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1021-604号 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには [kensa-ML NEWS 【特集】]


 もう既に10月も後半戦。あっという間に21日です。記事の方も後手後手で、なかなか最新のものに追い付いていない状況ですが、何とか追いつくように頑張りますので、ご支援を宜しくお願いします。
 
http://koji-arai.blog.so-net.ne.jp/

 さて一昨日に引き続き、今日も特集です。その前に少し気になった社説や記事をご紹介します。私自身介護保険制度についての知識は本当に乏しく、お恥ずかしい限りなのですが、関連記事を自身の勉強のために取り上げてみました。

 自身もいずれお世話になることでしょうし、それ以前に私自身の両親もこの問題に直面しています。不平等制度だな?と思うのは、高齢化した夫婦が核家族化により二人きりになり、どちらか一方が寝たきりなどになり介護が必要となるケース。どちらかが健在であれば、いくら高齢であろうとも認定は受けられ難いんですよね。報道などで良くいたたまれないような事件が発生するのは、そのような背景があり、もう少し緩和されるべきだと思います。しかしながら悪意を持って申請する方もいますので、本当に介護が必要な方とそうでない方との線引きが非常に難しいですね。

介護早分かりガイド: http://www.wam.jp/kaigo_guide/

介護保険とは?: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA
 介護保険(かいごほけん)は、介護を事由として支給される保険。公的介護保険と民間介護保険があり、民間介護保険の保障内容には介護一時金や介護年金などがある 。介護保険支給対象となる介護サービスについて基準に基づき計算された報酬が介護報酬である。
 狭義には、社会の高齢化に対応し、2000年(平成12年)4月1日から施行された日本の社会保険制度。財源は、被保険者の納付する保険料だけでなく、国・都道府県・市町村による負担があるという特徴を持つ。
【概要】
 高齢化や核家族化の進展等により、要介護者を社会全体で支える新たな仕組みとして2000年4月より介護保険制度が導入された。日本の制度は、おおむねドイツの介護保険制度をモデルに導入されたと言われている。介護保険料については、新たな負担に対する世論の反発を避けるため、導入当初は半年間徴収が凍結され、2000年10月から半額徴収、2001年10月から全額徴収という経緯をたどっている。
 制度の目的の一つに社会的入院の解消があり、在宅介護(居宅介護)を促す意図があった。実際には24時間サービスを提供する介護職の不足などから重度要介護者の在宅介護は困難なことが多い。また、年々増える要介護高齢者の増加もあり、さしあたり「預けられる」入所施設の不足が、制度導入以来解消されていない大きな課題となっている。
 介護サービスの利用にあたって、まず被保険者が介護を要する状態であることを公的に認定(要介護認定)する必要がある。これは、医療機関を受診した時点で要医療状態であるかどうかを医師が判定できる健康保険と対照的である。要介護認定は認定調査の結果をもとに保険者によって行われ、要支援1・2、要介護1?5の7つの段階に分けられる(法律上、要支援認定と要介護認定は区別され、要支援の場合、利用できる介護サービスが限定される)。これをもとに、どのような介護サービスを組み合わせて利用するかコーディネイトするのが介護支援専門員である。
 具体的には、要介護者の家族にとって、実際に介護がはじまるまでに、慣れぬ者にとっては煩雑な事務手続きと、数週間の手続き期間が必要である。介護保険を利用したいと思う者またはその家族は、まず自治体に対し、介護保険制度の要介護者として認定してくれるよう書類を提出しなければならない。その書類には担当医師の証明書を添付することが必要である。その書類に基づいて調査員が家庭訪問したり、介護の必要な本人に面接したりして、実際に介護を要することを確認し、調査報告書を認定委員会に提出する。認定委員会は通常複数の医師によって構成されている。認定委員会によって、要介護の度数(たとえば要介護3)や介護保険負担限度額の認定が行われ、「要介護3」などと記入された介護保険被保険者証が発行される。それを持って、デイケアや訪問看護を行っている施設へいけば、ケアマネージャ(介護支援専門員)が介護プランをたててくれる。それによって、やっと介護保険を利用した介護が受けられる。実際に介護が開始されるまでに家族が接触する、市町村の保健師、医師、市町村の調査員、介護施設(介護サービス事業者)のケアマネージャーのどれも直接に介護に携わるわけではなく、介護にたずさわるのは介護施設(介護サービス事業者)の介護士である。
 風邪を引いたとき健康保険証を持って病院へ行けば、ただちに健康保険を利用した医療が受けられるのと違って、いきなり介護施設(介護サービス事業者)に行っただけでは、介護保険を利用した介護は受けられない。市町村に要介護者として認定してもらうことが必要で、そのような制度により保険料の無駄使いを防止している。
 介護サービス事業者については、厚生労働省により開設基準が定められており、都道府県から指定を受ける必要がある。介護サービス事業者は、1割負担を利用者から徴収し、残りの9割の給付費を各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会へ請求し、支給される。国民健康保険団体連合会は9割の給付費を保険者から拠出してもらい運営する仕組みとなっている。


社説:介護保険改革 地域の高齢者を守れ 毎日新聞 10/19
 
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101019k0000m070128000c.html
 介護保険ができて10年、さまざまな問題はあるが世界の中でも進んだ高齢化を支える制度として注目されている。だが、団塊世代が介護保険の利用者となっていくこれからの10年はまさに正念場だ。現在社会保障審議会で制度改革に向けた論議が大詰めを迎えている。持続可能な制度として発展できるかどうかは今回の改正にかかっているといっても過言ではない。
 まずなんと言っても財源だ。制度発足時の総費用は3.6兆円だったが現在は7.9兆円。25年には24兆円が必要になると試算されている。このため要介護認定の区分を簡素化し、比較的軽度の人を中心に利用限度額を制限する方向で議論されている。急激に増えていく重度者の介護サービス確保を優先すべきだというのである。たしかに調理や掃除など日常生活の援助は公的介護保険ではなく、隣近所の助け合いでまかなうべきものかもしれない。
 ただ、これから爆発的に高齢化が進む都市部ではコミュニティーそのものが崩壊している所も多い。生活援助がなければ要介護状態へ早期に移る人が多くなり、結局は財源負担にはねかえるとの批判もある。地域の実情に合わせたサービス整備についても考えるべきではないか。
 民主党政権になってから介護現場で働く職員の処遇改善が行われたが、他職種に比べて賃金水準はまだまだ低い。介護需要が急増しつつある都市部での人材確保は景気が回復するに従って難しくなるばかりだ。介護を魅力のある産業に育て、良質な人材を大量に養成していくためにも財源確保は待ったなしである。今すぐ取り組まなければ高齢化のスピードに追いつけないだろう。
 介護保険料は1割の利用者負担を除いて税と保険が50%ずつ負担している。長期的に見れば消費税などによる公費負担増は避けられないと思う。ただ、若年層の経済困窮を見れば、40歳以上が払っている介護保険料で可能な限り制度運営をまかなうことが望ましい。自治体も住民のニーズを受け止めて負担増から逃げるべきではないだろう。
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「家で最期」支える訪問看護 読売新聞 10/19
 
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=32277
 「住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい」と望んでも、それがかなう人は少ない。実現には何が必要なのか。訪問看護ステーションの取り組みから考えた。
【病院やボランティアと連携】
 東京都新宿区の静かな住宅地。一人暮らしの女性(95)のもとを訪れた看護師の田中信子さんが、血圧を測りながら「夜、一人で寂しくないですか?」と話しかけた。女性は「寂しくないよ」と答える。2人は10年来の付き合いだ。
 認知症や心臓疾患のあるこの女性の要介護度は現在、最重度の「5」。家族が朝と週末に訪れるほか、訪問介護・看護、医師の往診を受けている。しかし、一人の時間も多い。万一の事態がいつ起きてもおかしくないが、「救急車は呼ばない」と以前から約束している。家族やヘルパーが異変に気づいた時は、田中さんの勤める「白十字訪問看護ステーション」(本部・新宿区、秋山正子代表)に連絡し、そのうえで往診医を呼んだりすることになっている。
 女性の次女(64)は「母にとってはこの家こそ『自分の居場所』。最期は家で迎えさせたい。訪問看護や往診の先生たちが支えてくれるので安心です」と話す。
 同ステーションは、常勤9人、非常勤7人の看護師が、1か月に平均150人を担当する大規模事業所。在宅看取(みと)りを支援しており、年間60~70人の死亡者のうち、半数以上は自宅で亡くなっている。
【自宅で死亡12%】
 厚生労働省によると、2009年の1年間で、最も多かった国内の死亡場所は、医療機関で81%。自宅での死亡は12%にすぎない。08年の別の調査では、一般国民の63%が終末期の自宅療養を望むと回答。一方で66%が「家族に負担がかかる」「急変した時の対応に不安がある」などから、家で最期を迎えるのは実現困難と答えている。
 ステーションでは「家で最期を迎えられる」と本人や家族に伝えるほか、在宅療養をしやすくするため、ボランティアを養成したり、病院や行政に働きかけたりするほか、住民啓発などにも取り組む。
 例えば2年前、病院から自宅に戻った肺がん末期の男性(当時76歳)。同ステーション内に事務局を置くボランティアのメンバーが見守りを兼ねて男性宅を訪れ、その人生を聞き取った。男性は死の数日前、自らの人生が聞き書きされた冊子の表紙を見て笑みをこぼした。
 男性の死後、ステーション代表の秋山さんらは病院を訪れ、自宅での様子を報告。主治医は「『男性、一人暮らし、肺がん』の在宅療養なんて想定外だった。今後は希望があれば対応したい」と答えたという。
 ステーション主催で開かれた在宅療養に関するシンポジウムでは、男性の家族も参加し、「最期を住み慣れた家で精神的に楽な状態で過ごせた。私たち家族も満足できた」と語った。
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 さてここからは本日のメインニュースになります。

 まずは2006年に社民党が出した医療格差、健康格差についての記載を引用します。

 
[1]患者の支払い能力による医療格差をなくす(一方的な患者負担増に反対、医療給付費の総額管理・混合診療・保険免責制に反対)
 [2]医療提供体制の格差をなくし、地域に必要な医療を確保する(地域における医師・病院の偏在、小児救急科・産婦人科など不足する診療科目への対策)
 [3]健康診断の受診格差をなくし、生活習慣病対策等の予防医療を充実(非正規雇用労働者、家事専従者の健診受診率は50%以下。生涯を通した健康づくりへ)
 [4]病院の官民格差をなくす(官民を問わず、地域が必要とする医療・医療機関を確保するために公費を投入)
 [5]労働環境の格差をなくす(医療スタッフの労働環境を改善、慢性的な人手不足を解消)


 いずれも理解出来ることばかりですが、いずれも困難な事ばかりというのが率直な感想。提案するのは良いのですが、実現可能なものを具体的に提示すべきではないかな?と感じました。

 また医療格差と健康格差という用語が混在していますが、色々と調べていると医療格差とは狭義的な使い方、すなわち日本における格差に使用し、健康格差とは広義的な使い方、すなわち国際的な格差に使用されているケースが多いようです。他にも色々と記載されていますので、ご確認いただければと思います。

健康格差: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%A0%BC%E5%B7%AE
 健康格差(けんこうかくさ、health disparities、health inequalities、health divide)は、人種や民族、社会経済的地位による健康と医療の質の格差である。米国保健資源事業局は「疾病、健康状態、医療アクセスにおける集団特異的な違い」と定義している。
 偶然や生物学的要因(年齢、性別、遺伝)による集団の健康のばらつきとの違いを強調して、「回避可能で不必要で不公平で不公正な健康のばらつきである」とする定義もある。より積極的に偶然や生物学的要因との違いを強調して、「経済格差と健康格差は、税制、事業規制、福祉給付、医療財源といった課題において、社会によりなされた決定による結果である」とする主張もある。
 健康較差と表記されることもある。
【概要】
 健康は、生物学的な背景、あるいは最新の医療技術へのアクセスにも依存しているが、主に、その集団の属する社会経済的地位に依存している。また、社会経済的地位は、連続的な勾配(社会的勾配)に従っているため、健康格差も、社会経済的地位に従い、連続的に生じている。
 健康格差は、例えば、富裕層と貧困層のような社会的勾配の端同士の比較から見いだされると同時に、富裕層内部でも、社会的勾配にしたがって、見いだされている。
【 原因】
 民族・人種集団間の健康格差の原因については、議論がある。健康格差は、3つの領域から生じているということが認められている。
 1.疾病の発生頻度の格差
  さまざまな民族・人種集団個人の社会経済的地位、環境の特性から生じる
 2.医療へのアクセス(近接)の格差
  医療提供制度に入ろうとするときに、特定の民族・人種集団が遭遇する障害から生じる
 3.医療の質の格差
  さまざまな民族・人種集団の受ける医療の質から生じる


 さて私は臨床検査技師の立場から、また政策医療臨床検査連絡会事務局といった立場から、臨床検査データの標準化について触れてみたいと思います。

 そもそも臨床検査データは、医療分野の中でも客観評価的な要素の強いものであり、本邦における多施設間格差であるとか、比較対象に最もなり易いものです。私自身、この分野に関わって十数年になりますが、もっと以前では施設間における臨床検査データの互換性については、かなりひどいものであり、その是正目的で、日本医師会が「臨床検査精度管理調査」を行った経緯もあります。
 現在では、生化学、免疫分野の主要項目については、かなり標準化が進み、全国どこにいても主要項目については、ほぼ同様の臨床検査データが得られるようなレベルにまで発展してきました(勿論まだまだの施設も多数ありますが)。しかし主要項目以外の項目については、互換性に乏しい状態であり、苦慮しているところです。さらにこれら主要項目以外のものについては、院内で測定せず院外で測定、すなわち外部委託検査に依存している状況で、これら外部委託検査の臨床検査データについては、院内に所属する臨床検査技師はかなり低認識というか、無関心というか、外部委託検査から得られた臨床検査データを確認せず、臨床部門に垂れ流し?しているのが現状です。

 さらに本邦では、ISO15189といった国際標準規格が臨床検査分野において設置されており、医療分野の中では唯一といっても過言でないものです。近年、このISO15189認定を取得する施設が多くなる傾向になってきておりますが、ただ取得することが目的となり、取得後に何を行うかといった戦略が無いため、認定継続を断念する施設が出てきていることも事実です。

 一例を挙げると、日本国内で測定された健康診断データが、海外で通用するかというと、通用しないこともあるのが現実です。そこで登場するのが、ISO15189という国際標準規格。厳密な国ではこの認定を取得した施設で測定されたデータしか受け付けられないこともあります。さらに現在行われている治験など研究データなどの互換性を高める(標準化)ということは、本邦の医療の質を向上させ、国際競争力を向上させるということもご理解いただければと思います。こういった事実を一般国民のみならず、全ての医療従事者に認知してもらいたいと願っています。

 医療格差からかなり飛躍してしまった話になりましたが、私がこのメールニュースやブログで訴えていることの背景には、こういったこともあるのだということを、ご理解いただければ幸いです。時間的に余裕が出てくれば、この十数年の私自身の活動内容などもブログ上で、ご紹介していきたいと考えています。

 色々と書き連ねましたが、医療分野における客観的評価指標を構築することは、「医療の可視化」にも繋がり、医療格差、健康格差を是正する第一歩だと私は思います。


【毎日新聞社特集記事 2010/10/16】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには データ生かし死者減
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101016ddm003040115000c.html
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 医療の質のばらつきや格差を明らかにし、是正していく取り組みは、欧米では既に一般的だ。今回、国内で初めて算出された「標準化病院死亡比(HSMR)」も利用が進んでおり、実際に患者死亡率の低下につなげた病院がいくつもある。日本でも同様の取り組みを広げていくには、どうしたらいいのか。
◆診療の質、改善図る欧米
◇英の2病院、4年間で905人
 HSMRが開発された英国では、公立病院などの診療の質の管理に利用されている。開発者の一人で、元英国医師会長のブライアン・ジャーマン英ロンドン大名誉教授などによると、各病院のデータは毎月、英インペリアル・カレッジに集められて分析され、公開もされている。
 数値が異常に高いとみられる病院には、カレッジが警告を出す。警告は同時に、法律に基づいて医療や福祉の質を規制する独立組織「ケアの質委員会」に通知される。
 効果は既に上がっている。英中部のウォルソール病院は、00年のHSMRが130だった。死者数は年間1080人で、平均的な病院より250人多いと推計された。これを受け病院は、心臓病や呼吸器病、がんなど7診療グループでそれぞれ改善を図った。その結果、04年のHSMRは93に下がり、死者を年295人減らせたと推定された。
 また、01年のHSMRが95だった、英中部の聖ルカ病院など2病院。さらに向上を目指し、院内に死亡率低減チームを設け、院内感染予防や誤投薬防止などに努めた。05年には78に低下し、02~05年の4年間で死者を905人減らせたと推計されたという。
 カナダでも、政府と地方自治体が共同で設立した非営利の独立組織「カナダ保健医療情報研究機関」が、90余りの病院について04年以降のHSMRを調査。毎年の値を病院の実名とともにインターネットで公開している。この機関は、保健医療情報を収集・分析し、公開するのが仕事だ。
 HSMR導入後、07年までの3年間に、カナダ全体のHSMRは約6ポイント下がったという。機関は「HSMRは医療を改善する機会を与え、変革を動機づけし、進歩の跡を示す」と指摘する。
 日本では、今回の算出を継続的な取り組みにつなげることができるのか。今回はジャーマン名誉教授と研究班の協力で、各病院の負担はなかったが、本来は費用がかかる。算出に携わった上原鳴夫・東北大医学部教授は「改善の効果を『見える化』し、異常を早めに察知し対処する仕組み作りのため、日本でもHSMRが普及してほしい」と話し、予算と態勢づくりに行政の支援を期待する。
◆分析ノウハウ探る日本
◇検査見直し黒字例も
 日本では、HSMR算出に使われた「DPC(包括払い)データ」を活用し、医療の質や経営を改善する試みも始まっている。DPCデータには、退院または病棟を移った入院患者全員について、いつ、どんな治療を実施したかなどの詳細情報が含まれる。厚生労働省は全国の病院別データを公表しており、これを分析することで他病院や全国平均と診療プロセスを細かく比較することが可能だ。
 「こんなに差があるのか……」。昨年6月、愛知県の小牧市民病院で開かれた「東海自治体病院DPC勉強会(ToCoM)」の初会合で、参加者から驚きの声が上がった。胆のう摘出手術後、感染症を防ぐため注射する抗生剤について、1症例当たりの平均使用額をDPCデータから比べたところ、病院間で約300円から約1万1000円まで大きな開きがあったためだ。
 ToCoMには、愛知、岐阜、三重3県の県立や市立の21病院が参加。年2回程度、各病院の診療情報管理士らが集まり、DPCデータを交換して検査や投薬の状況を比較している。初会合で高額な抗生剤使用が明らかになった病院は、その後半年で使用額を半減させたという。
 松阪市民病院(三重県)は08年度にDPCを導入し、ToCoMで得た情報も参考にしながら手術前検査などの効率化を徹底した結果、09年度決算で平成に入って初の黒字を達成した。ToCoMの代表世話人でもある同病院の世古口務・総合企画室副室長は「各病院は最高の医療を提供していると思い込みがちだが、実態は違うということをDPCデータは客観的に示してくれる。診療の効率化は在院日数が短縮するなど、患者にとってもメリットが大きい。DPCデータはまさに『宝の山』だ」と話す。
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◇病院が提出するDPCデータの主な情報
■診療録(カルテ)情報
 ▽患者の識別番号・性別・生年月日 ▽治験の有無 ▽入・退院日 ▽入院経路 ▽退院先 ▽入院後24時間以内の死亡の有無 ▽傷病名 ▽手術の名称・実施日・回数 ▽麻酔の種類 ▽妊娠の有無 ▽がんのステージ(病期) ▽化学療法の有無
■診療報酬明細書(レセプト)情報
 ▽診療行為の名称・実施日・回数 ▽使用薬剤の種類・量・価格 ▽医師識別番号、病棟識別番号 ※患者名は匿名


【毎日新聞社特集記事 2010/10/16】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには/1 死亡率、最大3倍差も
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101016ddm001040025000c.html
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◇70病院、入院患者 医師ら研究班、日常データ比較
 入院患者の死亡率が最も高い病院は平均的な病院の1・6倍に達し、逆に最低の病院は0・6倍--。文部科学省研究班(班長、上原鳴夫・東北大医学部教授)と、「医療の質・安全学会」などで作る「医療安全全国共同行動企画委員会」が、全国70病院で患者が入院中に死亡した率を比較可能な形で算出したところ、大きな格差が存在することが明らかになった。病院名は非公表だが、こうしたデータが日本で算出されたのは初めてだ。
  算出した数値は「標準化病院死亡比(HSMR)」と呼ばれる指標。病名や年齢などから患者の死亡率を予測し、各病院の死亡率が平均の何倍かを割り出す。結果は平均的な病院が100になるよう調整して数値化する。欧米では10年以上前から医療の質の指標の一つとして使われ、質向上や問題発見の契機になっている。
 上原教授たちは、医療安全全国共同行動に参加している大学病院や各地の基幹病院など70施設から、07~08年の患者データを収集。HSMRの計算法を開発した英国の専門家に送り算出を依頼した。
 多くの病院は100前後だったが、120を超える病院が六つあり、最高は160。低い方では、80未満の病院が11あり、60程度が三つあった。
 死亡率に最大で3倍近い格差がある可能性がある。上原教授は「思ったより差があった」と話す。
 結果は各病院に知らせ、医療を改善する参考にしてもらった。今は対象病院を180余りに増やし、2回目の算出を進めている。
 算出の目的は、各病院の医療の改善ぶりを数字で明らかにすることだ。
 「病院が安全対策の徹底に努めても手応えは実感しにくい。改善の成果がHSMRの変化として数字に反映されれば、現場の励みになるし、努力を社会に分かってもらえる」と上原教授。決して病院のランクづけが目的ではないという。
 もちろん、これだけで病院の質が決まるわけではない。だが、HSMRが並外れて高ければ、その病院の医療のどこかに問題があることを疑うきっかけになる。
 データが増えれば、病院全体の死亡率だけでなく、病気ごとの死亡率もチェックできるようになる。
 しかも、今回の算出に使った患者データは特別なものではない。診療報酬を包括払い方式で請求する病院が毎月、患者の診療内容を記載して厚生労働省に提出している「DPC(包括払い)データ」だ。
 提出している病院は約1400あり、合計病床数は全国の約半数に達する。主要な病院にとっては日常的なデータといえる。
 欧米では、HSMRが130前後だった病院が、努力して100未満に下げた事例が複数報告されている。一方、貴重なデータが生かされない日本。格差は見え始めたばかりで、改善はこれからだ。
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【毎日新聞社特集記事 2010/10/17】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには/2 がん専門でも診療差
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101017ddm001040061000c.html
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 「もう少しバラつきが小さいかと思った」。国立病院機構九州がんセンターの岡村健院長は、ある調査結果を手に話し始めた。胃がん患者への治療内容が、がん専門病院の間でかなり異なり、行うべき手術法や抗がん剤治療をあまり実施していない施設もあることが示されていたからだ。
 調査は岡村院長が主任研究者となった国立病院機構と厚生労働省研究班が共同で実施した。対象は同機構所属で、国から「がん診療連携拠点病院」に指定されている15病院。厚労省研究班が胃がん患者に「行うべきだ」と結論づけた30項目の診療が、07年1年間の対象患者の何%に実施されたかを、一人一人のカルテを見て確認した。
 例えば「S-1」と呼ばれる抗がん剤。中程度の進行度の胃がん患者が手術後に飲むと、3年生存率が飲まない患者より高まるというデータがある。S-1を処方したか、理由があってしなかったことがカルテに書かれていた患者の割合は3病院で100%だったが、5~6割の病院が二つあり、0の病院もあった。この数字は病院が行うべき診療を実践している割合を示す。
 胃の周囲のリンパ節を一定範囲まで切り取る「D2手術」を実施したか、理由があってしなかったことが記されていた患者の割合でも、最高の病院は約90%だったが、60%以下の病院が4施設あり、最低は約40%。リンパ節にはがんが転移している可能性があり、D2手術は再発予防に有効とされている。
◇分野の違い理由
 岡村院長は「S-1の生存率延長を示す論文が出たのは07年で、周知が遅れた可能性もある」とする一方で、「がん専門病院といっても胃がん治療に専念する医師ばかりではない。病院によっては他のがんや、がん以外の病気を同時に担当する医師も多い」と専門性の違いが治療の差を生んでいると推測。「各病院が同様の調査で自らを評価しレベルアップしてほしい」と訴える。
 調査に使ったのは、厚労省研究班が昨年まとめた「診療の質指標(QI)」の一つ。胃がん、大腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、緩和ケアの6診療分野で、専門家を各10人程度集め、「実施率が高い病院ほど、医療の質が高い」と考えられる内容を分野ごとに25~45項目定めた。
 病院ごとに各項目の実施率を調べて医療の質を評価し、格差を縮めるのが目的だ。米国では臨床腫瘍(しゅよう)学会などがQIを作り、各病院の調査結果をまとめているが、日本では初の試みとなる。
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【毎日新聞社特集記事 2010/10/18】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには/3 5年生存率、精度揺らぐ
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101018ddm001040076000c.html
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 がん治療の質を測る指標として不可欠な患者の「5年生存率」。患者にとっても、病院や治療法を選ぶ際の重要な情報になるため関心が高い。施設間の格差を明らかにし、解消を目指す上でも重要な役割を担っているが、今、その基盤を揺るがす事態が起きている。
 「センターの体制も担当者もかわっていないのに……」。今年4月に独立行政法人となった神奈川県立がんセンター(横浜市)の小池真紀子・企画調査室主査は、県内の2市役所の対応の変化に戸惑っている。5年生存率などの治療成績を出すには、治療後に転・退院した患者の生死などを確認するために住民票の照会をする場合があるが、独法化を理由に応じてくれなくなった。
 同センターは地域のがん治療の中心的役割を担う「がん診療連携拠点病院」に国から指定され、「院内がん登録」が義務づけられている。院内がん登録では、患者全員の診療情報や生存期間などを毎年追跡調査して記録。登録データを基に、がんの種類別やステージ(病期)別の5年生存率などが計算される。
 同センターは昨年、追跡対象8875人のうち2280人について、全国の市区町村に住民票照会を申請。全自治体が照会に応じ、追跡率はほぼ100%だった。
だが、今年は患者が多い2市から照会を断られた。データの精度を担保するためには追跡率95%が目標とされているが、「追跡率が90%を割り込む恐れがある」(小池主査)という。
 拒否に転じた2市は、総務省策定の住民基本台帳事務処理要領を根拠に、「独立行政法人は国や地方公共団体の機関と異なり、住民票の写しを交付するには、個人情報保護の観点から本人の承諾が必要」と説明する。
 だが、院内がん登録を巡り、患者の同意書などを取っていない拠点病院は少なくない。ある病院の担当者は「いちいち同意書を取ろうとすると作業量が膨大になるし、同意が取れる患者だけだと、データに偏りが出る可能性が高い」とこぼす。
 そもそも、多くの拠点病院は個人情報の「壁」を敬遠して外部照会に二の足を踏んでいる。国立がん研究センターのがん対策情報センターが行った調査によると、全国377の拠点病院のうち、昨年12月時点で外部照会をしていない病院が74%に上った。同センターの西本寛・院内がん登録室長は「外部照会をしない患者は死亡したかが分からず、『死亡』とカウントされないため、生存率が実態より高く出る可能性がある」と指摘する。
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【毎日新聞社特集記事 2010/10/19】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには/4 「専門医」信頼性に課題
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101016ddm003040115000c.html
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 「循環器専門医」「脳神経外科専門医」……。厚生労働省は現在、55の専門医資格に限って広告で使うことを認めている。一定の基準を満たす学会などの資格認定が条件で、一定の質の医療を受けられる「お墨付き」ともいえるものだ。医療のばらつきをなくす仕組みの一つだが、ある専門家は「学会によって認定要件の厳しさにばらつきがある」と指摘する。
 呼吸器外科学会と胸部外科学会で作る呼吸器外科専門医合同委員会(事務局・東京都文京区)が認定する「呼吸器外科専門医」。04年から5年間は、認定に必要な呼吸器外科手術の経験数を「18例以上」としていた。この基準で1300人余りの専門医が誕生した。
 安元公正委員長は当時の制度について「わずか18例で皆さんが納得するか」と話し、条件の甘さを認める。背景に厚労省が02年に専門医の広告を解禁した際、各学会の医師が次々と広告を始めたことを挙げ「我々だけ遅れるわけにいかず、会員の利益を優先して制度を作った」と明かす。
 委員会は09年から制度を改定。認定には、過去5年で100例以上の手術経験を求めるようにした。旧制度の専門医にも新条件で更新を求めており、条件を満たせず更新できなかった医師もいる。だが、旧制度の専門医が全員、更新を終えるのは13年で、当面は経験の少ない医師も「専門医」のままだ。
 こうした現状を改善する動きも始まった。75学会でつくる日本専門医制評価・認定機構(池田康夫理事長)は5月の総会で、新設する第三者機関が専門医を認定する新制度の基本設計をまとめた。
 新制度は、内科、外科など18の基本領域いずれかの専門医認定を受けた上で、糖尿病や呼吸器外科など、より専門的な17領域の認定に進む2段階制。認定要件は、各学会が策定したものを第三者機関が集約し、ばらつきが出ないよう調整する。
 認定試験の受験に必要な研修は、第三者機関が学会の協力で定める各地の病院で実施。研修プログラムも第三者機関が評価し、質の維持を図る。研修を受けられる医師数にも定員を設ける。池田理事長は「専門医の信頼性を高めるため、研修の『履歴』をオープンにしたい」と説明する。
 第三者機関の具体像は11年までに素案をつくり、早ければ14~15年にも新制度をスタートさせたい考えだ。
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【毎日新聞社特集記事 2010/10/20】
 明日へのカルテ:第2部・医療格差をなくすには/5止 「質」への負担増説明を
 
http://mainichi.jp/select/science/news/20101020ddm001040070000c.html
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 岡山県北西部の高梁(たかはし)・新見地域。約7万人が暮らす「医療圏」だが、脳梗塞(こうそく)の救急治療に最も有効とされる治療法を実施する病院がない。「医師不足の現状では、とても実施できない」。高梁市立成羽(なりわ)病院の鶴見尚和副院長は嘆く。
 この治療法は、脳の血管に詰まった血の塊(血栓)を溶かす血栓溶解剤「t-PA」を使う方法。副作用で脳出血を起こす可能性もあるため、日本脳卒中学会は実施施設の基準として、MRI(磁気共鳴画像化装置)などの画像診断に24時間対応可能なことや、出血に備えて脳外科的処置ができる体制などを示している。
 だが、成羽病院の常勤医は内科、外科などの7人だけ。脳卒中や脳外科の専門医はいない。近くの高梁中央病院には脳外科専門医が5人いるが、高齢者が多く、実働は2人で実施できないという。
 同じ県内でも、南東部には実施施設が8施設、南西部にも3施設あり、格差は大きい。鶴見副院長は「医師数の維持すら厳しい地方病院が脳外科医を増やすのは非常に難しい。せめて地域の医療圏に1カ所くらい脳卒中専門のセンターをつくり、脳外科医らを集中させて、救える命を救う体制作りが必要ではないか」と話す。
 全国的にも、t-PA療法の実施病院数は地域間格差が大きい。厚生労働省研究班(主任研究者、木村和美・川崎医科大教授)によると、実施には脳卒中専門医が3人以上いることが望ましい。しかし、研究班の07年調査では、担当医が3人以上いる病院は、人口20万人以上の医療圏だと6割以上にあるが、5万人未満だと4割強程度にしかない。別の研究では、同療法の実施件数に、都道府県間で最大4倍近い差があることも分かっている。
 木村教授は「脳卒中に関する基本法を作り、地域間の医師の偏在を是正していく必要がある」と説く。
 同様の格差は他の病気でもある。しかし、どこででも最善の治療を受けられるようにする「均てん化」を掲げたがん対策基本法のあるがんですら、専門医や施設の体制などの格差を解消する道は険しい。そもそも日本は医師数や国内総生産(GDP)比でみた医療費が先進国最低レベルだからだ。
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[ひらめき] PADM(パダム):遠位型ミオパチー患者会へのご協力お願い [ひらめき]

    遠位型ミオパチーという病気をご存知でしょうか? 
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    体幹部より遠い部分から徐々に筋力が低下していく非常に重い筋肉の進行性難病です。
    100万人に数名といわれる希少疾病ですが、2008年に「遠位型ミオパチー患者会」が発足しました。
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    多くの方々に賛同していただき、患者会の目標を達成することが目標です。その一つに「難病認定」
    があります。この「難病認定」のためには「署名活動」が必須であり、皆さんのご協力が必要です。
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