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検査の標準化 vol.4(2000年投稿文) [Tea-break]

(5) 検査部門の存在意義をアピ-ルする為には?
 現業務についての整理についてはマニュアルの作成が非常に重要なポイントとなります。良質なマニュアル作成のためには現業務の洗い出しや整理などが必須事項であるからです。そのマニュアルは、①検査科危機管理、②検査科運用、③物品管理、のように分類されると思います。ただし、ここで述べる危機管理マニュアルは広義で、その中には2000年問題で作成された内容(たとえばライフライン関係)や感染予防対策マニュアル、医療事故防止マニュアルも包括されます。
 現在検査科を取り巻く情勢は非常に厳しいものとなっています。そのような情勢の中で我々自身が施設内における存在意義を高め、また外部に対し積極的に情報発信、すなわちアピ-ルする必要があります。存在意義を高めるための具体的方策としてはすでに述べたことですが、あくまでも現業務の見直しであるとか拡充であるとか、そういったレベルのものであることは事実であり、新しい取り組み内容の立案なども必要なのではないでしょうか?
 さて、検査部門の存在意義を強くアピ-ルするためには何を重点課題として取り組んでいく必要があるのでしょうか? 具体的な内容をあげ簡単な説明を加えてみます(方策については前述のとおりです)。

① リスクマネ-ジメントの強化
 連日のようにマスコミ等で取り上げられている医療事故防止や、院内感染防止について根本からの対策を取る必要があります。それらは病院の収益として計上されない、いわば非採算部門ではありますが、医療の質を向上させるためにも必要不可欠なものです。
② 検査報告の迅速化
 自動分析部門の例をあげますと、外来患者の検査依頼に対して即日中はいうまでもなく待ち時間内に検査結果を提出できれば、検査結果を聞きに来るだけの無意味な再来を防ぎ、適切な治療を早期にできることとなります。また、その検査内容は日常検査と同等同質のレベルでないと意味がありません。
③ 臨床検査コンサルテ-ション業務への参入
 積極的に診療支援をすることであり、そのためにはデ-タの蓄積管理、EBM(Evidenced Based Medicine)導入、集積デ-タの解析、フィ-ドバックさせる窓口の設置などが必要となります。最終的には病理検査結果や画像診断とのデ-タの突合せをおこない広範囲なデ-タの集約、一元化が求められます。膨大な情報をいかに活用するか、またコンサルテ-ションをどのような方法でおこなうかはまだまだ不透明ではありますが、いずれこれからの臨床検査の中心を構成する業務となっていくのではないでしょうか?
④ 検査情報発信基地としての役割
 さまざまな情報を積極的に取り入れ、関係各部署に伝達することも非常に重要な我々の役目といえます。情報の収集については学会・技師会や、現在はインタ-ネットという便利な武器がありますのでそれらを有効に利用していくことが大切です。また収集した情報を検査部門のクロ-ズな情報としてかかえていても意味がありませんので、整理・解析し分かりやすい形で関係各部署に伝え共通の資産として運用していくことも我々の義務となってきているのではないでしょうか? その意味でも、組織内における情報管理部門への積極的な参入が必要です。
⑤ 企業会計にもとづいた財務会計システムとの連動
 独立行政法人化が目前に控えその運営には企業会計制度が導入されることとなっていますが、その中で財務会計システムの導入が本格化しています。財務会計システムと検査システムとは連動されるため、財務会計システムに導入可能な検査システムが必要となります。現在、多くの施設に導入されている検査システムは非常に多岐に富み、規格化・標準化に向けてプロトコルのみならずマスタ-もレベルに達していないと思われます。その標準化は独立行政法人後に取り組めば良いといったものではなく、いま取り組まなければ検査システム自体が取り残される、過激な言い方をすれば我々の意に反したシステムが構築される危険や病院検査室自体が消失してしまう状況にあります。そのためにも検査の標準化が急がれているわけです。
⑥ 輸血管理業務の一元化
 ここで述べる輸血管理とは輸血にかかわるすべての事項を含みます。いわゆる、輸血部や輸血管理室のことをさしますが、大規模施設では一元化はもはや当たり前となっています。しかし中小の多くの施設において一元化に向けて取り組みをされているとは思いますが、人員など困難な問題があり実現にはいくつものハ-ドルを越えなければ達成不可能ではないでしょうか? 
神戸における取り組みとして、院内LAN(Local area network)を利用し薬剤科と検査科が情報交換や検査デ-タの共有化をおこなうことで迅速な臨床への対応も可能となっています。輸血管理業務の一元化は、マンパワ-や場所を集約することが目標ではなく現状に合致した運用形態構築を目標とするべきであるのではないでしょうか。実務はそれぞれの部署で分業化をおこない、その情報を集約・整理し結果として一元化をはかる、いわば「バ-チャル輸血管理室」の構築を目標とし、できる限り安全な血液を患者さんにご提供することで我々の存在意義をあげることができるのではないでしょうか。
⑦ 緊急検査室の設立
 賛否両論はあると思いますが、まったく新しい観点からの取り組みを考えてみました。緊急検査は時間内についてはル-チン検査の一部として、時間外についてはオンコ-ルや当直制といった形式を取られている施設がほとんどであると思います。これは検査室の一部といった観点でのものですが、時間内外も緊急検査を取り扱う検査室として新設することができないでしょうか?まだ机上の空論にすぎませんが私案を述べたいと思います。
(基本構想)
 1. 検査科とは独立した部門であること。
 2. 時間内外全ての緊急検査に24時間対応すること。
 3. 輸血管理室を含めること。
 4. 配属されるスタッフは、救命業務が可能であること。
 5. 救急救命センタ-内もしくは、緊急(救急)外来室内に設置すること。
(部門構成内容)
 緊急検査室は、救急救命センタ-もしくは緊急(救急)外来診療部門に含まれる。
 救急救命センタ-もしくは緊急(救急)外来室の構成
 1. 緊急(救急)外来診療部門
 2. 緊急検査部門(病態検査、生理検査)
 3. 輸血管理部門(輸血検査室、輸血検査管理室、輸血運用管理室)
 4. 情報管理部門
 我々自身の職域を拡大し存在意義を高めるためにも抜本的意識改革をおこない、常に問題意識を持ちながら業務につくことが必要なのではないでしょうか?


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