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臨床検査に触れていただくコーナー① ~研究検査科のご案内~ 2009年7月作成 [Gam's Channel]


【ご紹介】
 平成21年4月より国立循環器病センターからまいりました臨床検査技師長の新井(あらい)と申します。この広報誌では、皆さんにおなじみとは言いがたい「臨床検査と臨床検査技師」についてご紹介できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずはどのようなメンバーで業務を行っているのかのご紹介をさせていただきます・・・当センター研究検査科(臨床検査部門)は、研究検査科長(病理診断医)1名と臨床検査技師13名、合わせて14名で組織構成されており、院内各部門と連携を取りながら日夜臨床検査業務に励んでいます。

 さて皆さんは「臨床検査」とはどのような業務を行っているのかご存知でしょうか?

 「臨床検査」の関わる範囲は非常に広いのですが、大きく二つに分けられます。まず一つ目は患者さんからいただいた検体、すなわち血液、尿、便、喀痰、組織などの検査を行う「検体検査分野」、二つ目は心電図や超音波など患者さんに直接接し検査を行う「生理検査分野」があります。本館1階部分では皆さんにもおなじみの尿検査、便検査(合わせて一般検査といいます)とともに心電図検査を行っており、本館2階南部分ではその他多くの臨床検査(血液検査、輸血検査、病理検査、細菌検査、超音波検査など)を行っています。

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 このような多くの分野に分かれている臨床検査部門ですが、生理検査分野と一般検査など皆さんに直接お会いする分野以外、なかなか目に触れることの少ないのが残念ながらの現状です。この広報誌を通じて皆さんに「臨床検査と臨床検査技師」に触れていただき、私どもから有益で的確な情報をお届けできればと思います。多くの方々から「臨床検査と臨床検査技師」に対し、ご意見、ご感想、ご要望などをいただければ幸いです。

【ちょっと雑学:基準範囲と正常範囲】
 皆さんは、「基準範囲」と「正常範囲」という言葉を色々なところで耳にされたことがあると思います。似て非なるもの。この二つの意味の違いをご存じでしょうか?

 「基準範囲」の求め方は、問診を行い健康・正常と思われる方の検査をまず行います(下図参照)。その結果の平均値を取り、平均値を中心に左右合わせて95%の方々のデータ範囲を「基準範囲」と呼びます(下図のような分布を正規分布と呼びます)。したがってグラフの両端2.5%+2.5%=5%の方々が基準範囲外となってしまいます。ですから「基準範囲」と「正常範囲」がもしも同じものであるとすれば、基準範囲外の5%の方々はすべて異常と判断されることになります。
さて基準範囲を外れた方々は本当に異常なのでしょうか?

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 その答えを述べる前に、検査データには「生理的変動」というものがあるということについてご説明いたします。ヒトには固有のリズムがあり、ヒトにより異なる、すなわち「性質」というものが存在します。また一日の時間の中や季節などで変化を示すものや、運動をしたり食事をしたりすることで変化を示すものがあります。よく知られるところでは、正常な方において血糖などは食事をすると約1時間後に最高値となりますが、約2時間後には食事前の値に戻ります。 ですから血糖検査などは食事をする前に採血を行わなければ安定した検査データは得られません。

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 日常生活を送る中で検査データは刻々と変化していますので、採血を行う時間によってはかなり変動を認める項目も多く、容易に基準範囲を外れることは想定できます。ちなみに先ほどの血糖で例を示しますと、空腹時における血糖の正常域は110mg/dL以下とされておりますが、正常の方でも食事後1時間後には140~160mg/dLにもなってしまいます。

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このように「基準範囲」を「正常範囲」に置き換えるのは間違いであり、そもそも多数集団の中で「正常範囲」と呼ぶことは危険だと言えます。「基準範囲」はあくまでも単純に統計学的処理を加え算出した目安ということとなります。
また「正常範囲」とは、性別や生活パターン、環境、嗜好など様々な要因により変化するその人固有のものであり生理的変動が加わった、言わば「性質」とも言えるものです。ですから「正常範囲」は万人に共通のものではありません。

【最後に】
 本号では、臨床検査部門である「研究検査科」のご紹介と、似て非なるもの:「基準範囲」と「正常範囲」の違いについてご説明しました。今後、このような形で臨床検査技師からさまざまなお話をさせていただきたいと思います。なおご意見、ご感想、ご要望などございましたら、遠慮なくお申し付けください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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コメント 2

くま・てーとく

一昔前は基準範囲の意味で正常範囲という言葉を使ってましたよね。なので、今でもたまにうっかり正常範囲と言ってしまいます^^;
いろんな言葉の言い方が変わって(より適切な言い方に改良されているわけですが…)、呪文のように覚えていた者にとっては、頭の回路がスムーズに切り替わりません…(汗)
いまだに、「ALTってGOTだっけ?GPTだっけ?」と考え込んでしまいます…^^;
by くま・てーとく (2011-01-07 12:48) 

Koji

くま・てーとくさん

ご来訪&コメント有難うございます。
現在検体検査分野では、この正常範囲に対してのコメントをどれだけ現場技師が出せるのか、医師に対してコンサルテーション出来るのか、がカギとなっている気がします。
スイッチポンで結果が出てくる自動分析機ではありますが、どのように過程で結果を出すのか、また、どのように結果を報告するのか、が重要なテーマですね。
当たり前のことが当たり前に出来ていない現実に愕然とすること、多々あります。
by Koji (2011-01-09 08:00) 

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