では街頭を除き大震災の影すら感じられないような気がします。被災地からのレポートを見るにつけ、こちらとのギャップの大きさに居たたまれない気持ちになってしまうこの頃です。昨日からか一昨日からかはよく把握していないので分かりませんが、民放各社は通常通りの番組に切り替えているようで、私自身は「見たくもない」というのが正直な気持ちです。振り返れば、阪神大震災の時に同じような光景が関東に見られた時、被災地に居る我々は、口には出しませんが、不謹慎極まりない、との怒りさえ覚えたものです。今、同じような気持ちを被災地の皆さんがお持ちになっているのでは?と思うと、やるせない気持ちになってしまいます(勿論、気休めの目的もあり放映されているとも聞きますが、今、バラエティー番組を見て笑える気分には到底なれません)。

 さて被災地ではガソリンや燃料不足が深刻な状況になっています。都内では買い占めに走る消費者もおられるとか。海外からは日本国民が取り乱すこともなく、暴動もなく、冷静に過ごしていることに対し非常に評価が高いのですが、これはやはり「和」「輪」を大切にする国民性だからでしょう。「我」では決してないところが私は非常に誇らしく思えたのですが、残念な「話」もチラホラと聞かれますね。

 相田みつをさんの言葉「奪い合えば足らぬ。分かち合えば余る。」


東日本大震災  被災者に届く支援こそ 京都新聞社説 3/17
 
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/index.html
 死者・行方不明は1万2千人を超えた。40万人以上が避難所で身を寄せ合っている。
 寒さが戻った東北地方に、冷たい雨が降り、雪が舞う。体育館や学校などでの生活が続き、被災した人たちの疲労の色は濃い。
 震災から6日目というのに、支援の物資が十分に届かない避難所は少なくないという。灯油やガソリン、水、食料、毛布、医薬品がほしい、とテレビを通じて訴える声を聞いた。
 灯油の残りを心配してストーブの暖を控え、毛布にくるまって寒さを我慢している。介護が必要な高齢者もいる。大勢が一緒に生活する避難所では、風邪やインフルエンザも心配だ。
 政府は、大震災の対応の重点を、救命活動から物資配布などの被災者支援に移す方針を決めた。
 家族や生活を奪われた被災者に対する支援は、国の責任で最優先で取り組むべきことだ。ただ、行方不明者の捜索や救命も、国民の生命を守るべき国の責務であることを忘れてはならない。
 被災者支援にあたって、菅直人首相は、自衛隊が物資輸送を一元的に管理するよう指示した。自衛隊の組織力と装備を最大限生かし、被災者に必要な物資が行き渡るようにしてもらいたい。
 支援物資が届かない大きな要因は、被災地でガソリンが手に入りにくいことにあるようだ。ガソリン不足で、住民避難や物資搬送の手段である車やトラックを動かせないでいる。
 全国27カ所の製油所のうち5カ所が震災を受け、生産中止。政府は石油業界に3日分の備蓄を放出するよう促しているが、それだけで問題は解消しそうにない。
 流通機能を一刻も早く回復させる必要がある。輸送手段の確保は支援を行き届かせる鍵だ。
 緊急車両しか通れない高速道路でも、ガソリンなど支援につながる物資輸送であれば民間の通行を認めていいではないか。阪神大震災と違って被災地は広域であり、従来の手法にとらわれない発想がほしい。
 被災地以外で暮らす人たちは、買いだめを控えよう。米やラーメン、パン、乾電池、トイレットペーパーなどが品切れになる店が出ているという。本当に必要な被災地に届かなくなれば、心苦しいではないか。
 市民ボランティアが動きだしたたのは頼もしい。災害ボランティアセンターが仙台市内で開設され、さっそく志願する人たちが集まっている。政府も近くボランティアの受け入れ態勢をつくる。
 被災地では、がれきの片づけや高齢者の介護などさまざまな要望が出ている。京都、滋賀から志願する人がいるだろう。情報と装備を十分持った上で、自立したボランティアとして活動してほしい。


 阪神大震災の折、当時の国立神戸病院で勤務についておりましたので、医療における水の大切さは身にしみています。恐らく被災地の医療現場では、ライフラインが壊滅状態のところも多いことでしょうから、電気、燃料に加え水不足が深刻化しています。ニュースにも良く取り上げられますが、透析には水が不可欠ですが、臨床検査にも水は不可欠。阪神大震災の時には幸い断水は短時間で済みましたが、激震により鉄製水道管が刺激を受け、水質は非常に劣悪なものでした。自動分析装置には純水作成装置が必要なものも多いのですが、この純水作成装置にはまず最初に水の汚れを取り去るプレフィルターというものがあり、通常は1か月ほどもつものが、震災当日は数時間しかもたない、震災後約半年間は1週間から2週間しかもたない状況でした。

 また神戸の時とは異なり、大津波による犠牲者が非常に多く、救出される方々もこのところ激減していますので、もはや急性期医療の段階ではなく、慢性期医療が主体となってきました。先ほど申し上げた透析を受ける方、糖尿病の方、その他多くの慢性期疾患を抱えた患者さんが多数おられることでしょうし、メンタルケア―も重要となる時期となってきています。


大震災の現場から Vol.1 「今、欲しいのは水とガソリン。医療にこんなに水が必要だったとは…」福島県伊達市の医師からの被災地報告 日経メディカル 3/14
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/shinsai/201103/518888.html
保原中央クリニック家庭医療科・菅家智史
 東北地方太平洋沖地震の被災された地域でも、今日も奮闘する医師、医療者がいる。福島県伊達市にある保原中央クリニック家庭医療科の菅家智史氏もその一人。被災地の医療機関の様子を広く共有するために、菅家氏が自身のFacebookに投稿した被災地報告を、本人の許可を得て掲載する。
 菅家智史氏のFacebookページ:
http://www.facebook.com/satoshi.kanke

●2011年3月13日 13:29
 現在は北福島医療センター(福島県伊達市)にいます。
 当院は救急外来機能がかなり落ちており、軽症患者のみの受け入れ、新規入院は困難です。
 町では、道路にひびが入っているところなどがあり、商店・スーパーなどはごく一部がオープンしていますが、何より足りないのはガソリンです。
 ガソリンスタンドに車の大行列ができ、渋滞しています。軒並みガソリンスタンドは売り切れ閉鎖。移動したい人も燃料切れが最も心配です。
 私は、軽自動車が6割残、ワンボックスが8割残でなんとか温存しています。かといって、みなさんにガソリンを送ってもらうのは不可能ですね・・・苦笑。
 訪問サービス(介護・看護など)も、ガソリン切れで訪問できない事業所が出てきているようです。
 当院は水も止まっており、ごくわずかの水を運んできてもらって有効利用している状態です。
 電気はかろうじてきていて、こうしてメールを打っています。
 何を助けてもらいたいのか、今私の頭では整理できませんが、ライフラインの復旧が一番の希望です。
 みんながんばってくれています。
 その場その場で、がんばってくれてるんですよ、みんな。
 明日に向けて。
 自分に言い聞かせます。明日に向けて。
●2011年3月13日 18:06
 クリニック建物の損傷評価に随伴。柱はintactだが、外壁が破壊されており、すぐの倒壊の恐れはないが、落下物の恐れありと。そこを改善する必要あり。
 北福島医療センターの病棟は、通常4フロアを2フロアに減床、勤務表どおりの看護師・技師夜勤体制へ。当直医は通常単独のところを複数体制へ変更。食事はなんとかおにぎりが配給されている。
 まだ在庫の医薬品で、現在治療用の薬品はまかなわれている。
 ライフラインの状況。福島県福島市・伊達市は摺上川ダムの本幹がやられており、復旧まで数日かかる見込み。
 トイレはくんできた水で対応中。下水は流れていく(どこまでちゃんと流れてるかは不明)。
 電気は継続して通電中。
 私のDocomoの電波が悪く、メールが通じない状態になりやすい。
 ガソリンスタンド渋滞は解消。マスコミで頻回にアピールされたからと思われる。
 軒並みガソリンスタンドは閉鎖状態。私のガソリンは軽:まだ半分強。ワンボックス:大原総合病院横に置いてある。
 今日は暖かかった。数日後に冷え込み、雪の予報あり。最大の余震への備えも必要。
 現在、福島県浜通りから避難者が山を越えて福島県伊達市へ流入してきている模様。
 原発から約60kmの当地では、特に警告・告知などはない。福島医大では被爆者対応が開始されていると大学内のDrよりメール連絡あり。
 福島医大は重傷者のみ対応、明日から1週間は通常外来診療は行わない。
 郡山市星総合病院は機能停止。入院患者を寿泉堂総合病院、町立三春病院、大田西ノ内病院へ。代替機能を町立三春病院へ一部移行。
 福島市内の病院は、水が足りないものの何とか救急診療を継続しています。
 今日把握してきた情報はこれくらい。
 うちの訪問診療患者は、半数が電話連絡可能、とりあえず無事確認。あとは避難所にいるのか、どうなっているのか連絡つかず。
●2011年3月14日 7:50
 おはようございます。今日も朝が来ました。
 昨日は福島市の実家に宿泊。夜間に電気が復旧。明るいってほんとうにありがたい。東北電力の皆さん、ありがとう。本当にありがとう。
 テレビは不安をあおられるような気がして、ほとんどつけていません。ローカルのラジオ(ラジオ福島、ふくしまFM)を聞いています。子供向けに、トトロの音楽とか流してくれ、長男も喜んで歌ってます。
 福島市・伊達市は電気復旧が進んでいますが、水道の復旧はまだです。
 医療にこんなに水が必要だったとは、意識していませんでした。
 ガソリンスタンドはやはり軒並み閉鎖。
 今日の私は、保原中央クリニックで外来処方継続対応を行う予定です。
 山形が実家、仙台から当院へ通勤していた当科Drは、昨日、福島→米沢→山形→仙台で仙台へ入れました。家族は無事だったとのこと、よかった。
 これから、精神的影響による不調を訴える方が増えてくると予想されますが、私自身はクリニックへ来てしまう患者の対応を優先してしまうので、避難所などへ出向いての対応はなかなか難しいと思われます。
 医師会などへ要請が行っているかどうかはわかりませんが・・・
 医薬品の在庫は、門前薬局では1~2週間処方で出してもらう分には何とかなりそうとのこと。
 入院患者の著変なしを確認したので、これからクリニックへ向います。
 今日も生きてるよ~(^^)ノシ
●2011年3月14日 12:52
 現在昼食。おにぎりと干し芋と水分。
 11時過ぎの第一原発3号機水素爆発の件も、ラジオのニュースから入ってきたが、午前中に来た予約患者・定期受診患者の処方は一山越え、混乱無く昼休みへ。
 診察を希望した患者との会話では、やはり「心配」「不安」というキーワードがたくさん出てくる。いつもより、診察導入部の会話をちょっとだけ長くして、不安をはき出してもらうよう努める。
 保原中央クリニック(無床)では、現在、医師は家庭医療科の2人、眼科の1人が待機。他のDrは同じ法人の北福島医療センター(200床病院、現在4フロア→2フロアへ減床対応中)へ集中。
 基本は継続処方の相談を受けること、直接来院した体調不良者の対応。
 現在できる検査は血算、尿、単純X線。
 深追いはしないよう、できるだけ検査は行わずに対応できる分を対応し、それ以上は他院(病院)へお願いするようにしている。
 門前薬局もかなり対応してくれており、今のところ混乱なし。
 電気あり、水なし。
 午後からは最寄りの避難所の偵察(まずは見にいくだけ)を行おうと考えています。
 これから、福島医大 地域・家庭医療学講座 のTV会議を繋いでみる予定です。
●2011年3月14日 16:07
 当院の通常の診療科は内科・消化器科・眼科など、同法人の北福島医療センターの医師が来てやってました。北福島医療センター(200床)までは約5kmの距離、原発からは約60kmの距離です。
 午前中は門前薬局と協力して、他科も含めて全科の継続処方希望で来院した方の対応、ごく軽症な方の診療・処方を行っていました。検査が単純X線、尿検査くらいしかできません。(断水中のため)
 午後になり、来院する患者さんがまばらになったので、明日以降の診療場所作りを行っています。
 急性期を過ぎ、これから体調不良を訴える方が増えてくる時期と思われ、明日以降は軽症患者をいかにしてクリニックで診て、病院に送る人を選別するか、という役割を中心に考えています。
 先ほど、200mほどの距離にある避難所に訪問し、保健師さんと面会しました(初期研修時代の恩師、勤医協中央病院の尾形和泰先生に電話でアドバイスいただきました。感謝!)。
 現在の収容人数、そしてどのようなニーズがあるのかを30分ほど面談。
 具合の悪い人は受診を勧めるようにしており、現在は体調不良者は中にいないと。近隣の病院は、軽症~中等症まで何とか受け入れてくれています。
 家に戻れない方の薬不足がこれからでてくると思われるので、その件での協力ができるか、検討することにしました。
 こちらの受診患者も数が読めないので、出向いての診療は現状では無理と判断。保健師さんとできるだけ会うようにし、その都度協力できることを検討していくとしてきました。
 門前薬局の薬局長にも面会し、現在の在庫、処方日数、対応についても相談してきました。
 現在は処方せん無しでも、薬歴が残っていれば処方薬を7日分まで提供していますが、基本的に同処方なので、変更・削除・追加は行えないと。
 その場合は、我々の外来で相談してもらう必要があることを確認しました。
 皆さんのおかげで、こうして生きてます。
 電力関係の皆さん、水道の復旧をがんばってくれてる皆さん、物流を再開させようと奮闘している皆さん…ありがとう。
 オレもできることやるよ。


大震災の現場から Vol.2「死者は積み上がっても、助けられる傷病者が発見できない…」DMATの一員として仙台で活動を行った医師からの報告 日経メディカル 3/16
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/shinsai/201103/518920.html
東京医科歯科大学准教授 白石淳
 「3月11日18:34 これから被災地に向かいます」―。自身のFacebookにこう投稿し、DMATの一員として仙台に赴き、活動を行った東京医科歯科大学准教授の白石淳氏。DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)とは、医師、看護師、業務調整員で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、おおむね48時間以内の急性期に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム。医師の目から見た被災直後の仙台の医療現場の様子、DMATとの隊員としての活動内容など、白石氏がFacebookページにつづった報告を本人の許可を得て掲載する。
●2011年3月11日 18:34
 これから被災地に向かいます。
●2011年3月11日 20:57
 無人の東北自動車道を移動中です。現地はなかなか遠いです。
●2011年3月12日 17:54
 仙台市にいます。我々の活動拠点のある西側はライフラインこそやられていますが、家屋の倒壊はなく、これが未曽有の大地震の被災地かと目を疑うような平穏な風景です。手をつなぐ親子やカップルが普通に歩いています。
 ところが、東側の海に面した辺りは悲惨です。津波になぎ倒されて水没し、瓦礫(がれき)の山で、火災が発生し、ご遺体が多数発見されているようです。救助隊も、交通の寸断と二次災害の恐れのため満足に活動できません。
 死者は積み上がっても、助けられる傷病者が発見できない、実に歯がゆい状況です。発見されるのは、死体か元気な人かのどちらかなのです。これは地震というよりも津波だ。津波は一度巻き込まれるとほとんど生存できる可能性のない、恐ろしい災害です。数百名規模の、おそらく今までで最大規模のDMAT(Disaster Medical Assistance Team)が活動しています。が、実際に救命可能な人は、皮肉なことに少ないです。
●2011年3月13日 10:33
 新たに来る外傷はほぼいなくなりました。一方で、疾病は急増しています。災害のストレスや、ライフラインの破壊による生活環境の悪化ももちろん原因ですが、なんといっても住処(すみか)を失った人の急病が増えています。車内生活者の肺
塞栓症(エコノミー症候群)も来ました。
 被災地に今必要なのはもちろんすべてですが、多数の避難者への住環境整備が最優先だと思います。支援をしていただける方、最高に必要なものはおそらく寄付です。
●2011年3月13日 16:43
 仙台で車内生活者の心肺停止例、おそらく重症肺塞栓症を診療しました。中越地震の時も多数例発生しています。震災被災地に早急に仮設住宅を設置するなど、「住」を提供することが急務です。
●2011年3月13日 16:56
 私の高校の友人たち、医師の仲間たち、その他の大切な友人の皆様に、社会的に成功して裕福な仲間たちに率直にお願いをします。東北地方の広域で生活物資が不足しています。活動中に、食料品やガソリンを求める長蛇の列を幾度となく目撃しました。
 被災者のために寄付をしてください。
 生活物資や仮設住宅は、すべての被災者を、特に高齢者、子供、家を無くした被災者などの社会的弱者の命を守ります。もちろん私もそうします。
●2011年3月13日 22:51
 仙台から撤収中です。移動の強行軍、診療、空腹、睡眠不足、風呂に入れない顔も洗えない、雑魚寝、欲しいものの何一つ手に入らない苦しい生活でした。
 私は短期間でしたが、被災地の人たちはこれが何週間も続きます。しかし、地元の皆さんは、この悲劇と苦境のなかで、たくましく明るく感謝の気持ちに溢れて暮らしています。「東京DMAT」のロゴが入ったユニフォームを見て、何度も「遠くからありがとうございました」と声をかけられ、こちらがじんときました。宮城県が大好きになりました。
(これより先は、白石氏がDMAT活動より戻った後にFacebookに投稿した報告です)
●2011年3月14日 13:25
 3/11 地震発生。被災地に向けて無人の首都高速を走るドクターカー。随行車から。この時、私は偶然DMATの講習を受けていました。まさにその日にDMATで出動するとはびっくりです。東京は大渋滞で、多数の帰宅困難者が出ていました。通行止めの首都高速を走るのに、微妙な罪悪感が…。
●2011年3月14日 14:54
 仙台市若林区の国立病院機構仙台医療センターです。外観上の損傷はなく、周囲の町並みも未曽有の大地震が襲ったとは思えないくらいの平穏さでした。
 しかしライフラインは途絶し、自家発電で部分的な電力供給と備蓄の水でかろうじて業務が出来るものの、CTなどの大型画像診断機器は停止し、大手術はできない状態です。院内は節電のため暗く、水道やトイレはほとんど断水です。加えて院内に被災者が避難してきており、病院業務に加えて救護も行わざるを得なくなっていました。
 ここが拠点になり、およそ100チーム500名前後のDMATが参集しました。ここと周囲の病院の医療支援、災害医療の現地本部機能、自衛隊基地での搬送業務、被災現場での医療、などに散って行きました。
●2011年3月14日 23:11
 仙台市宮城野区の東北厚生年金病院での風景。仙台市の中核病院の一つである。津波の被害をぎりぎり逃れたが、建物が損傷し、屋上の水タンクから水が流れこみ、病棟の一部が閉鎖に追い込まれた。
 400名くらいの入院患者を病棟移動させ、4人部屋を8人で使うなどの対応をしたが、そこにさらに1400人の被災者が避難場所を求めて押し寄せた。会議室やリハビリテーション室、廊下、ロビーなど、共用スペースには被災者が溢れかえった。手持ちのリネンと災害備蓄の保存食をすべて放出し、できる限りの対応をしたが、水、電気、ガスのすべてが停止し、自家発電の燃料も枯渇しつつある。余震が来れば崩落の危険がある。トイレの水が流れず、悪臭が立ち込め、衛生環境は悪化しつつある。
 すべての病院職員は英雄であった。すべての患者と避難者、5倍近くに膨れ上がった人たちのケアに不眠不休の努力をした。しかし、遂に限界が来た。入院患者の転送と避難者の移動が始まった。 このように仙台の「避難所」は収容能力、衛生面、安全面、食事など、すべての面で危機的な状況にある。写真は病院での炊き出し風景。スチール本棚を倒して竈(かまど)にし、津波で流れてきた木造家屋を薪にして、味噌汁を作っている。職員の表情は明るく、なんともたくましい人たちであった。


0316-633号 震災関連記事 感染症対策その他 [kensa-ML NEWS 【緊急】]

各報道機関の皆様へ
 以前、記事引用に関し皆様と一部引用を厳守することについて取り決めをさせていただきました。今回はこのような危機的状況ですので、ネットトラフィックを軽減する目的もあり、全文引用させていただきます。申し訳ございませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。なお、記事に関し問題がありましたら、私宛、ご連絡を頂ければ幸いに存じます。

                                                神戸医療センター 新井 拝



 明日にかけて、被災地ではかなりの冷え込みとなる見込みで、被災されている多くの方々の健康状態が非常に気にかかるところです。

 阪神大震災の時も極寒時で、風邪をひかれる方や下痢をされる方など多数おられました。避難所ではインフルエンザも蔓延し、衛生状態もかなり劣悪な環境でした。恐らく今回は津波というものも重なり、かなりの衛生状態悪化が予想されます。公衆トイレなどの不足もあるでしょうし、とにかく食料事情がかなり悪い状況ですから、栄養状態が悪化し、免疫力も低下。悪循環が容易に予想できます。

 今回の配信では、気をつけるべき感染症対策などを中心にしたいと思います。電気事情もかなり悪い状況ですから、被災されている方々がメール自体見ることは困難でしょうが、もしかしたらお役に立つことがあるかも?との思いで配信いたします。私のブログの方も出来る限り早急に震災関連の情報が一目でわかるように整備したいと考えております。

 本日、何か良いサイトはないものかと探し回っていましたら、OLIVEというサイトにヒットしました。震災被災地での生活を助けるアイデア集みたいなサイトですが、具体的に分かりやすいものなので、ご一読いただければと思います。
 
https://sites.google.com/site/olivesoce/


 さて避難所では、衛生状態に加え低気温、それに避難されている方が多数おられるでしょうから、感染症だけではなくエコノミー症候群などにも気をつけないといけないでしょうし、脱水症も多発する可能性があります。飲料水の不足は報道などでも明らかですから、特に気をつけるべきポイントかもしれません。慢性疾患をお持ちの方は多数おられるでしょうから、その対策もあるでしょうし。

 まずはトイレの問題からご紹介します。


トイレ ポリ袋活用/「決して我慢しないで」 朝日新聞 アピタル震災特集
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/iCHGfxgMKW
●避難所 トイレ、ポリ袋活用 「決して我慢しないで」
 くらしを支えるトイレ。断水で水洗式が使えない被災地では、仮設トイレのタンクが満杯になる場所も出てきている。多くの人たちが身を寄せ合っている避難所や、行政サービスから孤立した自宅で、断水時にどんなことに気をつければいいのか。
 災害時のトイレ事情に詳しいNPO法人「日本トイレ研究所」(
http://www.toilet.or.jp/)の加藤篤所長は、「今回の震災は水害が追い打ちをかけ、最悪の衛生環境に陥りかねない」と懸念する。
 加藤さんは、断水時にポリ袋を使う方法を呼びかける。「便器をポリ袋で覆ってから排泄(はいせつ)してほしい。袋には新聞紙などを一緒に入れ、排泄物の水分を吸収させた上で密封する。排泄物は断水が解除されたときに、少しずつ慎重に流してほしい」
 排泄は命を支える大事な営み。共同生活の中でトイレは、安心して1人になれる数少ない場所だ。加藤さんは、トイレの清潔さを保つために、トイレットペーパーや除菌シート、生理用パッドや紙オムツなどの衛生用品を被災地へ支援する必要性を説く。
 1995年の阪神大震災では、避難所のトイレの個室から排泄物があふれる事態になった。仮設トイレの備蓄が足りず、「数を増やして」という要望が殺到した。
 2004年にあった新潟県中越地震を通じた研究では、仮設トイレが被災者の心理面に及ぼす影響もわかった。トイレの段差や外気の寒さを嫌って、飲料水や食べ物を控え、体調を崩す高齢者が相次いだ。
 NPO法人「愛知排泄ケア研究会」理事の泌尿器科医、吉川羊子さんは「決して尿や便を我慢しないで」と訴える。「被災者同士で『トイレはお互い大変ね』と口に出すことで譲り合いの雰囲気も生まれ、清潔に使うマナーが守られる」
 このほかにも転倒などのトラブル予防のために、高齢者や女性同士で声をかけ合ってトイレに行くようにする▽便の細菌による感染を防ぐため、手指消毒剤や使い捨て手袋を使う▽現地入りするボランティアは市販の携帯トイレを持参する――ことが重要だという。


 次は低体温症についてご紹介。


避難所で低体温症を防ぐには/日本登山医学会 朝日新聞 アピタル震災特集
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/oMBqzSqm18
 各地の避難所では食料や毛布も足りず、さらに寒さも16日から厳しくなりそう。心配なのが低体温症だ。
 日本登山医学会によると、低体温症は体の中心の温度が35度まで下がることだが、耳の鼓膜を測るなど特殊な体温計が必要だ。増山茂理事は「体が震え出すことが低体温症のサイン」と言う。
 寒さを感じるセンサーが衰えている高齢者や熱を生む力が弱い子どもがなりやすい。栄養不足、血の巡りが悪くなりやすい水分不足や糖尿病、脳梗塞の人も要注意だ。
 がまんするのが一番危険だ。体を温めてもいないのにふるえが止まったら、悪化している危険がある。体の中心温度が32度まで下がると、つじつまの合わないことを言い出したり、ふらつきだしたりするという。さらに体温が下がると、心停止につながる。
 増山さんは「やけどに注意しながらペットボトルを湯たんぽ代わりにして脇、股、首に当てるといい。お湯がないなら、多くの人が体を寄せ合うのも効果的だ」と話している。


低体温症
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8E%E4%BD%93%E6%B8%A9%E7%97%87
 低体温症(ていたいおんしょう、Hypothermia ハイポサーミア)とは、恒温動物が、寒冷状態に置かれたときに生じる様々な症状の総称。また、低体温症による死を凍死(とうし)と呼ぶ。

【低体温症の機序】
 低体温症は、恒温動物の体温が、通常より下がっている場合に発生する。軽度であれば自律神経の働きにより自力で回復するが、重度の場合や自律神経の働きが損なわれている場合は、死に至る事もある症状である。これらは生きている限り、常に体内で発生している生化学的な各種反応が、温度変化により、通常通りに起こらない事に起因する。

【温度と生化学反応】
 生化学的反応の例を挙げるなら酵素の反応だが、これらは通常の場合において、特に動物が利用する酵素は、至適温度が40°C前後である(=40°C前後で最も効率良く働くということ)ものが多いが、これはヒトの中心温度(37°C前後。直腸温度などが最も近い)に近いため、体内で効率よく働くことができる。俗に「腹を冷やすと下痢(消化不良)になる」と言われるが、その原因の一つとして、消化管の温度低下によってこれらの酵素の一種である消化酵素の働きが鈍り、消化作用が阻害されることが挙げられる。
 また、ブドウ糖などの糖を酸化・分解してエネルギー通貨としてアデノシン三リン酸 (ATP) を生成する「解糖系」という過程も、周辺温度によって生成速度に差が生じ、低い温度ではこのATP生産が低下する。そしてATPは筋肉、神経、内臓など全身の細胞の生命活動全般においてエネルギー源として使用されているため、供給が滞れば致命的な問題に発展する。


【対処法】
 症状によって、必要な対処法が異なる。慌てて手足を温めると、急激に心臓に負担が掛かって、ショック状態に陥る危険性があるので注意する。アルコール飲料は確かに体が温まるが眠気を誘い、余計に事態を悪化させる危険があるので避けるべきである。体の温まる甘い飲み物は効果的だが、意識がはっきりしていないと、飲み物で溺死する危険性があるので、意識障害が在る者には飲ませてはいけない。

対処法・基礎】
 風雨に晒されるような場所を避け、衣服が濡れている場合は、それらを乾いた暖かい衣類に替えさせ、暖かい毛布などで包む。衣類は緩やかで締め付けの少ない物が望ましい。脇の下やそけい部(又下)等の、太い血管(主に静脈)がある辺りを湯たんぽなどで暖め、ゆっくりと体の中心から温まるようにする。この時、無理に動かすと、手足の冷たくなった血液が、急激に内臓や心臓に送られる結果になるため、体を温めさせようとして運動させるのは逆効果であるので、安静とする。
対処法・軽度】
 とりあえずどんな方法ででも、体を温めるようにして、暖かい甘い飲み物をゆっくり与える。ただし目が醒めるようにとコーヒーやお茶の類いを与えると、利尿作用で脱水症状を起こすので避ける。アルコール類は体は火照るが、血管を広げて熱放射を増やし、さらには間脳の体温調節中枢を麻痺させて震えや代謝亢進などにより体温維持のための反応が起こりにくくなるため、絶対与えてはいけない。リラックスさせようとしてタバコを与えてはいけない。タバコにより末梢血管が縮小して、凍傷を起こす危険があるためである。この段階では、少々手荒に扱っても予後はいいので、出来るだけこの段階で対処すべきである。
対処法・中度】
 運動させたりすると、心臓に冷たい血液が戻って、心臓が異常を起こす事もあるので、出来るだけ安静に努める。急激に体の表面を暖めるとショック状態に陥る事があるので、みだりに暖めない。比較的穏やかに暖める事は可能であるが、裸で抱き合うと、体の表面を圧迫して余計な血流を心臓に送り込んで負担を掛けるので避けるべきである。同様の理由で手足のマッサージも行ってはいけない。とにかく安静にする必要があるので、風雨を避けられる場所に移動するにも、濡れた衣服を着替えさせるにも、介助者がしてやるようにし、出来るだけ当人には運動させないようにする。心室細動により非常に苦しむ事も在るが、心臓停止状態以外では、胸骨圧迫も危険であるため、してはならない。
対処法・重度】
 呼吸が停止しているか、または非常にゆっくりな場合は、人工呼吸を行って、呼吸を助ける。心臓停止状態にある場合は、胸骨圧迫を併用する。心臓が動き出したら胸骨圧迫を止め、人工呼吸を行う。この場合はマウス・トゥ・マウス式(仰向けに寝かせた要救護者の後頭部から首に掛けて手を宛がって持ち上げ、鼻をつまんで、介護者が口を使って、要介護者の口へ息を吹き込む・喉の奥に吐いた物が詰まっている場合は、これを取り除いてから行う)人工呼吸の方が、人間の吐息であるために暖められていて都合がよいとされる。


 次は災害時(津波を含む)の感染症対策について


2011年の東北関東大震災と感染対策(神戸大学 岩田健太郎先生 2011年3月14日)
 
http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/archives/2599347.html
ポイント
 ・災害時の感染対策はブリコラージュが大切である。
 ・多いのはコモンな感染症である。かぜ、下痢症等に要注意。
 ・外傷後の破傷風予防に気をつける。
 ・感染伝播は、感染経路を考えて対応する。

【はじめに】
 本稿は、2011年3月11日から発生した東北関東大震災を受けて、感染症対策という観点からまとめたものです。想定する読者は、被災地で感染対策を行う医療者です。
 津波と感染症に関する一般事項についてはCDCのサイトに詳しいですが、必ずしも今回の「この」津波にフィットした内容とは限りません。
 
http://emergency.cdc.gov/disasters/tsunamis/healthconcerns.asp
 ですから、本稿では今回の災害を受けて具体的にどのような対策をとったらよいか、今手元にある情報から考えて作ってみました。事態の緊急性を鑑み、また読みやすさを考えて詳細な文献的内容は取り入れていません。読みやすさに大きなウエイトをおきました。また、文中に活用できるリンクも貼りましたが、電気やネットへのアクセスがなくてもプリントアウトして読めるような内容を目指しました。
 以下の見解は岩田の個人的見解で、神戸大学各部署を代表するものではありません。もちろん本稿はリンクフリー、転載フリー、コピーフリーです。メディカ出版の寛大なるご判断に心から感謝申し上げます。
【災害時の感染対策はブリコラージュである】
 非常時には、常時の「常識」が必ずしも適応できません。「あれがあればできるのに」という発想はうまくいきません。「ここにあるもので、どこまでできるか」という発想が大切になります。これを、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースは「ブリコラージュ」と言いました。手近にあるものでなんとかやり繰りすることです。こういう発想は現場の感染対策ではいつでも有効ですが、特にリソースが枯渇しやすい災害時には有効です。教科書的な「正しい感染対策」に縛られず、手元にあるリソースを最大限に活用して臨機応変の「知恵」を出しましょう。
 手袋は1回使って捨てるのが常時の医療の基本ですが、このようなときには24時間、あるいはそれ以上の着用が正当化されるかもしれません。手指消毒も最低限に絞ってもよいかもしれません。リソースがどのくらいあり、ニーズがどのくらいあるかを見積もって、逆算して「どこまでできるか」考えましょう。
【最大のリソースは、人である】
 災害時の最大、最強のリソースは「人」です。これが枯渇しないように気をつけます。災害時にはやることが沢山あり、また使命感で気負っていますから、どうしても「がんばりすぎ」になります。適切な休養、食事、睡眠がないと人間の判断力は低下します。このような緊急事態だからこそ、自らの荒ぶる心を静かに落ち着かせ、目先の使命感だけでなく、長期的なアウトカムや全体の利益を考える視点が大事になります。全体を見回す目、「bird's eye(鳥の目)」と呼ばれる視点です。自らが働きすぎないように、仲間が疲弊しないように目配りし、適度な休養を「義務」としてとりましょう。
【被災直後は外傷対策】
 被災直後は外傷患者ケアが大切になります。感染症的なポイントは、
1.抗菌薬
2.破傷風対策
に集約されます。抗菌薬を誰に処方するかは、そこにある抗菌薬の量と患者の数に関係します。抗菌薬が潤沢にあれば、比較的容易に処方したらよいでしょう。抗菌薬の数が足りなくなってきたら、比較的きれいなキズは洗浄だけで抗菌薬処方はなしにせざるをえないでしょう。とはいえ、通常医療と異なり、外来フォローが困難だったり、「一回だけ」診療ができる短期診療のことも多いでしょうから、抗菌薬処方の閾値は下げておいたほうがよいでしょう。
 期間は通常3日間。実際に創部感染を起こしていれば1週間程度の治療がよいでしょう。あまり抗菌薬を長期に出しすぎると、ストックが枯渇しますから有効につかいましょう。
 ケフレックスのような第一世代のセフェム、オーグメンチンやクラバモックスのようなβラクタマーゼ阻害薬入りのペニシリン、クリンダマイシンなどを用いればよいと思います。もし、こういった抗菌薬がなければミノマイシンや第2,第3セフェムでもある程度は効果があります(通常医療では奨められませんが、他になければやむを得ません)。シプロキサンは3日程度なら黄色ブドウ球菌のような皮膚感染症の原因には使えるでしょう。バクタ(ST合剤)も使えますし、ジスロマックやクラリスのようなマクロライドも(効果は小さくなりますが)全く無意味というわけではありません。他に抗菌薬がなければ、やらないよりはましでしょう。比較的軽いキズであれば、ゲンタシン軟膏でもいけると思います。
 膿の培養検査は通常医療であれば必要ですが、災害時には電気や検査技師を消耗しないためもあり、提出しなくてもよいと思います。難治例、重症例では選択的に膿の培養や血液培養を提出してもよいでしょう。
 汚いキズには破傷風のトキソイド、もっと汚いキズには破傷風免疫グロブリン(テタノブリンなど)が必要になります。破傷風はいったん発症すると治療にとても難渋しますし、人工呼吸器など高度なリソースを要しますから、きちんと予防したほうがよいです。
 日本の場合、1968年からの三種混合ワクチン(DTaP)の定期接種以前に生まれた人などは最初の免疫ができていません。したがって、トキソイドも3回接種が必要になります。定期接種を受けている人は、10年に1回の接種で大丈夫です。ただ、トキソイドの量が足りないときは、仕方がないのでせめて1回だけでも接種しましょう(このへんはロジスティクスの問題になります)。
 トキソイドと免疫グロブリンは同時接種しても大丈夫です。B型肝炎と同じですね。
 詳しくは、山本舜吾先生の解説をごらんください。
 
http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/archives/2582521.html
【津波に関連した感染症】
 専門的には津波に関連する感染症の懸念はあります。ビブリオ、エアロモナス、レプトスピラ、A型肝炎などです。しかし、今回の津波は冬の日本で起きており、これらの教科書的な感染症のリスクは(ゼロではないにしても)相対的には小さいでしょう。レプトスピラは災害の現場で確定診断するのは困難でしょうし、たとえ重症例でも普通に広域抗菌薬で治療する他ないと思います。免疫抑制者のVibrio vulnificus感染も同じです。A型肝炎も特定の治療法はないですから、他の重症患者同様に(可能であれば)全身管理にて治療されるでしょう。興味のある方はCDCのサイトをご参照ください。
 
http://emergency.cdc.gov/disasters/tsunamis/healthconcerns.asp

つぎは、避難所での「コモンな感染症」
 超急性期は外傷ケアが問題になるが、避難所での生活が長く続くと、次に問題になるのは狭い避難所での感染症になります。特に水の枯渇が問題です。
 1.飛沫感染症 風邪、インフルエンザなど
 2.下痢症
 3.空気感染症 結核、麻疹、水痘など
 4.肺炎や尿路感染
などが問題になると思います。

 1.ですが、水が潤沢にあれば「手洗い」ということになるでしょうが、そうはいかないことも多いでしょう。ウェット・ティッシュなどを代用することも有効かもしれません。うがいはこれらの感染予防や治療にあまり有効ではないので、ここに大量の水を使うくらいなら手洗いや飲用水にまわしましょう。患者はサージカル・マスクを付け、患者でない人とできるだけ距離をとりましょう。最近、予防に亜鉛が有効というデータがあるので、可能であれば亜鉛タブレットを配ってもよいかもしれません。ただ、亜鉛は気分が悪くなる人もわりと、います。
 臨床的にインフルエンザっぽかったら周囲への予防効果も考え、さっさとタミフルなどの抗インフルエンザ薬を用いたほうがよいかもしれません。迅速キットなどの診断検査は行ってもよいですが、同じ避難所から同症状の患者が増えたら無駄でしょうから、検査なしで治療します。周辺に予防投与させる方法も、薬が沢山あるときは有効でしょう。インフルエンザは流行が下火になっているので、あまり大きな問題にはならないと思いますが、インフルエンザBは今後も流行するかもしれません。

 2.ですが、結構厄介です。まず、水やトイレの不足から衛生面で下痢症予防は困難です。発症しても狭い避難所では伝播しやすいです。治療の原則は輸液ですが、水が不足しているときは小児や高齢者は脱水に陥りやすく、死に至ることもあります。与えられた水を有効に用いて、治療します。
 下痢症の輸液は多くの場合経口で可能ですから、点滴でなくても治療できます。ORS(oral rehydration solution)があればそれを活用します。可能な限り煮沸消毒、あるいはイソジン・タブレットによる消毒をしましょう。吐いていても、吐いている間に水を飲ませます。
 吐物や便はできるだけ手袋とマスクを着用の上処理します。マスクをするのは、ノロウイルスなどミストが飛んで口に入るからです。ノロウイルスを疑った場合の消毒薬は、キッチンハイター等の塩素系消毒液を500mL入りのペットボトルのキャップに半分入れ、それを500mlの水とまぜればできあがり。ゴム手袋を着用して汚れたところを拭くとよいです。ノロウイルスは非常に流行の伝播が早く、避難所で流行するととてもやっかいなので持てるリソースを十分に使って強力な対策をとります。
 外傷同様、ルーチンで便培養をするのはリソースの無駄遣いなので必要ないでしょう。細菌性下痢症のアウトブレイクが疑われたら(持続する熱や血便など)行ってもよいでしょう。
 細菌性下痢症では通常抗菌薬を投与しないことが多いですが、避難所で下痢が続くと脱水のリスクやQOLの低下が甚大なので、シプロキサンのような抗菌薬を早めに投与してもよいと思います。カンピロバクターを疑えば(鳥肉摂取後)、アジスロマイシンのようなマクロライドがよいでしょう。止痢薬(ロペミンなど)は、このような状況下では積極的に使うのが正しいと私は思います。

 3.はかなりやっかいです。陰圧個室などの確保は難しいです。かといって、このような感染症が広がるのは大きな問題です。麻疹も水痘もそれほど死亡率は高くない感染症ですが、水が足りないところだと脱水から死亡率が高まるかもしれません。トイレなどできるだけ個室を確保し、なんとか患者を離してください。私が以前見た対策では、診療所のテレビの後ろに患者が隠れてもらう、、と言うのがありました。それは常時の医療では「バツ」ですが、やらないよりましかもしれません。患者にはサージカルマスクを付けてもらいましょう。N95は実際的でないので、医療者もサージカルマスクを付けるのがよいと思います。
 水痘は曝露後予防接種の効果が知られているので、予防接種を受けていない免疫正常な1歳以上の小児には周辺で接種してもよいでしょう(曝露後72時間以内)。アシクロビルなどの抗ウイルス薬にも曝露後予防効果があります。1週間くらい用いることが多いです。

 4.は、もともと高齢者などに多い感染症です。災害時にも当然多く見られます。避難所の生活での衰弱なども発症に拍車をかけるかもしれません。通常の医療と同様、これらの感染症に対応します。簡単なレジメンは、点滴薬があればロセフィン(セフトリアキソン)1日1g点滴 ロセフィンは「常時」は2g、4gと大量に使いますが、1gでも中等症くらいまでならOKです。大事に使いましょう。経口だとクラビット(レボフロキサシン)500mg1日1回経口 がバイオアベイラビリティーがよいので便利です。7日くらいの治療で多くは大丈夫だと思います(抗菌薬が潤沢であれば、敗血症例、腎盂腎炎は14日くらいの治療が理想的です)。
 もちろん、これ以外の抗菌薬でも肺炎や尿路感染に対応できます。例えば、普段は感染症診療のファーストラインに用いられにくいテトラサイクリン系ですが、抗菌薬が枯渇したときにはいろいろな用途に用いることができます。詳しくは、土井朝子先生の解説をごらんください。
 
http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/archives/2589165.html

【遺体の扱い】
 残念ながら、今回の地震では多数の死者が発生しています。死体は異臭を放ちます。しかし、安易に埋葬すると身元の確認ができなくなります。火葬をすると火災のリスクがあります。いずれにしても、「異臭」には感染性はなく、それが故に「疫病」を恐れて慌てて土葬・火葬を行う必要はありません。飛沫感染、空気感染など、遺体から感染することはきわめてまれなのです。出血があれば肝炎ウイルスなどの感染を予防するために手袋が合理的な対策でしょう。


災害対策に関連した感染症について、頻度の高いものへの対策
 
http://blog.livedoor.jp/disasterinfection/archives/2578157.html
 災害対策に関連した感染症につ いて、頻度の高いものから申し上げます。
1.かぜ、インフルエンザ、下痢症
 避難所での密な生活と水不足のためです。トイレや 水の確保が大切になります。水痘、結核の懸念もあります。N95はあまり現実的ではないので、通常はサージカルマスクが役に立ちます。下痢症は水不足の状 態では死亡のリスクがありますので、軽く見てはなりません。通常は止痢薬は「相対的に禁忌」とされていますが、避難所での不便な生活を考えると、ロペミン 等の処方は正当化されることも多いです。比較的治癒しやすい水痘ですが、水不足の時は小児の水痘が脱水、ショックの原因になりますから、可能な限りの隔離 が望ましいです。
2. 外傷に関連した感染症
 破傷風を含みます。破傷風トキソイドと(必要でか つ可能ならテタノブリンも)、外での外傷では3日程度の抗菌薬(オーグメンチンなど)が処方されることが多いです。
3.津波関連の感染症
 (vulnificus)を含むビブリオのリス クはありますが、冬ではそのリスクは低めだと思います。レプトスピラ、A型肝炎、エアロモナスなども可能性はありますが、上の1,2に比べると今回の地震 におけるインパクトは小さいと思います。
4.血流感染
 普段より清潔操作ができない入院患者、透析患者に おいて
 
 最後に、死者から異臭が漂うと感染を懸念する人が増えますが、遺体から空気感染、飛沫感染することはまずありません。地震のあるときに遺体の焼却をするのは危険ですし身元確認ができなくなるので、安易な火葬はやめるべきです。出血からHBVなどの感染は可能性があるので、手袋は有効です。
 なお、頻度的には高齢者の肺炎 や尿路感染の受診が多いです。平時に多い事象は緊急時にも当然多い


 少し長くなりましたが、最後にエコノミークラス症候群について。


静脈血栓塞栓症
 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%99%E8%84%88%E8%A1%80%E6%A0%93%E5%A1%9E%E6%A0%93%E7%97%87
 静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)は、肺血栓塞栓症(Pulmonary embolism:PE)と深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:DVT)を併せた疾患概念である。
 飛行機内などで長時間同じ姿勢を取り続けて発症することがよく知られており、俗にエコノミークラス症候群あるいはロングフライト血栓症とも呼ばれる。
【原因】
 静脈血の鬱帯(うったい)や血液凝固の亢進が原因となる。血流鬱滞(血液の流れが滞ること)の原因としては長時間同じ姿勢で居続けることや鬱血(うっけつ)性心不全、下肢静脈瘤の存在が挙げられる。血液凝固の亢進(血が固まりやすくなること)は様々な病態において生じるが例えば脱水、がん、手術、エストロゲン製剤の使用などが挙げられる。また抗リン脂質抗体症候群などの血栓性素因も原因となる。
 特に湿度が20%以下になって乾燥している飛行機、とりわけ座席の狭いエコノミークラス席で発病する確率が高いと思われているためにエコノミークラス症候群と呼ばれるがファーストクラスやビジネスクラス、さらに列車やバスなどでも発生の可能性はある。タクシー運転手や長距離トラック運転手の発症も報告されている。長時間同じ体勢でいることが問題といわれる。
 2002年に日本人サッカー選手の高原直泰が旅客機での移動に際してエコノミークラスより格段に広いビジネスクラスを利用して発病したこともあり、エコノミークラス以外なら安全ということではない。このため旅行者血栓症とも言われるが、日本旅行医学会はバスなどでの発生はまれだとしてロングフライト血栓症に改称することを提唱している。
 なお高原選手の2006年のワールドカップドイツ大会の代表選出に関連して、ドイツへの移動に際しては高原選手のみは日本サッカー協会からファーストクラスがあてがわれた(ジーコ監督以下他のスタッフはビジネスクラスを利用)。
 2004年の新潟県中越地震では、自動車の中で避難生活を送る人たちの中にエコノミークラス症候群の疑いで死亡するケースが相次いだ。
 なお日本国外では、犠牲者の遺族が航空会社を提訴するなど社会問題にもなっている国もある。
【症状】
 深部に血栓ができた場合は痺れや皮膚色の変色、血栓より遠位の浮腫などといった症状がでるが無症状のこともある。特に下肢静脈血栓は左に起きやすい。これは左の総腸骨静脈と右の総腸骨動脈が交差しているため、後者によって前者が圧迫されやすいためである。
 体の深部静脈に血栓ができた場合はその静脈と周囲の皮膚に炎症を起こし、血栓性静脈炎を引き起こすことがある。
 血栓が飛んで肺塞栓を引き起こすと、呼吸困難と胸痛などの症状が出る。そのほか動悸、冷汗、チアノーゼ、静脈怒脹、血圧低下、意識消失なども生じる。急激かつ広範囲に肺塞栓を生じた場合は心肺停止となり、突然死する。
【予防】
 静脈血栓塞栓症は突然死をきたす重篤な疾患である。そのため発症する前に予防することが非常に重要である。一般的に推奨されている予防法を示す。
 長時間にわたって同じ姿勢を取らない。時々下肢を動かす。飛行機内では、着席中に足を少しでも動かしたりすることなどが推奨されている(乱気流により負傷する事故もあることから、飛行中にむやみに席を立って歩いたりすることは行わないほうが良い。航空会社によっては、座席でできる簡便な下肢の運動法を記したパンフレットが各座席に備え付けられている場合もある)。
 麻痺や療養のため長期臥床を余儀なくされる場合、長時間の手術を行う場合は弾性ストッキングや空気式圧迫装置を用いて血液のうっ滞を防ぐ必要がある。特に弾性ストッキングはリスクのある例全てに行なわれるべきである。長期臥床への利用は、外科手術後は抑制・予防効果が認められるが、脳卒中後の深部静脈血栓症には効果がないと報告されている。
 脱水を起こさないよう、適量の水分を取る。飛行機内では客室乗務員を呼び出して、適宜水を持ってきてもらう。ビールなどのアルコール飲料や緑茶・紅茶・コーヒーなどカフェインを含む飲み物は利尿作用があり、かえって脱水を引き起こす恐れがあるので水分補給目的としては避けたほうが良い。
 血栓症のリスクが高い場合は、予防的に抗凝固療法を行う。
 下肢静脈に血栓が存在する場合には、肺に血栓が飛ぶのを防ぐために下大静脈フィルターの留置が検討される。


0316-632号 震災関連記事 被曝について [kensa-ML NEWS 【緊急】]

各報道機関の皆様へ
 以前、記事引用に関し皆様と一部引用を厳守することについて取り決めをさせていただきました。今回はこのような危機的状況ですので、ネットトラフィックを軽減する目的もあり、全文引用させていただきます。申し訳ございませんが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。なお、記事に関し問題がありましたら、私宛、ご連絡を頂ければ幸いに存じます。

                                                神戸医療センター 新井 拝


 連日被災地からの悲惨な状況を見るにつけ「何か自分に出来ることは?」と自問自答されている方は多いと思います。私も義援金やその他何か支援できることは?と考える日々を過ごしています。やはり有益な情報を出来る限りご提供することと思いましたが、様々なHPやブログなどでは、多くの方々が震災関連情報を流されています。ですから出来る限り医療従事者として少し違った目線でお届けできればと思います。

 日本国内だけではなく海外からも続々と被災地に対してのエールが送られていますが、ツイッタ―上では#prayforjapanというハッシュタグで世界中からのメッセージが届けられています。そのツイッタ上で心に残るつぶやきが紹介されているサイトがありましたので、ご紹介しておきます。内容はサイトをご覧ください。
 
http://prayforjapan.jp/tweet.html


 さて世界最大級の大地震、大津波に加え、大きな関心事(心配事)となっている原子力発電所における事故。震災当日の午後五時までは天災、それ以降は人災とも言われていますし、スリーマイル以上、チェリノブイリ以下とも言われています。枝野官房長官のご説明は非常に分かりやすいのですが、具体的な事をもっと知りたいという方もおられることでしょう。原発構造体や被曝についての具体的な記事がありましたので、ご紹介しておきます。


東日本大震災:原発「五重の壁」でカバー 毎日新聞 3/15
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20110315k0000e040078000c.html
 原発ではウラン燃料を核分裂させ、生み出した熱で発電している。その時に発生する放射性物質を外界に出さず閉じこめるため、原発は核燃料を「五重の壁」で覆う構造になっている。第1が、ウラン燃料を焼き固めたペレット▽第2が丈夫な金属の被覆管▽第3が厚さ約15センチの金属製の原子炉圧力容器▽第4が厚さ約3センチの鋼鉄製の原子炉格納容器▽そして最後の第5の壁が、厚さ1メートル以上の鉄筋コンクリート製の原子炉建屋(たてや)だ。
 2号機の爆発では、第4の壁の格納容器の一部が損傷した恐れがある。また、すでに炉心溶融が起きていることから、第1、第2の壁も損傷している。


 ここからは被曝に関するもの。人体と放射線の関係を分かりやすくまとめたものが以下URLです。

原子力・エネルギー教育支援情報提供サイト http://www.atomin.go.jp.nyud.net/atomin/high_sch/reference/radiation/jintai/index_06.html


東日本大震災:窓閉め換気最小限に 被ばくQ&A 毎日新聞 3/15
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20110315k0000e040077000c.html
 原発事故による住民被ばくが現実のものになった。被ばくを最小限に抑える方法をまとめた。

Q だれが被ばくした可能性がある?
A 原発から出た放射性物質は目に見えない微粒子です。風で広がる可能性があります。気になる人は、外出後に顔や手、髪など露出している部分を洗い流してください。

Q 被ばくしたかどうか確実に知りたい場合は?
A 原発がある自治体や大きな病院には「ガイガーカウンター」という装置があり、体に放射性物質が付着していないか調べられます。今のところ、福島第1原発周辺の住民は避難したりしているので、強く汚染していることは考えにくいです。

Q 避難指示を受けたり、被ばくする可能性が高い状況になったら?
A 屋内退避指示が出たら、窓をしっかり閉め、エアコンや換気扇を使わないようにして、換気を最小限にします。外出する場合は、マスクやぬれタオルなどで口・鼻を覆えば、放射性物質を体内に取り込む「体内被ばく」を最小限に抑えることができます。帰宅したら服を脱いで、ビニール袋に入れて口を縛り、すぐシャワーを浴びてください。

Q 雨のときはぬれない方がいいの?
A 空気中に含まれる放射性物質の濃度が高い地域では、雨にも放射性物質が含まれる恐れがあるため、ぬれないように気を付けたほうがいいです。複数の情報源でチェックする必要があります。


被曝って何? 基礎知識Q&A 朝日新聞 アピタル震災特集 
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/iRUM4h6LJg
 東日本大震災で起きた原発の炉心溶融に伴って、放射性物質が外部に出る事態になっている。放射線が健康に及ぼす影響や、対処法についてまとめた。(編集委員・中村通子、木村俊介)

Q. 被曝って何?
A. 体が放射線にさらされること。放射線を出している物質が、体の外にある場合を「外部被曝」、体の中に入り込んでいる場合を「内部被曝」という。対応の仕方は大きく変わる。 外部被曝は、X線撮影のようなタイプと、体の表面に放射性物質が付くタイプがある。「体表面汚染」と呼ぶ。今回のケースでは、原発からでた細かなちり状の放射性物質が体や洋服につくと、体表面汚染を起こす。

Q. 体表面汚染がおきたら、どうすればいいの?
A. 汚染があるかどうかをまず「サーベイメーター」で測る。汚染が確認されたら、除染をする。

Q. 除染の手順は?
A. 大阪大の嶋津岳士教授によると、まず服を脱ぎ、ぬれタオルなどで、全身をよくぬぐう。細かい切り傷などは注射器で丁寧に水をかけて洗う。
 除染の目的は、付着した放射性物質を体から取り除くこと。付いたままだと被曝が進み、健康被害が出る危険性が高くなるからだ。また、いち早く取り去ることで付着した放射性物質をほかの人に広げないという意味もある。
 脱いだ服は厳重に隔離される。自宅に帰れない今回のような場合、着替えの服をどうするか、財布などの貴重品は持っていていいのかなどの課題もある。

Q. 内部被曝は、どうやって起きるの?
A. 吸い込む・飲み込む・傷からはいるの三つの経路で、放射性物質が体内に入り込むと起きる。傷のない健康な皮膚から入り込むことはほとんどない。
 今回の事故では、ヨウ素などガス状の放射性物質が放出されている。吸い込むと内部被曝を起こしうる。

Q. 内部被曝が起きたらどうするの?
A. 体内にとどまっている間、ずっと被曝が続くので、薬剤で吸収を妨げたり、早く排出させたりする。ヨウ素の場合は、甲状腺に蓄積する特殊な性質がある。放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれる量を減らすため、放射線を出さない医療用のヨウ素剤を飲む。

Q. ヨウ素剤を飲めば大丈夫?
A. 万能薬ではない。薬の狙いは甲状腺がん予防だけで、放射線による健康被害全般を防ぐ効果はない。前川和彦・東京大名誉教授によると、甲状腺がんは進行が遅いため、40歳以上だったら、あまり心配する必要はない。それより若い人は、医師の指示に従ってきちんと飲もう。

Q. 被曝を防ぐ方法は?
A. 今回の場合だと、自宅など建物の中にいるのが最善だ。ちりやガスからの被曝を減らせる。ただし、窓を閉めておくのを忘れないようにしよう。避難指示が出たら、速やかに従う。

Q. 被曝と健康の関係は?
A. 大量の放射線に被曝すると、さまざまな健康被害が起きる=グラフ。海外の文献によると、5万ミリシーベルト以上被曝すると、48時間以内に死亡するとされている。東京電力によると、広島原爆では、爆心から500メートルの地点で約9万5千ミリシーベルトと推定されている。
 今回、13日午後2時前に福島第一原発の敷地の境界で観測された値は1時間あたり1.56ミリシーベルト。5万ミリシーベルトの約3万2千分の1。
 全身に被曝した場合、一般に1千ミリシーベルトを超えると、病的な症状がでるとされている。

Q. 胎児は大丈夫?
A. 原爆胎内被ばく者の疫学調査では、100ミリシーベルト以下では胎児に奇形や発達障害などはなかった。世界保健機関は妊娠早期の被曝であっても、被曝総線量が100ミリシーベルト以下だったら人工中絶は正当化されないと宣言している。


被曝 どう防ぐ (1) 朝日新聞 アピタル震災特集
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/c5bgdFdLjB
 東日本大地震の影響で、福島第一原発では、爆発や放射能の放出など大変なことが次々に起きている。いま、現場では、一体、何が起きているのか。放射線から身を守るには、どうすればいいのか。専門家に聞いた。

◆ 福島原発、何が起きてる?/炉の熱、下げられず
Q. 地震から時間がたっているのに、なぜ福島第一原発で次々と大変なことが起きているの?
A. 地震後にすぐ、核分裂反応を止めることには成功した。でも、原子炉の中の核燃料はその後もしばらく熱を出し続ける。通常なら水で冷やして温度を下げ、発熱をとめるが、今回は大地震と津波によって冷却システムが働かなくなってしまった。そのため温度が下がらず、予期しない反応が次々起きている。

Q. 水素爆発が起きたと聞いたけど。
A. 核燃料の仕事は、水に浸かって周りの水をわかすこと。それで発生する水蒸気がタービンを回して電気を起こす。今回、この水が減り、燃料が水の上に出たうえ、きわめて高温になったため、燃料を覆う材料が化学反応を起こして水素が発生した。1号機と3号機では建物の中にたまったこの水素が空気中の酸素と反応して爆発したとみられている。

Q. 爆発しても原子炉は壊れないの?
A. 原子炉は丈夫に造られているので、1、3号機で壊れたのは建物だけだった。ただ、2号機は建物ではなく圧力抑制室と呼ばれる部分が壊れた。さらに、4号機は、原子炉は地震の前から点検中で、燃料を建物内のプールで保管していたが、何らかの理由で、建物4階で火事を起こした。

Q. 放射性物質はどこからもれているの?
A. 原子炉の圧力を下げるために外に逃がした蒸気に少し入っていた。壊れた圧力抑制室からは、それよりずっと多い量が出たようだ。ただ、ほとんどの放射性物質はまだ原子炉の中に閉じこめられている。さらに放出されないよう、原子炉の温度と圧力を下げることが何より必要だ。

◆ 30キロ圏内、どうすれば?/外出避けて、窓閉めて
Q. 福島第一原発から30キロ以内に住んでいる人が気をつけることは?
A. 放射性物質を避けるため、外に出ないようにする。外部の空気を入れないようドアや窓を閉め、換気扇やエアコンを止める。洗濯物は屋内に干そう。ペットもできるだけ外に出さない。

Q. どうしても外に出なくてはならないときは?
A. 原発の風下側を通るのはできるだけ避けよう。帽子や手袋を着け、肌を露出させないように。鼻や口は湿らせたマスクやハンカチで覆う。帰宅後は、全身をシャワーで洗い流し、着替えよう。放射性物質が付着した服は、ポリ袋に入れて口を縛っておく。雨にあたると放射性物質が落下するので、傘やかっぱを使って、ぬれないよう注意しよう。

Q. 子どもや妊婦は?
A. 万が一、子どもが高いレベルで被曝すると、甲状腺に放射性ヨウ素が集まり、甲状腺がんなどになる危険がある。体内に取り込みにくくする安定ヨウ素剤がある。妊婦も優先的に飲む必要がある。ただ、市販されておらず、自治体などが備蓄している。副作用の恐れもあるので、むやみに飲まない。避難所や救護所などで、専門家の指示に従って服用する。

Q. 放射線の被曝濃度はどうやって測るの?
A. 外から浴びた放射線を測るには「サーベイメーター」という装置を使い、頭や両腕などに当てて測定する。放射性物質を吸い込んだり、傷口から入ったりすると、内部被曝が起こる可能性もある。心配な場合は、専門機関で鼻の粘膜などを採り、測る。

Q. 原発の周りで作業していた人は大丈夫?
A. 短い時間に大量の放射線を浴びると、数時間から数日で急性の症状が出る。目安となるのは100~150ミリシーベルト。1千ミリシーベルトで嘔吐などの症状が出てきて、3千ミリシーベルトを超えると大変危険だ。免疫系がダメージを受けると、肺炎などの感染症になりやすくなる。骨髄移植などの治療が必要になることもある。


被曝 どう防ぐ (2) 朝日新聞 アピタル震災特集
 
https://aspara.asahi.com/column/eqmd/entry/34HJeNSNzQ
◆離れた場所の住人は?/雨に注意、飲み水安全
Q. 放射性物質が風に乗って遠くに運ばれたの?
A. 各地で検出された放射性物質の値は普段よりも高いが、直ちに健康に影響が出る値ではない。外出や洗濯物を外で干すのを控える必要もない。子どもの外出も大丈夫。また、ヨウ素131ならば空気より重いので、風が弱ければあまり遠くま
で拡散しない。ただ、放射性物質を含んだ雲が風に乗って移動し、雨になって降り注ぐ恐れもあり、雨にできるだけぬれないよう、注意が必要だ。

Q. 現地で採れた野菜を食べても大丈夫?
A. 放射性物質が付着したものは食べてはいけない。30キロ圏外で採れた野菜は、表面についた放射性物質を洗い流せばいい。普通に水洗いすれば十分と言われている。

Q. 飲み水は安全?
A. 現在の線量であれば、水道水を飲んでも影響はない。ただ今後、水源地が汚染されていないか注意は必要だ。

Q. インターネット上で、昆布やワカメに被曝予防効果があると読んだけど?
A. 昆布やワカメにはヨウ素が含まれているが、量が一定でなく、吸収に時間がかかる。また、「うがい薬やのどスプレーにもヨウ素が含まれているから被曝の予防効果がある」という誤った情報も流れている。これらの薬にはヨウ素以外の成分も多く含まれている。健康に影響を及ぼす可能性もあり、飲んではいけない。そもそも予防効果はない。

【中川恵一・東京大准教授(放射線医学)の話】
◇問題になるレベルではない
 人の発がんリスクが問題になる被曝線量は200ミリシーベルト以上と考えられている。100ミリシーベルト以下ならば、健康上の問題になるレベルではない。福島第一原発から離れた場所で測定されている毎時数マイクロシーベルト(1ミリシーベルトは1千マイクロシーベルト)という放射線量ならば、健康への影響はないと考えていい。長期的にも健康に影響が出るレベルに達するとは考えにくい。
 米国のスリーマイル島原発事故でも、その後の追跡調査で周辺住民のがん死亡は一般人に比べて増えていなかった。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故後には小児の甲状腺がんが増えたが、対応が遅れて被曝線量がかなり高かったことが影響した可能性がある。遺伝的影響についても、これまでの疫学調査の結果によると人では影響は認められていない。住民のみなさんは安心してほしい。

【放射線の健康被害】
 放射線が人体に与える影響には、被曝した本人への身体的影響と、子孫にあらわれる遺伝的影響がある。身体的影響には、被曝から数週間以内の早期に出てくる脱毛などの症状と、数カ月以降になって出てくる白血病など長期的な影響がある。早期影響は原発のごく近くで大量の被曝をした場合でないと起きない。
 長期的な影響は数十年に及ぶと考えられている。広島、長崎の原爆被爆者の協力を得て調べた調査では、白血病や乳・肺・甲状腺などのがんのリスクが被爆者では高くなっている。ただし、リスクは被曝した放射線量による。線量が低ければ、はっきりした影響はみられない。白血病で亡くなった原爆被爆者のデータでは、200ミリシーベルト以上で明らかにリスクが高くなっている。福島第一原発の敷地内で15日に測定された毎時400ミリシーベルトならば30分で200ミリシーベルトに達するが、現在、避難している住民に影響が出るレベルではない。
 放射線による遺伝的影響については、原爆被爆者の子どもで調べた疫学調査などがある。これらの結果、遺伝的影響でがんなどが増えるとは考えられていない。

【放射線測定器】
 体に影響を与える放射線量を測る機器のこと。体の外から浴びた「外部被曝」の放射線は、「サーベイメーター」という携帯型の機器を使う。頭や顔、両腕などを体表面から数センチ離して順番に測っていく。放射性物質を吸い込んだり、汚染された食物を口に入れたりして起こる「内部被曝」の可能性が高い場合には、専門的な医療機関で検査する。座ったり寝たりした状態で全身を測定できる「ホールボディーカウンター」で、体の中から発生する放射線を検出する。ほかにも鼻の粘膜や吐いたもの、尿や便などから検査する方法もある。

【シーベルト】
 放射線を浴びた時の人体への影響を表す単位。放射線にはいくつもの種類があり、人に対する影響度は違う。それを共通の尺度で測るための単位だ。人は世界平均で、普段の生活でも年間2.4ミリシーベルトの放射線を浴びている。1時間あたりに直すと0.274マイクロシーベルトだ。胸部のCTスキャンの1回の放射線量は6.9ミリシーベルト。一度に大量の放射線を浴びた方が体へのダメージは大きい。放射線業務に従事する人の年間上限は50ミリシーベルト。宇宙飛行士の若田光一さんは2009年に4カ月半国際宇宙ステーションに滞在した際、約90ミリシーベルトの線量を受けたと見積もられている。

【安定ヨウ素剤】
 放射性物質の一種であるヨウ素131が体内の甲状腺に取り込まれるのを防ぐ薬。体内被曝による甲状腺がんを防ぐ効果がある。あらかじめ吸い込むことが予想される場合に予防的にのんだり、吸入後に治療的にのんだりすることがある。ただし、一時的に副作用で甲状腺機能が低下する可能性もある。成人は甲状腺がんになる恐れがほとんどないことなどから、原子力安全委員会によるヨウ素剤予防投与の方針は、40歳未満の人を対象として、1回のみの服用としている。また、ヨウ素過敏症の人などは服用してはいけないとしている。


放射性物質 どう防ぐ 読売新聞
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=38048
まず建物内へ 皮膚露出避け避難 汚染後は除染 鈴木元・国際医療福祉大クリニック健康管理センター長
 福島第一原発で、1号機に続き、3号機でも水素爆発が起きた。健康への影響はどうなのか? どう対処したら良いのだろうか? 放射線災害に詳しい鈴木元(げん)・国際医療福祉大クリニック健康管理センター長に聞いた。

Q 水素爆発が起きると何が心配なのか?
A 原子炉は格納容器に覆われ、さらに周りに建屋があった。爆発は、原子炉を冷却した際に生じた水素が建屋に充満して起きた。爆発と同時に、原子炉から漏れ出た微量のヨウ素やセシウムなどの放射性物質が飛び散る可能性もある。

Q 放射性物質に触れることで被曝(ひばく)が起きるのか?
A その通り。病気の診断でも、CT(コンピューター断層撮影)などの検査を受けると微量の放射線を浴びる。今回のケースは放射線そのものではなく、放射線を出す物質が周囲に飛び散る危険がある。こうした物質が皮膚や衣類に付着し、物質が出す放射線を浴びることを外部被曝、放射性物質が口や皮膚の傷口などから体内に入り、体の内側から放射線を浴びることを内部被曝という。

Q 建物の中にいれば安全なのか?
A どの程度、放射性物質が飛散しているかによるが、外にいるよりは、家の中にいた方が被曝を抑えることはできる。屋内退避と言われたら、窓やドアをしっかり閉め、換気扇はつけないなど外気を遮断する。

Q 避難で外に出なければいけない時は?
A なるべく皮膚の露出を防ぐ服装をし、帽子をかぶり、鼻や口は湿らせたタオルやマスクで覆う。避難所に着いたら、まず、衣服や体に放射性物質が付着しているかどうかを検査する。汚染が確認されたら、付着した放射性物質を落とす除染をす
る。

Q 除染の方法は?
A 衣服を脱ぐ、ぬれたタオルでふきとる、シャワーを浴びるなどの方法がある。どの方法をとるかは、避難所の体制や、汚染の程度に応じて専門家が判断する。脱いだ衣服は、ビニール袋に入れて口を縛っておく。

Q 除染を受けた人の近くにいても大丈夫?
A 放射性物質が除去されているので問題ない。除染を受けた人は普段通りの生活をして大丈夫だ。

Q 食べ物は?
A 外に置いてあった食べ物は放射性物質が付着している可能性も残る。十分洗い流せば良いが、控えた方が無難だ。室内にあったものはまず、問題ない。

Q 雨や雪が降ったら?
A 屋内退避や避難を求められている地域では、雨や雪に放射性物質が含まれている可能性があるので、外出は控える。やむを得ず外出する際は、避難の時と同じ注意を心がけ、極力短時間で済ませる。

Q どの程度被曝したかを知ることはできる?
A 被曝線量は、染色体の分析や症状、血液検査、内部被曝を測定する全身計測装置などを調べて総合的に評価する。
 ただ、染色体の分析ができる専門家や、全身計測装置は非常に少なく、個人の希望で実施はできない。1999年の東海村臨界事故では、現場で作業をしていた重症患者や、一定以上の被曝の疑いが高い住民らに限り行われた。
 原発からの距離や、どこにいたか(屋内か屋外か、屋内なら木造かコンクリートか)、いつ、どこへ移動したかなどから推定する方法がある。念のため、行動記録をつけておくと良い。


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[ひらめき] PADM(パダム):遠位型ミオパチー患者会へのご協力お願い [ひらめき]

    遠位型ミオパチーという病気をご存知でしょうか? 
    筋肉そのものに原因があって、筋力が低下する「ミオパチー」といわれる疾患の中で治療法が全くなく、
    体幹部より遠い部分から徐々に筋力が低下していく非常に重い筋肉の進行性難病です。
    100万人に数名といわれる希少疾病ですが、2008年に「遠位型ミオパチー患者会」が発足しました。
    この患者会のみならず遠位型ミオパチーという病気をより多くの方々に認知していただき、一人でも
    多くの方々に賛同していただき、患者会の目標を達成することが目標です。その一つに「難病認定」
    があります。この「難病認定」のためには「署名活動」が必須であり、皆さんのご協力が必要です。
    宜しくお願いいたします。        
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