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0517-642号 脂肪肝を知る(特にNASH) [kensa-ML NEWS 【特集】]


 今宵は検査当直です。やはり長距離?通勤から解放されること、普段は検査業務から遠ざけられている?のでお楽しみ。とはいえ溜りに溜まっている複数種類の仕事があるため余裕はありません。今宵はかなり頑張らないといけないのですが、元々現場人間のため、デスクワークは不向きですからやっぱり現場は良いですね(家内が怖くって帰宅拒否症となっているのでもありませんので念のため)。

 さて同じ現場でも私のところとは比べ物にならないくらい過酷な環境で作業をされている方々、本当に頭が下がる思いです。どこかの報道で見かけたのですが、東京電力側の発言で、被ばくによる死亡ではない、元々の病気が悪化したものだ、云々・・・本当にそんなことを言ったのかな?と思いつつ、あまりにもこの期に及んで責任回避というか、事実であれば私は許せないですね。被ばくではないけれど、持病があったかもしれないけれど、過酷な労働条件が生み出した明らかなる事故でしょう。現場で必死に働く方々やそのご家族の心情を思うとやるせない気持ちで一杯になります。管理的立場の方々は現場が働きやすい環境を提供するのも仕事のはず。基本をお忘れなのとちゃいますか?


天声人語 5/16 http://www.asahi.com/paper/column.html
 再び栗林中将にご登場いただく。映画「硫黄島からの手紙」の冒頭、指揮官として島に着いた中将(渡辺謙)が、部下をぶつ上官を制する場面だ。「兵隊には十分な休息を取らせるように。見たまえ彼ら、まるで月から来たみたいだ」
▼戦中、ガダルカナル島など南方戦線での日本軍の犠牲は、戦闘より飢餓と病気による衰弱が多かったという。補給や増援が途絶えたためだ。現場を大切にしなければ、どんな作戦も失敗する
▼まいど戦争に見立てるのは気が引けるが、福島の原発で続く激闘で、東京電力の協力企業が雇う60代の作業員が亡くなった。現場で働き始めて2日目、事故を収束させる総力戦で初の「戦死」である
▼倒れた時間帯に医師はおらず、遠方の病院に運ばれたそうだ。死因は持病というが、張り詰めた仕事は心臓に障る。病を押して働くには、使命感だけで語れぬ事情もあろう。東電社長の「日当」20万円は無理でも、危険に見合う報酬、救急態勢は必須だ
▼非常時を理由に、被曝(ひばく)などの安全ルールが緩まり、作業員の急募は中高年を軸に九州にも広がる。大阪の日雇い労働者は、「宮城でダンプ運転」の求人に誘われ、この原発で働いていた
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 今回の大震災では津波がかなりクローズアップされ、建物の損壊などはあまり話題に上っていないのが気になっていましたが、今回のアンケートで耐震化が不十分な現状を浮き彫りにしたようですね。私の所属する神戸医療センターは阪神大震災による被害は見た目、そんなになかったようですが、実は壁にひび割れがあちらこちらと入っていた状態で、恐らく同じような地震が再び発生すれば、今度は大惨事になる可能性が非常に高かった構造物でした。数年前に耐震工事を行いその危険性は回避されたものと思います。ただしその分、内部設備や機械などは大きな被害を被るかもしれません。よく出てくる耐震と免震、どのように違うのかご存知でしょうか?


「耐震構造」と「免震構造」
 
http://realestate.homes.co.jp/contents/hikkoshigakuen/cont01/04/
「耐震構造」
 建物の構造(柱や梁)自体が地震に耐えるような強度に造られているもの。地震で生じる揺れに耐えるように設計された構造のこと。 地震エネルギーがそのまま家屋に伝わるので、免震、制震に比べ地震時に壁や家具等が損傷しやすい。
「免震構造」
 建物と地盤との間に積層ゴムなどの特殊な装置を付け免震層を造ることで、地震力を建物に直接伝えないようにした構造のこと。 地震に強いだけでなく、揺れそのものを軽減することによって、室内の損傷などの被害を防ぐことができる。


 私の施設では残念ながら建て替えは出来ていませんので、基礎からやり直しの免震構造にはなっていません。以前九州のとある施設に見学に行った折、初めて免震構造というものを見せていただきました。コストがかかるというのも頷けるものでしたが、あれほどの設備があれば安心ですね。

 以下記事にもありますが、災害拠点病院そのものはある意味最後の砦とならなければならない施設であり、設備投資にあたっては公費助成が手厚くあってもしかりだと私は思うのですが。また経験上、水の確保はある程度可能ですが、非常用電源の確保は計画的に設備投資しなければできるものではないです。自家発電装置を確保すべきのような報道が目につきますが、もっと大きな問題は燃料の確保・備蓄だと思います。通常のボイラー設備における燃料(重油)を逆利用できるような経路を作っておくことも重要かと思います(神戸では整備されていたと思います)。

 食料や医薬品に関しては、以前在籍していた災害拠点病院でもある大阪医療センターのような設備、いわゆる駐車場の下が大きな備蓄庫となっている、のようなものが理想でしょうね。

 また折角病院そのものが大丈夫でも、そこまでの患者搬送や経路の確保が大問題であり、これを機に復興を含めた都市計画も災害を想定したうえでのものに切り替えていく必要がありますね。過疎地域への支援・対策も含めてヘリポートの整備も
さることながら、滑走路に転用できる道路建設など・・・当然のことながら復興構想会議で検討されているでしょうけど。


災害拠点病院、耐震に課題…読売新聞全国アンケート 5/16
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=40843
 東日本大震災で、岩手、宮城、福島3県にある災害拠点病院のうち耐震化が不十分だった病院は、例外なく地震による建物被害を受けていたことが、読売新聞の調べで分かった。
 全国では耐震化が不十分な拠点病院が約4割にのぼっており、耐震化の徹底が改めて求められそうだ。(医療情報部 針原陽子)
【「すべて耐震」6割どまり】
 調査は、全国609か所の災害拠点病院に質問票を送付するなどし、363病院(60%)から回答があった。うち東北3県では33病院中28か所(85%)が回答し、一部が耐震(免震)構造ではなかった9病院すべてが、「建物の被害があった」と答えた。
 その中で、岩手県釜石市の県立釜石病院(272床)では、本館の壁にひびが入り、246床が使用不可能に。入院患者200人以上を別の病院に移送した。
 宮城県大崎市の市民病院でも本館が使えず、一時は入院患者の受け入れ数が普段の6割程度に減った。鈴木安雄総務課長は「災害拠点病院としての役割を十分に果たせず、患者さんに申し訳ない思いだ」と話す。
 厚生労働省の災害拠点病院の整備基準では、耐震構造を求めているのは救急診療を行う棟だけだが、国は建物すべての耐震化が望ましいとして、整備費の補助を行っている。
 しかし、全国の363病院のうち、「すべての建物が耐震(免震)構造」と答えた病院は、225病院(62%)にとどまる。厚労省医政局指導課は「費用がかかるため強制はできないが、補助などを通じ、拠点病院の耐震化を後押ししていきたい」と話している。
 ただ、完全に耐震化されている19病院でも、9病院に被害があった。丸川征四郎・元兵庫医大教授(救急災害医学)は「本体は耐震構造でも、屋上の貯水槽や変圧器、建物のつなぎ部分は壊れることがある。これらも強化すべきだ」と話す。
【自家発電だけでは支障 非常電源CT、MRI使えず】
 非常用の電力については、ほぼ100%が自家発電装置を備えている。ただ、それで十分とは言えない。
 岩手医大の小川彰学長によると、同大病院では震災による停電時、自家発電だけではCT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)など大型の診断機器が使えず、複雑な手術はできなかった。
 小川学長は「もし停電が長く続くような大災害が発生すれば、災害拠点病院であっても高度医療はまったく行えない」と指摘、モデルとなる拠点病院への小型発電所の設置を提案する。
 一方、治療や洗浄などで大量に必要となる水の供給については、半数以上の病院が、停電時などでも使える受水槽などを備えていたが、「断水時や停電時は水が使用できない」と回答した病院も21か所あった。
【食料・医薬品の備蓄量、不十分】
 食料・医薬品の備蓄については、全国の8割以上の病院が、目安とされる3日分以上を被災前に備蓄していた。それでも、東北3県の約7割の病院が「被災後に不
足した」と答えた。 宮城県石巻市の石巻赤十字病院では、当初は物流の回復見通しが立たず、患者向け給食の品数を減らし、職員は1日1個のおにぎりに節約。備蓄食料3日分と給食用の米などで、救援物資が届くまで1週間ほどもたせた。
 岩手県立大船渡病院は、被災後、外来患者の薬の処方を最長1週間分に制限、その後さらに3日分に減らした。薬の供給が平常に戻ったのは4月以降だった。
 3県以外の病院では、7割以上が「現状の備蓄量では足りない」と回答。富山県の病院は「医薬品の在庫量は経営効率化のため極力抑えてきたが、大災害に備えて再検討が必要」という。ただ、備蓄の費用は病院負担のため、「国の補助が望まれる」(茨城県の病院)との意見も複数あった。
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 今日は特集記事の前に「税と社会保障」という私の苦手な分野の記事も用意していたのですが、あまりにも長編になりすぎるのもいかんかな?と思い、早速特集記事に移ります。今日は脂肪肝、その中でも特にNASHにスポットを当ててみました。

 びまん性肝障害を示す疾患には、皆さんよくご存じの急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変などがあり、脂肪肝もその中に含まれます。急性肝炎や慢性肝炎ではよく知られているウィルス性のもの、原因がまだあまり解明されていないものもある自己免疫性のもの、薬剤性のもの、など多種多様に存在します。今日はそのびまん性肝障害の中でも脂肪肝に注目し、その中でも特に近年、肝硬変やがんになりやすいのでは?とされ予後が不良といわれているNASH(非アルコール性脂肪肝炎)を取り上げてみ
ます。

 私自身、腹部超音波は約数万症例の経験がありますので、脂肪肝といわれる状態の患者さんは数えきれないほどの経験があります。ここで超音波検査を勘違いされている術者の方も多数おられるようですが、超音波検査で脂肪肝と確定診断できるものではありません。脂肪肝というのは病名(疾患名)であって、超音波診断名ではありません。超音波診断に加え、血液検査で肝障害を認め、さらに確定診断するためには病理組織学的診断にゆだねる必要があります。ですから超音波検査で可能な診断範囲は、脂肪が肝臓の中に浸潤しているのではないか?というあくまでも推定診断です(以下の記事、脂肪肝、知っておこうNaviから引用していますが、超音波診断の部分は私自身先ほどお話しした理由で私は納得できません。超音波診断が確定診断のような記載は誤りだと思います。)。

 まずは脂肪肝というものがどのようなものか、またその原因についてご説明します。


脂肪肝 知っておこうNaviから引用
 
http://shiboukan.style-xyz.com/
【脂肪肝とは】
 脂肪肝とは、肝臓、とくに肝細胞の中に中性脂肪が蓄積された状態です。
 肝臓は吸収された栄養分などから中性脂肪をつくる大切な働きをしています。中性脂肪は人間が生きるための大切なエネルギーで、肝臓はその一部を肝細胞の中に蓄えています。
 さまざまな原因によって肝細胞内で使いきれなくなった脂肪がたまると脂肪肝になります。つまり使われるエネ ルギーに比べ、作られた中性脂肪が多いのです。
 病理学的には「顕微鏡による標本観察において、100個の肝細胞中に30%以上の脂肪空胞が認められる場合」といわれています。
 脂肪肝は比較的若い方にも多い病気です。脂肪肝自体はすぐに生命にかかわるような重大な病気ではありません 。
 しかしアルコールが主な原因となっている人は、慢性肝炎から肝硬変症まで進行する場合もあります。またアルコール類を飲用しない人でも、まれに肝硬変症になるケースもあります。脂肪肝が起こるような状態は糖尿病・ 高脂血症・高血圧などの生活習慣病をもたらす危険な状態に近づいています。動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こす原因にもなります。
【脂肪肝──原因】
 脂肪肝の主な原因は「肥満」「アルコール」「糖尿病」 があります。
 中性脂肪の原料である脂肪・糖分・アルコールなどの摂りすぎなのです。この中で「肥満」と「アルコール」が 脂肪肝になる原因では70%を占めています。
 メタボリックシンドロームに該当するような人も、危険が高いことを十分認識してください。
●肥満
 食べすぎや偏食による栄養の摂り過ぎで、余分な脂肪 が肝臓に蓄積され発症します。
●アルコール
 アルコールの摂り過ぎは摂取カロリーの増加だけでな く、
 アルコール自体が「脂肪酸」となって肝臓に蓄積され中性脂肪に変化します。
●糖尿病・内分泌異常
 代謝異常によって脂肪肝が引き起こされます
●薬剤
 坑生物質やステロイド剤を長期間に服用することで発症することがあります。

 しかし飲酒をしないないからいって脂肪肝にならないと は限りません。
 心配されるのは「非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)」です 。原因は脂肪肝を刺激する活性酸素によるストレスによる過食や運動不足です。これにより肝臓に強い脂肪沈着があらわれて、活性酸素や異常なサイトカインによる炎症が起こるためです。
 この非アルコール性の脂肪肝が危険なのは、進行した場 合には「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH・ナッシュ) 」といわれる病気へと進む可能性があることです。最近では新しい生活習慣病として関心が高まっています。
 「非アルコール性脂肪性肝炎」の患者は肥満・高血糖・ 高トリグリセリド血症・高コレステロール血症になっている中高年の女性に多くみられるようです。脂肪肝の人の約10パーセントが、この「非アルコール性脂肪性肝炎 」に該当するともいわれています。
【脂肪肝──検査・診断】
●肝機能検査
 肝機能検査を行って肝臓に炎症などの異常がないかを診断します。
 他の病気の有無を確認するためにも必要です。GPT値が高くなるのが一般的な特長ですが、アルコール性の場合に はγ-GPTも高値になります。※GPTの基準値:6~37(U/l)
●超音波・腹部CT検査
 超音波検査(エコー)では脂肪肝は健康な肝臓より白く光って描出されます。
 一般的には右の腎臓と対比させ腎臓よりも肝臓が白く描出されるようなら脂肪肝です。
 腹部CT検査(コンピューター断層撮影)では超音波検査とは異なります。
 CT値は低く色調は暗くなり脾臓との濃度差は逆転しま す。CT値の正常値は60位ですが、脂肪肝の場合は50以下となり、数値が低くなるほど程度が強いことになります。


 脂肪肝について記載している別のサイトもご参照いただければと思います。
 脂肪肝 
http://www.naoru.com/siboukan.htm


 さて本日のメイン記事、NASHについて記載している記事をご紹介します。引用元は、日経メディカルオンラインの特集記事です。


日経メディカル2011年5月号「トレンドビュー」(転載) 5/13
 メタボ由来の肝炎に注意 脂肪肝から発症し肝硬変・肝癌に至る
 
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201105/519674.html
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201105/519674_2.html
 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201105/519674_3.html
 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)由来と考えられる肝癌死が増えている。NASHは生活習慣病を基盤に発症し、これといった症状もなく進行する。血小板減少や線維化マーカーの上昇が早期発見のカギだ。
 日本では、1990年代後半から非B非Cの肝癌死が徐々に増加し、現在、B型肝炎ウイルス由来の肝癌死亡数とほぼ同じレベルになりつつある。これは広島大疫学・疾病制御学教授の田中純子氏の調査結果だ。この肝癌死の原因として田中氏は、「自己免疫性肝疾患、未知のウイルスなども否定できないが、最も関連が疑われるのは非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis)」とみる。
【脂肪肝の放置で肝硬変】
 専門医に送られてくるNASHの典型例は、「毎年の健診で脂肪肝を指摘されながらも放置していたところ、今回の健診で突然肝硬変が見つかった」というものだ。
 NASHとは、アルコール性肝炎と似た病理学的所見を示すが、飲酒量が多くない(エタノール換算で1日20g以下)人で生じる肝炎だ。アルコールを原因としない脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fattyliver disease)
と称されている。NAFLDは、炎症や線維化を伴わない単純性脂肪肝と、炎症や線維化を伴うNASHに大別され、単純性脂肪肝からNASHへの進行も確認されている。NASHは10年で20~30%が肝硬変、肝癌に進展する。進行したNASHの予後は不良だ。
 高知大消化器内科教授の西原利治氏も、「自己免疫性肝疾患の発症頻度に比べてNASHの発症頻度は2けたほど高く、様々な状況証拠から非B非Cの肝硬変・肝癌の多くはNASH由来だろう」と推測する。
 厚生労働省の研究班としてNASHの病態解明と診断・治療に関する研究を取りまとめている大阪府済生会吹田病院長の岡上武氏は、「NASH患者は、肝癌よりも肝硬変で死亡する頻度が高い」と言う。肝硬変による死亡数も含めると、NASH由来の肝疾患死が、統計上の数字として表れないままに急増している可能性が否定できない。
 西原氏らが2000年に高知県で行った調査結果から、国内のNAFLD患者は約1000万人、そのうちNASH患者は100万人以上と推定されている。一方岡上氏は、研究班の調査結果を踏まえ、「NAFLDに占めるNASHの割合はさらに高く2割以上であり、患者数は200万人を超えるのでは」と推測する。
 ちなみに米国では、人口の34%がNAFLDで、そのうちの10%がNASHといわれ、国民病の一つとなっている。国内の患者数も今後、さらに増えそうだ。
【生活習慣病を基礎に発症】
 NAFLDやNASHの病態に関しては、まだ分からないことが多いが、NAFLDは、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧、それらを合併したメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を基盤として発症することが知られている。そして、酸化ストレスなどの誘因により、炎症や線維化が生じNASHが進行すると考えられている。
 特にインスリン抵抗性は、脂肪酸のβ酸化を促進し、酸化ストレスの原因となる。脂質代謝異常に伴う酸化ストレスもNASHの進行に関与する。そのため専門家は、多くの糖尿病患者がNASHを合併していると語る。岡上氏らが糖尿病患者5583人を対象に行った調査では、糖尿病患者の少なくとも3割が肝障害を持ち、そのうち8割以上がウイルス感染を伴っていなかったという。
 「体重や血糖のコントロールが不良な糖尿病患者では、NASHが進行し肝疾患で死亡するリスクが高い」と岡上氏は注意喚起する。実際、「糖尿病患者の死因の第1位を肝疾患が占めており、8人に1人が肝疾患で死亡している」(同氏)のが現状だ。
 加えて、NASHと高血圧との関連も注目されつつある。非高血圧成人の2割がNAFLDであった一方で、夜間血圧が下がるdipper型高血圧患者では4割、夜間血圧が下がらないnon-dipper型では8割がNAFLDとの報告が、08年にイタリアから出された。
 高血圧患者で活性化されるアンジオテンシンの受容体が肝臓で線維をつくる星細胞上に存在するため、血圧が高いと肝の線維化が促進されやすくなる。そのため、高血圧患者もNASHを合併しやすくなると考えられている。
 さらに、慢性腎臓病(CKD)患者でもNASHの合併頻度が高いことが報告されている。
【NASHの早期発見法】
 NASHは進行性で肝疾患死の原因になるため、「たかが脂肪肝」と油断せず、脂肪肝に紛れ込んでいるNASH患者をできるだけ早期に拾い上げる必要がある。しかし、NASHは通常の検査では脂肪肝と見分けがつかない。健診受診者の3~4割が肝疾患を指摘されている現在、それらの患者を全て専門医に送るわけにもいかない。
 岡上氏は、「超音波検査やCT検査で脂肪肝と診断した患者で、ALT高値、血小板減少、線維化マーカーの上昇が見られた場合には専門医に送ってほしい」と強調する。血小板は、肝臓の線維化に伴い減少するため、17万/μL以下では線維化が進展している可能性があるという。
 NASH患者の典型例として、兵庫医大肝胆膵科教授の飯島尋子氏は、「ALTは高くても60IU/L程度の場合が多い」という。ALT値が正常値を少しでも超えた段階で注意が必要といえそうだ。また、ALT値だけでは見落としのリスクがあることも覚えておきたい。
 さらに岡上氏らは、血液検査でNASH疑い例を見分けるための簡便なスコアも作成中だ。血清中のフェリチン値やインスリン値(IRI)、線維化マーカーの一種である4型コラーゲン7Sの数値をスコア化し、NASHを鑑別するというもの。同スコアが臨床応用されるようになれば、NASH疑いの患者選別がより精度良く行えそうだ。超音波を用いたNASHの早期診断法も検討されている。
【病態に合わせた治療法を】
 NASH患者の治療の基本は、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの合併症のコントロールだ。
 さらに、「肝臓に鉄が過剰にたまっている症例には、鉄制限食や瀉血が有効」と岡上氏。加えて西原氏は、「体重を3kg落とすだけでALT値は改善する」と、生活指導の重要性も強調する。また、NASHを予防するためにも単純性脂肪肝患者への食事・運動療法の指導も重要という。
 一方欧米からは、これまでピオグリタゾンやビタミンEのNASHに対する有用性が報告されている。ただし、ピオグリタゾンは欧米ではNASH治療薬として認められていない。日本でも同様だが、「体重コントロールができる糖尿病合併患者には処方している。実際、肝機能値は改善する」と西原氏は評価する。
 さらに、欧米では複数の新規治療薬の治験が進行中だ。「生活習慣病の多くは治療薬の登場とともに疾患の知名度が高まった。NASHも、新薬の登場とともに生活習慣病の一つに加わるだろう」と、西原氏は予測する。
⇒ 続きはこちら


 今宵は検査当直で空いた時間に溜まっている仕事やメール配信を、と考えていたのですが、外来救急や手術後の検体が多く出て、一息つけたのは日付変更の直前でした・・・検査そのものは楽しいのですが、溜まっている仕事のことを考えると、あーあ(T_T)・・・です。でも夜は長い・・・


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コメント 4

もーもー

お疲れ様です    現場向きと、、机向き の方がいますからね・・・・・
現場が  楽しい事は  一番ですよね・・・・・・

人間  金じゃーーないんだよね    健康第一  ですよね・・・
by もーもー (2011-05-17 08:13) 

Koji

もーもーさん

コメント有難うございます。
私の場合明らかに机向きではないですが、机のお仕事も大切にしないと・・・現場の仕事は目の前のものを片付ける、机のお仕事は形のないところから作り上げる・・・それぞれ面白味はあるのですが、私は椅子にじっと座っていられない性分なので・・・
お金も大切ですが、命あっての・・・ですね。
by Koji (2011-05-17 09:37) 

お水番

ご訪問ありがとうございます。
こちらの記事、勉強になります。
by お水番 (2011-05-17 09:39) 

もーもー

うんうん  命   ですね・・・
by もーもー (2011-05-18 08:49) 

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