検査の標準化 vol.2(2000年投稿文) [Tea-break]
2.自施設で何を取り組むべきなのか
前項では、標準化を推進しなければ国立病院・療養所等の検査室が崩壊しかねない現状について述べました。この項では「標準化」に向かって検査科内部で何を取り組んでいけば良いのかということを述べたいと思いますが、業務目標を明確化する必要があります。
【業務目標】
人員的、経済的観点から非常に困難な情勢に陥っている現状では、精度管理を含む日常検査業務において極力、無駄を省き、そのような中でいかにミスを少なくするかという努力が必要です。
また、情報開示に向けて平成12年6月27日に出された、「国立病院等における診療情報の提供に関する指針」にもとづき、検査内容、検査結果の提供に向けて、検査の標準化を推進しなければなりません。
そのほかに、検査室から他部署への情報提供などを含めた臨床検査コンサルテ-ション業務を具体化することは、今後の重点強化課題となるでしょう。
(1) 効率的、機能的業務であること(経済的、医療的)
経済的な側面、医療的な側面は相反することも多いと思われますが、現在の医療情勢の中では両面を求められています。そのためには業務の効率性、機能性を追求し、検査の質を落とさない業務改善が必要です。バリアンスの少ない良質なクリティカルパス作成のため、検査室として積極的な参画も求められます。
また、患者に対しての病態に応じた的確な検査指示がなされているか、重複した無駄な検査依頼がないのかなど検証することを支援していくことも、我々の業務ではないでしょうか。
(2) 医療過誤、事故を防止できること
各部署においてインシデントレポ-ト等を作成し、そのレポ-トが公式文書として通用しなければなりません。そのデ-タを蓄積・解析し、医療(検査)過誤・事故の原因追求をおこない、ミスを繰り返さないための運用マニュアル作成に結びつける必要があります(院内感染対策や輸血運用を含めて)。
(3) 臨床的価値の高い業務であること
検査依頼に対し正確かつ迅速に報告することはもちろんですが、デ-タに臨床的付加価値をつけて報告することも我々の業務に含まれています。具体的には、診断を決定し得るデ-タでかつ理解しやすいデ-タが要求されています。このような診療支援システム(コンサルテ-ション)構築のためには、検査デ-タの一元化をおこない、有効活用することが重要でしょう。
(4) 情報開示に耐え得る良質のデ-タを供給すること
政策医療の実施やカルテ開示、電子カルテ化に対し検査の標準化が求められていますが、標準化の前に検査デ-タの精度保証をしなければなりません。精度保証のためには、検査方法や精度管理の標準化が必要となります。精度管理手法や基準などは様々であり客観的判断は現状として乏しいともいえます。この客観的判断をする材料、すなわち基準を設定しなければなりません。
また、これらの検査デ-タは必要最低限でかつ標準以上のものが要求されます。
(5) 検査部門の存在意義を確立出来る業務内容であること
『医療法等の一部を改正する法律案の概要』において、「給食施設、臨床検査施設については、法律上の規制はそのままとするが、外部委託する場合の要件を緩和。〈省令〉」という一文が入っています。これは、平成12年10月1日より施行の予定となっています。中央検査部門の解体がますます具体化しようとしている情勢ですが、我々が病院の中で本当に必要とされているのか、また必要と認めてもらうためにはどのようにしたら良いのかと、かなりの難作業が予想されます。上記(1)~(4)の各項目を踏まえた上で、我々の本来業務を見直し新しい試みを取り入れていかないと、検査技師に将来はない!と断言できます。
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