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臨床検査に触れていただくコーナー④ ~検査データ標準化に関わること1~ 2010年7月作成 [Gam's Channel]


【はじめに】
 地球温暖化の影響か、ヒートアイランド現象の影響か、今年は全国的に酷暑となり熱中症によりお亡くなりになられた方が後を絶ちませんでした。この号が発刊される頃には残暑厳しき折か、ひと段落ついている頃かは知る由もありませんが、季節に関わらず体調管理をきちんと行うには快眠、快食、快便とも言われます。くれぐれもご自愛ください。

 さて本コーナー①~③は、当院臨床検査技師長の立場として検査科のご紹介から新糖尿病診断基準などのトピック的なことをお伝えしてまいりました。今号からは、政策医療臨床検査連絡会(以下連絡会)事務局代表としての立場からお話を進めてまいりたいと思います。政策医療に関しては一般の方々のみならず、我々グループ施設のスタッフにおいてもなかなか直接的に目に触れることはできず、少々聞き慣れない言葉もあるかもしれません。今号は紙面の関係上、政策医療に関するご紹介程度の内容となりますが、出来る限りご理解いただけるよう努めますのでどうぞ宜しくお願いいたします。


【政策医療とは】
 政策医療とは、国が医療政策を担うべき医療であると厚生労働省が定めているものです。右図のように現在19医療分野があります。我々の属する独立行政法人国立病院機構や、本年4月より独立行政法人化した国立高度専門医療研究センターなど全国165施設においては、民間病院などに任せるだけでは不十分と考えられ、難病などを含む分野に特化した医療を提供するだけではなく、臨床研究、教育研修、情報発信を行っていくことを目的とした政策医療を実践しています。


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 神戸医療センターではその19分野のうち、がん、循環器病、成育医療、骨・運動器疾患、の分野を担当する施設となっています。もちろん政策医療分野以外の診療においても患者様からの信頼を得られるよう、常に医療の質向上を目指し日々努力を重ねています。

 政策医療19分野においては、それぞれの分野でネットワークが構築され、ネットワーク構成施設間における活発な情報交換、データの共有化などが行われています(政策医療ネットワーク)。


【政策医療ネットワークの問題点と課題(特にデータの有効活用といった観点から)】
 各政策医療ネットワークにおいては、臨床データや研究データの蓄積を行い構成施設で有効活用できるよう、インターネットによるネットワーク環境が整備されています。しかしながらそのデータは各政策医療ネットワーク内のみで利用されているケースが多く、各ネットワーク間における共同利用を積極的には活用されていない状況であると思われます(例:AネットとBネットはデータの相互利用がほとんど無い等)。さらに各ネットワーク内データの互換性についての議論はほとんどなされていない状態であり、各ネットワークの所有する各種データが共有資産として有効活用できるかどうか判断がつかないのが実情です。そのため非常に有益かつ貴重なデータが国家資産として有効活用されるように環境整備を行うことが火急課題となります。その課題に取り組むためには、まず臨床検査データなど数値的なデータを有効活用できる状態にするため(標準化作業)、国立病院臨床検査技師協会が特に生化学項目を中心とした標準化事業を立ち上げ全国的な検査データの統一化を推進するとともに、連絡会においては標準化が非常に遅れている項目について全国調査を平成14年度から実施し、その結果に基づき関連学会・団体に対して警鐘・提言を行っているところです。


【臨床検査データの標準化が叫ばれる背景】
 「標準化とは」広辞苑からの引用ですが、①標準に合わせること ②工業製品などの品質・形状・寸法を標準に従って統一すること ③これにより互換性を高めるもの とされています。

 現在、臨床検査データは医療の中でも特に客観性の高いものとして利用されており、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づいた医療)を実践するためには、無くてはならない必須のものとして位置付けられていることは、皆さんも良くご存じのことと思います。しかし20数年以前からこの臨床検査データについての施設間差が再々取り上げられてきておりますが、臨床検査データの標準化が具体化してきたのは、生化学検査を中心とした検査項目においてこの十年間のこととなっています。

 では臨床検査データを標準化することにより、どのような効果が得られるのか、そのことについて触れてみたいと思います。
 前述したEBMの根幹でもある臨床検査データを標準化すなわち互換性を高めることにより、重複検査を削減することにも繋がるでしょうし、治験・研究分野など比較検討する際に大規模研究が可能となるなど様々なメリットが発生します。更に互換性を向上させることにより、検査データの品質が均一化し向上することも容易に想像できます。


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 当院のような国の施策である「政策医療連携」と地域に根差した「地域医療連携」の両側面を持つ施設においては、国立病院機構などのグループ施設との互換性はもとより、地域の医療施設との互換性を向上させていかなければなりませんが、全ての検査項目が院内で実施されているわけではないことは良くご存じのことと思います。かなり昔は検査の種類も数も少なかったため、自前で検査を行っている施設が多かったのですが、検査方法や内容が多様化するとともに、医療経済の破綻などと叫ばれコストパフォーマンスを強く求められる時代背景となってきていますので、採算性の合わない検査は外部に依頼を行う、いわゆる外部委託検査に依存する割合がますます拡大している状況となっています。ですから病院施設だけではなく外部委託検査業者に対する互換性や検査精度を含めた品質管理を行わなければならない状況となっています。


スライド5.jpg


 現在生化学免疫分野の主要項目については、かなり標準化が達成されている状況ですが、標準化に程遠いと思われる検査項目に注目しその現状がどの様になっているのかを知ることが非常に大きな課題となります。私が事務局を務める連絡会(H14年発足)では、標準化に程遠いと思われる検査項目(ホルモン、腫瘍マーカー、糖尿病関連項目、循環器疾患関連項目など)に着目し、外部委託検査の状況把握とともに過去3回の全国調査を実施してきております。この内容につきましてはまた別の機会にお話させていただきます。


【後記】
 今回は一般的にはあまり触れられない政策医療という分野をご紹介しました。

 近年チーム医療なる連携医療の推進が叫ばれ、診療報酬上にも大きな影響を及ぼしておりますが、連携医療を推進する第一歩は理解し合うことにより強固な協力体制を構築することであると思います。理解していただくためには、様々な情報を共有化し有効活用することが必須であり、そういった思いを込めて今回のような内容としました。まだまだ断片的かつ消化不良的な内容ではありますが、今後継続して情報発信を続けてまいります。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。なお最新の医療情報提供をサイトの方でも行っておりますので、宜しければご参考までに。
http://koji-arai.blog.so-net.ne.jp


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[ひらめき] PADM(パダム):遠位型ミオパチー患者会へのご協力お願い [ひらめき]

    遠位型ミオパチーという病気をご存知でしょうか? 
    筋肉そのものに原因があって、筋力が低下する「ミオパチー」といわれる疾患の中で治療法が全くなく、
    体幹部より遠い部分から徐々に筋力が低下していく非常に重い筋肉の進行性難病です。
    100万人に数名といわれる希少疾病ですが、2008年に「遠位型ミオパチー患者会」が発足しました。
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    多くの方々に賛同していただき、患者会の目標を達成することが目標です。その一つに「難病認定」
    があります。この「難病認定」のためには「署名活動」が必須であり、皆さんのご協力が必要です。
    宜しくお願いいたします。        
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